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私、誘拐されてるようですが…

 腰まで伸びた艶やかな黒髪、それを際立たせるかのような肌は健康的ながらも触れがたい白さを誇る。

 黄金比率を持つあどけなくも整った顔は、仔猫のようにやや吊り上がった二重の琥珀色の瞳と、花弁の如く可憐な唇、興奮しているからか僅かに上気した桜色の頬が印象的だ。

 そして、細身な上に小柄──もとい、幼い子どもの身体は椅子に深く座らされたことと相まって足がぶらついてしまっている。

 さながら棚の上に置かれた西洋人形ビスクドールのようだ。素晴らしい。



 そんな絵に描いたような完璧な美少女(推定、五歳前後)……それが、私に相対した鏡の中に映っていた。



 ……え~と、なにこのエキゾチック系超絶美少女?この歳で“可愛い”より“綺麗”ってどんだけ将来有望なんだ!写真集出してくれ!買うから!!

 って、じゃなくて!


 何で鏡に映った私(・・・・・・)がこんな姿をしてるのさ!


 人体改造!?人体改造なの!?

 それとも脳だけ移植したのか!?ブラ○クジャ○ク先生降臨ですか!!?

 ……うわ、自分で言っといてあれだけど……想像するとグロい。

 そもそも、この謎の美少女=私って、イマイチ実感沸かないんだけど。何でこんなことに?


「さぁ、お嬢様。始めましょうか」


 そういえばこのメイドさん、美少女(わたし)のメイドさんだったのか。相変わらずアブナイ気配がするけど。

 そりゃ誘拐したくもなるか、こんな美少女ならね!

 あぁ納得納得!……じゃなかった!そうだ、私誘拐されてたわ!!

 メイドさーん!一体全体、なにするんですかー?

 裁ち(はさみ)構えて、ホントに死神……いや、冥土(メイド)さんみたいですよー?

 ……えっ、ちょま!まさか──。


「フフフ……これ(・・)は私が丹精込めて育ててきたものですから、それを収穫するだけですわ」


 ──ショリ、ショリショリ……


 あーぁ、やっぱりか~。

 いやぁ、私的にはいいんだけどね?う~ん、なんかこう……その、嫌がらせ?なのかなぁ。

 つかこのお嬢様(今は私だけどね!)、この冥土さんに何したんだ……。

 何でそんなこと思うかって?

 だってね?私、今……髪の毛(・・・)切られてるのよ?

 そりゃあ、どんだけ怨まれてるのかって思うわ!

 私は髪の長さに拘るタイプじゃないからね~、精神的なダメージはないけどさ(ってか、私は基本ショートヘアーだし)、この状況はさすがにいただけないかなぁ。

 う~ん……でも、どうしようか。

「……《華の魔女》の髪は手に入れましたわ。ついでにお嬢様もキズモノに出来ましたし、私もこれであの方に……」

 冥土さん、何か言ってるけど……意味わからんぞ?まず《華の魔女》とはなんぞや。あと、顔が恍惚を過ぎて蕩けてる、怖いな。

 てか、この金縛り解けないかなー?誘拐されてるっぽいからそろそろ逃げ出したいんだよねぇ。

 えーと、確か金縛り中に“1、2、3”って思いながら身体を起こすと解けるんだっけ?……違う、それは幽体離脱のやり方だ。でも他に思いつかんし、やってみっか!


(……あ、そーれっイチ、ニーのサン!)


 ──ガタガタンッ

「うへぇ!?」

「きゃっ!……嘘でしょう!?」

 わ、わーい!何か解けたぞ!

 人間、駄目元でもやってみるもんだな。……着地失敗して、膝ゴンしたけど!足萎えて立てないけど!

「まだ魔法適性も出てない小娘に、私の“麻痺(パラライズ)”が解かれるなんて!

……頭に来ましたわ。もう、いいわ……殺して差し上げましょう」

 え、なんだって?魔法……って、待て!小娘はそっちだ!

 私、こう見えて(※現在幼女姿)アラサーだぞ!あんたどうみても十代後半ピッチピチ(死語)じゃないか!

 ……あれ?自分で言ってて泣きたくなってきたぞ??

 ──ってぇ!ちょいまち!冥土さん、その手に光る物体はなんだね?何か某竜球集めの漫画に出てくるちっさいツルピカの人が使う技に似てるのですが……ほら、岩戸かスッパリ斬っちゃうやつ!

「死になさい!“円刃(サークルブレード)ッ”!」

 うわあぁ、やっぱ気○斬だった!冥土さん、ク○○ンだったぁ!

 って、おーい!こちとら手足縛られて動けないのに!ヤバイ、ヤバイって、死んじゃうぅ!

「ちょちょちょ、こっち来んなってぇえーーーっ!」

「……っ!またですの!?」

 うぅ?身体が温かい……かも?なら良かった、まだ生きてるっぽいや。それじゃあ、気○斬はどうなった?

 ──ゴホッ!な、何か埃っぽくなってる?ついでにさっきより明るいような……。

「二度、ですわ……私の魔法が、拒絶された」

 ……魔法?拒絶?よく分かんないけど、私がなんかしたの?

 ん?ありゃ、よく見りゃ天井に穴開いてら。あーもしかして私、さっきの弾いたのかな?

 あーれー?混乱してるのに、逆に冷静になってるっぽいぞ?私。

 あ、紐無くなってる。いつのまに……千切れたのかな?ま、いっか。

 よーしっ!冥土さん、呆然として動かないし、今のうちに逃げよう。そーれ、すたこらさっさ~♪

 とりあえず、外出ればなんとかなるはず!

「────はっ、待ちなさい!」

 げ、復活はや!?ついでに足も早い!

 私の今の足じゃ振りきれない……!てか、短いし筋力無さすぎ!さすが幼女!さすがお嬢様!!

 わわっ、もう追い付かれる!?うぅー、なら一か八かで!


 私は冥土さんに正面から向き合うって伸ばした腕を──そっと掴んだ。その一瞬、驚いたように目を見開く彼女と視線が合って、思わず口角がニヤリと上がる。

 あぁ、やっぱり私は私だね。この瞬間が、たまらなく好き。

 それから勢いを殺さないよう、くるりと身体を反転させ、そのまま冥土さんを跳ね上げ──。


「ちえすとおぉぉぉぉぉおおおっ!!」


 思いっきり投げて、久しぶりに技を決めた。

 

 彼女は、口数は少ないですが、頭の中ではお喋りです。

 なお、それが口から飛び出るときは、かなり驚いているときだったりします。

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