番外編
お待たせしました
「エリちゃん、デートに行こう」
そうセレナが言い出したのは、女王になって4年、職務に追われて慌ただしい毎日がかなり落ち着いてきた頃だった。
うん、つい先日桜も咲いたらしいしデートがてらお花見もいいかもしれない。やらなければいけないことは沢山あるが、ここまでほぼ休み無しでやってきたんだ半日くらいは休んでもいいかもしれない。私は横にいる、私専属の従者になったヨシエの方に視線を向ける、
「たまには、ゆっくりすごせば」
と言ってくれたので行きますかデート。
「セレナ、子供達はどうする?」
実は私とセレナには子供がいる。お腹を痛めたわけでも血が繋がってるというわけではないけど6人の孤児を我が子のように可愛がっている。
「たまには……エリちゃんと二人きりがいいな……」
とセレナがジィーとこっちを見てきた。うん可愛い。あの子達には悪いけどこういう日もあってもいいよね。
「セルギウスー!」
出かける前にセルギウスを呼び出す、
「なんですか?」
と疲れたような顔をしたセルギウスが現れた。
「私達、今からデートに行くから。子供達の事を任せたわよ」
「はぁ、はい……えっ。エリザベート!」
久しぶりにセルギウスが怒ってんの見たわ。子供達もセルギウスは嫌いじゃないから文句もないしね。
☆
「さて、来たわよグルメ通り」
「エリちゃん、何食べる?」
「それは、歩きながら考えましょう」
「うん」
グルメ通りは、私が再開発した地区の1つで、とりあえず美味しい食べ物を多くの層に楽しんで貰えるように色んな店がある。
「あそこにしましょう」
「うん、たい焼きいいよね。エリちゃんは何味にする?私はカスタード」
「私は、あんこかな」
中世ヨーロッパの世界観でたい焼きがあるとかどう考えても間違っているが、美味しいものが食べれればそれでいいと私は思います。
「はい、エリちゃん。あーん」
「あーん。セレナもどうぞ」
「ありがとう」
と私達はたい焼きを片手に歩く、次は何買おうかな。
「ねぇ、お姉さん達。俺たちと一緒に遊ば……女王」
ランスロットにナンパされた。
「ランスロット、あんたなにやってんの?」
「いや、あのその」
「ランスロット、さすがにそれはないよ」
クソザコメンタルだけあって泣きそうだ。
「ごめん、ごめん、女王。俺がランスロットを無理やりナンパに誘っただけだから」
と現れたのは、クソ軟派男のスタンだ。
「はぁ、とても聖職者とは思えないわね。罰として2人で、西の山にドラゴンが住み着いたから討伐しといて」
「いやいや、そんなの死ぬから」
と慌てるスタン。
「何言ってんの、討伐できても出来なくてもどちらにしろ、邪魔者の処分が目的だから」
「女王、酷いよそれは!」
スタンが嘆いてるが無視する。
「セレナ、行こうか」
「うん」
この1週間後、奴らは無傷でドラゴンを討伐して帰ってきたのだった。
☆
さて、私達の手にはたい焼きではなくソフトクリームがあった。これも近くの店で買ったのだ。
「エリちゃん!ほっぺにソフトクリームついてるよ」
とセレナは言って、セレナは私のほっぺについたソフトクリームを手でとるのではなく、直接舌で舐め取った。
……セレナさん、久しぶりのデートだからって大胆すぎませんか。
「えっ……」
と私がたじろいでると
「えへへ、ちょっと下品だったかな」
可愛い。うん、可愛いぞセレナ。
☆
「エリちゃん、次どこ行く?」
とセレナが私の腕に抱きつきながら聞いてくる。可愛いすぎてずるい。
「さっき、ヨシエから劇のチケットをもらったからそこに行くわよ」
「流石ヨシエちゃんだね」
さっきまで庶民的な行動をしていたが、これでも私達は女王なので、劇場のVIP席に通された。そこには、
「「げっ!」」
私とセレナの声が重なる。そこには、アーサーがいたのだった。
「げっ、とはなんとも嬉しい反応をしてくれるじゃないか」
「「うるさい、黙れド変態ドM野郎」」
「流石、夫婦だね。罵り方が全く一緒だね」
アーサーの不意の一言に私たちは赤面してなにも言えなくなっていた。アーサーのくせにムカつくな。
「あっ、ししょう。どうしてここに?」
と後ろからモルドレッドが現れた。
「セレナとデートで来たのよ」
「ふーん、そっか2人ともラブラブだね」
「そ、そそれであなた達はどうしてここに?」
モルドレッドが変な事言うから、恥ずかしくて上手く話せなかったじゃないか。この兄弟は、私達を赤面させてどうする気なんだよ。ほら、セレナなんて恥ずかしさのあまり、私の服の裾をつかんで俯いてるじゃない。
「ぼくたちは、にいさんのお見合いだよ」
「へっ?」
私は素っ頓狂な声がでてしまった。あのアーサーがお見合いだと、相手はまともな人間なのだろうか。いや、まともな方が相手が可哀想だ。顔がいいからて変態行為が許されると思うなよアーサー。
「それで相手はどこに?」
「相手は、この劇の主演だ」
「えっ、女優」
「それでは私たちはここで失礼するよ。機会があればまた蹴ってくれ、エリザ」
「……お断りしますわ」
相手が女優ということに衝撃を隠せずにアーサーに言い返すのを忘れそうになった。危ない危ない。
「いい劇だったわね、セレナ」
「そうだね、エリちゃん」
「主演がアーサーのお見合い相手という事を知らなければ……」
「ほんとだよ」
うん、実際アーサーにはもったいないくらい清楚系だった。
☆
そんな会話をしながら私たちは郊外の展望台にむかった。ここは、夜桜がキレイなのだ。
「うわぁ、綺麗だね」
「ええ」
「それにしても、この4年間色んな事があったよね」
セレナの言葉の通り、女王になってからの4年間色んなことがあったのだ。
UFOが落下してきたり、国内に埋蔵金があったり、何故か野球が流行ってプロ野球リーグが誕生したりと色々あったのだ。
「でもね、大変なことも沢山あったけど。私はずっと楽しかった。それは、やっぱりエリちゃんがいたからだよ。エリちゃん、大好き」
「私も……」
私が喋るよりも早くセレナは、私の口を口で塞いできたのだ。
「えへへ……」
と2人とも照れて何とも言えない時間が続いた。ふと周りを見ると、今日出会った人達が何故かいた。
「なぜ?」
「お前が呼んだんだろ、エリザベート」
「そう言えば、そうだったわ」
「えっと、これが女王主催の桜を見る会かー」
「なにも悪いことやってないからね私!」
アーサーが不穏なことを呟いたが、実際私はやってないのであまり関係ないのである。
そして私は、このわちゃわちゃした日常が嫌いではないのである。
これにて完結です。
番外編に1ヶ月かけてしまいました……すみません。
設定的な資料兼あとがきが活動報告にあるんでそっちもよろしくお願いします。
ここまで呼んでくださってありがとうございました。