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エピローグ
ジェニーのいないこの世に、クリスは用がなかった。
描きかけの絵の前に立ち、完成してあげられなくてごめんね、とクリスは心のなかで言った。でも、このほほ笑みを描けてよかった。
クリスの窓から、海辺の冬の灯が見えた。
さようなら。
クリスは、ジェニーが作ってくれたスミレ色のシャツを着ていた。
クリスは、そのシャツの胸にそっと手をおいた。
ホリーおばさん、ありがとう。
さようなら。
小鳥たち、さようなら……
クリスは、青い小瓶から薬を出して、飲んだ。
ジェニー……
人が死後、たどる道は一人しか通れない細い道である。
しかし、魂があまりに似ていた二人は、その白い道をいっしょに歩いていた。
クリスとジェニーはほほ笑み合いながら、たどるごとに輝いてゆくどこまでもつづく道を歩いていった。
その先に展がる世界は、二人しか知らない。
(了)




