答えなき問い2
粟井ちゃんを自宅の前まで運んだ後、彼方も自分の家に帰ろうとしたところ。
先ほどまで人の気配すらしなかったのに…自分の家の前に誰かが立っていた。
黒いドレスの少女、顔には大きな黒いマスク。なんだかどこかで見たことあるような。
「あの?」
不信を抱いた彼方は、黒いドレスの少女に声をかけた。
少女は振り返ると、上品な仕草で軽く一礼をする。
「ごきげんよう」
と、少女は挨拶をした。
彼方は、振り返った少女を見て驚愕した。
富士山頂上での惨劇、血の臭いを思い出して吐きそうになる。
「人の顔見て吐きそうになるなんて失礼ですね」
彼方の態度を見て、少女は怪訝な表情をする。
「それと挨拶をされたら返すのがマナーでしょ?」
コイツは灼冥之木の芦屋魔名だ。忘れるわけがない。
魔名は彼方の胸ぐらを掴むと、頬を引っぱ叩いた。
「君の名前は?」
「…人殺し」
名前を名乗る代わりに怒りで満ちた顔で吐き捨てる。
追加で頬を左右引っぱ叩かれる。
「君の名前は?」
答えてよと、彼方の右耳を強く引っ張る。ねぇ?答えてよと、再度耳元で囁く。
痛っ、彼方の表情が苦悶に満ちる。それでも彼方が答えることはなかった。
彼方の態度に不満を覚えたのか、口調が強くなる。彼方の髪を引っ張り、強引に顔を引き寄せて、正面から見据えられる。
「君が名乗らないなら、この家と隣の家の住人全員殺すけどいい?」
マナーは大事だよと、にこやかにな表情で笑う。
答えなければ殺される。敵に名前を名乗るのは不本意だが、答えるしかない。
「僕の名前は青井彼方。僕はお前らを絶対に許さない」
「了解、彼方君ね」
彼方の怒りに満ちた目を気にした様子もなく、魔名はつまらなさそうに空を仰ぐ。
「ふぅん?でも実は私、灼冥之木抜けようと思っててね」
どうしてそれを僕に教えるのか?何かの罠だと考えるべきか。
魔名は神妙な面持ちで、どこかばつが悪そうな顔をする。
「私ね、両親が灼冥之木所属なんだ」
だからどうしたというのか。
「つまりは悪役二世メンバーってこと」
魔名は、自分がブラックナンバーと呼ばれていることや、人を殺す度に違和感を覚えたと話してくれた。
人を殺すときには気分が高揚するが、その後は気分が一気に下がってしまう。魔名はそんな自分が嫌いだと語る。
そんなときに偶然見つけたのが彼方だった。彼方を尾行して一人になるのを待っていたそうだ。
話しはわかったけど、僕にどうしてほしいのかわからない。仮免ヒーローの僕に一体何ができるのだというのか?




