凶報
凶報が入ったのは、次の日の夕方だった。
クリスは、筆が進まないながら、なんとか天使のほほ笑みをイメージ通りに下絵ながら描き出すことができた。
それは絵としては一部ほどの出来だったが、今日の仕事としてはクリスは満足した。
休憩のお茶を入れようとしたとき、メディアフォンのランプが赤く点滅していたのに気づいた。
緊急ニュースがあるときこの赤いランプが点き、持ち主自身の身に災害などの危険が迫るとき、サイレンが鳴って報せるしくみだった。
クリスは、急いでメディアフォンをチェックした。
トップニュースの見出しの「イタリアで地震 М8.5」という赤い文字に、クリスは頭から冷水を浴びたように全身が凍りつくのを感じた。
ジェニーは……!
クリスは、ふるえる指でジェニーに電話した。
しかし、何回、何十回とコールしても、ジェニーは出てくれなかった。
クリスは、目の前がまっ暗になる思いがした。
鼓動が早鐘のように速くなり、気分が悪くなるあまり吐き気がこみ上げてくる。
クリスは、怖ろしい思いに耐えながら、ぶるぶるふるえる指でジェニーのバイタル情報を見た……
「ジェニー・スプリング アメリカ州 十三歳 死亡」
その文字を見たクリスは、ショックのあまり気が遠くなった。