残響3
彼方の能力は、自分の気をぶつけて、対象の気を分散させることである。
具現化した刀で斬ることでも、傷をつけず気を分散させることも可能だ。
しかし今はまだ上手くコントロールできていないため、刀で斬れば相手は怪我じゃ済まない。
なので、レーベへの攻撃は、刀の柄で柄打ちをしたのだ。
だが、この技には欠点がある。相手の気力が大きすぎると、彼方の気が打ち負けてしまう。
レーベは能力を発動させようとしたが、おかしなことに発動しなかった。
「えっ!?何で」
レーベの表情には疑問の色が宿る。そして目の前の彼方へ怒りの感情が湧く。
「お前私に何をした?」
レーベは両手をわなわなと震わせて、彼方へ殴りかかった。
しかし彼方は、影月との修行で体術には少し自信があった。
怒りの感情は油断を生む。レーベに足払いをかけて、倒れ込んだところを背後から押さえ込む。
「離せ、この✖️✖️✖️」
うん、普通に放送禁止用語だ。この娘口が悪いな。
「✖️✖️✖️、変態、鬼畜、私をどうするつもりだ」
「どうするつもりって、君たくさん人を殺したでしょ?それを見過ごすわけないじゃん」
「この偽善者が、私は君ではない。レーベだ」
「レーベさんね」
「私の名前を気安く呼ぶな✖️✖️✖️」
…僕はどうしたらいいんだ(汗)、君って呼ぶなって言われたから名前を呼んだのに。
「君達は何者なの?」
「ふん、聞いて驚くな。私は灼冥之木の幹部である、炎人イヴァナ・リスタート様に仕える副委員長が一人、レーベ・フェンネです」
「灼冥之木は知ってるけど、後は知らないよ」
それを聞いたレーベは、ガーンとショックを受けた表情で項垂れる。
「私達はともかく、お嬢様を知らないなんて、あなた名前は?」
名前を答えるのに一瞬躊躇ったが、素直に答えることにした。
「僕の名前は青井彼方」
レーベは合点がいったという表情で、後ろを振り返り、彼方を下から見上げると見下した。
「あなたらしい粗末な名前ね」
うん、ちょっと泣きそう。罵倒される経験があまりなくて、彼方は気分が少し落ち込んだ。
でも良かった。僕は女の子に罵倒されて喜ぶ性癖はなかったようだ。
「君達の目的は何なの?」
彼方は確かな疑問をレーベへ投げかける。
「彼方がどうしてもというなら、あなたが私に勝った褒美として教えてもいいですよ」
うわあー、凄い上から目線だ。しかも呼び捨て。
「教えてくれると助かる」
彼方の素直な態度に満足したのか、レーベは聞け愚民といった表情で答える。
「私達の目的は正義の破壊です」
「正義の破壊?」
彼方はその答えに疑問が膨らんだ。
「正義と悪、その違いは何もない
人の秩序を守ることが正義なのですか?
それを壊すことが悪なのですか?
人を殺せば悪なのですか?
人を助ければ正義なのですか?
それを決めるのは人間の偏見でしかない
私は、人間の言い分を聞くのはもう…飽き飽きです」
言葉の真意はわからないが、レーベは、何の理由もなく行動する人間ではないと、彼方は思った。




