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ノエル’ズ ダイアリー ~竜姫さまのVRMMO日記  作者: 柚ノ森みんと
3章:大陸西域・レウルザーガ領アルトラント
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 大陸暦1053年 海の月 27日



 ノエルです。


 周りの空気が微妙です。


 模擬戦でまさかの2発KOになるとは思っていなかったですし、ラッキーヒットで派手に勝ったように見えちゃっただけですよね。そりゃ、レベル的には順当にやれば私が勝てたとは思いますけど。


 あ、気絶したジュードさんは連れのローブ姿の女性が運んで治療をしてくれています。


 「ジュードが2撃で倒されますか……それにあの『スキル』と『アーツ』は……」


 「わかっています」


 フィルハウトさんとレイラさんが話をしているのが聞こえます。何か意味深そうにいわなくても。


 「レスタ!」


 フィルハウトさんの声に反応して、リザードマンさんがこちらに来ました。


 一礼し、少し離れた場所で構えを取ります。半身で右手で持った盾を前に出し、左手に戦槌を持ったスタイルです。左利きでしょうか。


 盾使い、なんだか懐かしいですね。ちょっとイラッと来ますけど。



 レスタ

 種族:リザードマン

 レベル:35

 属性:-

 スキル:〈槌術〉〈盾術〉〈重鎧術〉



 失礼かと思いつつ、模擬戦相手ですから〈鑑定〉で見てみることにしました。典型的な重戦士ですね。


 「2戦目、いいですか」


 「はい」


 レスタさんが無言で頷きます。


 「では……始め!!」


 フィルハウトさんが手を挙げ、合図をします。


 と、同時にレスタさんが盾を前に出し、突撃してきました。


 〈シールドチャージ〉。


 うん、盾使いの定番ですね。もう何度見たか。


 では、こちらの対抗策です。


 カスタマイズアーツ〈スカルテイル〉起動。


 見た目はいつもの〈ドラゴンテイル〉のように見える、竜の尾が現れます。しかし、よく見ると〈スカルテイル〉は普通の〈ドラゴンテイル〉ではなく、消費【MP】を抑えて小さく作った〈ドラゴンテイル〉がつながって1本の尾のようになっているのがわかります。


 初めて見たヴォルフさんは「蛇腹剣か」と言っていましたね。後で調べてみたら結構そのままでした。別に私のオリジナルというわけではなかったようです。


 迫るレスタさんをそんな〈スカルテイル〉で迎撃します。大きく薙ぎ払った一撃が突進してくる盾にぶつかります。


 レスタさんが大きく後ろに吹き飛ばされました。


 「え!?」


 「な!?」


 レイラさんとフィルハウトさんが同時に驚きの声を上げるのが聞こえました。


 まあ、ぱっと見た目的には、一撃で〈シールドチャージ〉の突進を吹き飛ばしたように見えますからね。


 〈スカルテイル〉は複数の〈ドラゴンテイル〉を組み合わせた多重発動特化型。


 一撃が命中したように見えて、実際に命中したのは〈ドラゴンテイル〉5発分の多重発動。


 1発目消費【MP】4×1=4!


 2発目消費【MP】4×2=8!!


 3発目消費【MP】4×4=16!!!


 4発目消費【MP】4×8=32!!!!


 5発目消費【MP】4×16=64!!!!!


 合計【MP】消費なんと、124です!!!!!


 ……あ、貼りっぱなしだった護符が発動しちゃった。もったいない。最大【MP】150で124消費とか馬鹿ですか。


 ただ、威力は、特に付随効果のノックバックは、突進してきた重戦士を吹き飛ばすほど絶大です。


 レスタさんは何とか踏みとどまりますが、〈シールドチャージ〉の突進は中断され、体勢も崩しています。


 そこに〈オーラホーン〉。


 光る角が、レスタさん目掛けて飛んでいきます。


 レスタさんはとっさに盾をかざして防ごうとします。


 が、光の角はそのまま盾を貫通し、喉元で止まりました。〈闘気術〉込みですからね。防御無視、と言うのは盾に穴が開くわけではなく、すり抜けてしまうようです。


 「……私の勝ち、でいいでしょうか?」


 私の言葉に、レスタさんが両手を挙げます。


 「レスタが負けを認めたから、2戦目は終了。ノエルさんの勝ち、ですね」


 フィルハウトさんが戦闘終了を宣言しました。



     ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇



 「じゃあ3戦目、レイラお願い」


 「……わかりました」


 レイラさんが私の前に立ちました。受付にいた時と違って、眼鏡をはずしてこちらを鋭い目つきで睨んできています。右手にレイピア、左手にも何か持っていますね。杖?



 レイラ・ギルフィール

 種族:エルフ

 レベル:40

 属性:-

 スキル:〈細剣術〉〈魔杖術〉〈風魔法〉〈光魔法〉〈強化魔法〉〈詠唱術〉



 〈鑑定〉結果見て、ちょっとびっくり。魔法剣士スタイル……?


 「準備はいいですか?」


 「いつでも」


 「あ、はい」


 フィルハウトさんの問いにレイラさんが答えます。私も慌てて返事をしました。


 「では、3戦目、始めっ!」


 まずは〈魔力知覚〉のスキルを発動させます。〈魔力知覚〉を発動させておけば、魔力が見えることで相手の魔法の発動や魔法の位置が見えるようになります。代わりに魔力が色がついて見えることで普通の光景が違和感がひどい景観になりますけど。


 「〈フラッシュ〉!」


 魔力がちょうどレイラさんと私の中間に飛んで、弾けました。


 目が、目が!? 目の前が真っ白に!?


 目つぶしの魔法ですか。微妙に〈ドラゴンバイト〉が届かない位置で発動されたからまともにくらってしまいました。


 「〈ウィンドブレード〉!」


 こちらが視界が潰されたとみて、レイラさんが攻撃魔法を連続で放ちます。


 〈ドラゴンブラッド〉発動完了。


 目を開きます。

 飛んでくる魔法は2つ。飛んでくる軌道がしっかり見えます。


 〈ドラゴンバイト〉発動。現れた巨大な口が、魔法を飲み込みます。


 目つぶしに一瞬慌ててしまったのは反省ですね。状態異常に対する対応は散々練習したわけですから。


 レイラさんがレイピアを構え、間合いを詰めてきます。レイピアが光っているのは何かの魔法でしょうか。ただ走り寄るのではなく、独特のステップで飛ぶような感じで近づいてきます。


 迎撃です。〈ドラゴンホーン〉!


 1対2本の角がレイラさん目掛けて飛んでいきます。が、レイラさんは身をひねってかわします。


 まあ、ですよね。本命は次ですが。


 〈ドラゴンホーン〉起点で〈ドラゴンテイル〉!


 レイラさんが避けて飛んで行った〈ドラゴンホーン〉から発動した〈ドラゴンテイル〉がレイラさんの後方から襲い掛かり、足に巻き付きます。

 足を取られたレイラさんがつんのめって倒れました。そこに〈ドラゴンクロー〉を突き付けます。


 「……えーっと、続けますか?」


 「いえ、レイラの負けですね」


 フィルハウトさんが戦闘終了を宣言しました。レイラさんちょっと悔しそうですね。


 まあ、ちょっとずるいですよね、あれは。すみません、初見殺しで。



     ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇



 「これで模擬戦は終わりでしょうか」


 最初に指定された3人との戦いは終了しました。


 正直言うと「こんなもの?」という感じですが。ロッドさんやヴォルフさんは別格としても、これならダンジョンでB9階の剣の王国のボス連戦の方が大変だったような。まあ、私もあれから強くはなりましたし、そのおかげでしょう。


 「そうですね……よければ、もう1戦お願いしたいですが、よろしいでしょうか?」


 「はあ。いいですけれど……誰が相手なんでしょう?」


 「私です」


 ぶっ!? フィルハウトさんって冒険者ギルドのギルドマスターですよね!?


 「かつての仲間……アルトラント最強の冒険者パーティだったメンバーが簡単にやられるのは悔しいですからね。それに、私自身でもノエルさんの実力を測りたいと思いましたので」


「お、お手柔らかにお願いしますね……」


 成り行きで、ギルドマスターさんとも模擬戦をすることになりました。どうしてこうなった。


 やりすぎ? やりすぎた?


 フィルハウトさんが槍を手に取りました。何もない所から急に出てきましたから、NPCでも所持品枠を持っているんでしょうか。


 ”今世の槍士か”


 ロッドさんが槍を見て反応していますね。


 「使いませんよ?」


 周囲に聞こえないように小声で返事をします。


 ”姫さんが俺を使ってまともに戦えるとは思わねえよ”


 ま、まあその通りなんですけど、ストレートに言われるとちょっと傷つきますね。


 ”それに、姫さんの槍術は俺を使うんじゃねえだろ?”


 「ですね」


 槍を構えて待っているフィルハウトさんの前に立ちます。

 だいたい、距離10メートルくらい。私の、間合いですね。



 フィルハウト・エバーセイク

 種族:エルフ

 レベル:41

 属性:-

 スキル:〈槍術〉〈軽鎧術〉〈回避〉〈疾走〉〈軽業〉



 〈鑑定〉した結果です。うん、強そうですね。


 「始めっ!!」


 フィルハウトさんの代わりに審判になったレイラさんが、合図の声を上げます。


 穂先をこちらに向けて槍を構え、フィルハウトさんがダッシュで突撃してきます。


 うっ、面食らってしまった。ついつい足を止めて槍技の出し合いするつもりでいました。よく考えたらあれは闘気を飛ばせるロッドさんだからでしたね。距離10メートルだと普通の槍は届きません。


 では、まずはこちらから。


 「〈ドラゴンホーン影尖〉」


 現れた1対2本の角が滑るように静かに飛んでいきます。そんなにスピードはありません。


 が。


 角が届く前に、フィルハウトさんが身をかわします。


 でしょうね。フィルハウトさんがかわしたのはまやかしの一撃。ロッドさんは「殺気と気配でそう思わせる」と言ってましたが、〈竜闘術〉だとその辺がどういう仕組みになっているかはわかりません。


 そして、本命の一撃!


 そこはフィルハウトさん。ぎりぎりで槍で防ぎます。もっとも、突撃の足は止まりましたけどね。


 「……今の技!?」


 「まだ行きますよ!」


 2撃目、〈ドラゴンホーン乱箭〉発動。不規則に波打つような軌道で竜の角が飛びます。


 フィルハウトさんが大きく横に飛び退きました。うん、受けようとすれば思わぬ方向に跳ね返って命中し、生半可に避けようと思ったらぶれる軌道に当たってしまう。だから大きく回避する。


 そこを、狙います!


「〈ドラゴンホーン輝閃〉!」


 最速の技で加速した〈ドラゴンホーン〉が、フィルハウトさんに襲い掛かります。


 フィルハウトさんが逆サイドにステップします。


 身のこなしが軽い!


 フィルハウトさんの槍はだいたい柄もあわせると長さは2メートルくらい。攻撃をするにはもう少し私に近づく必要があります。


 〈ドラゴンホーン輝閃〉をサイドステップでかわすとそのままこちらに向かってきます。


 ぎりぎり引きつけて。


 行けっ! 〈ドラゴンホーン千戦〉!


 全部で7本、回避しようと思ってもできない範囲攻撃をぶち当てます!


 フィルハウトさんは竜の角の範囲の中に踏み込むと、1本目を突きで落とし、2本目を槍の柄で受け流します。


 〈ドラゴンホーン千戦〉は7本の角での範囲攻撃(本数は消費MPで指定可能です)、とは言っても7本をだいたい等間隔にして飛ばすだけです。


 確かに動いて回避はしにくいですが、一点集中で突破すれば逆にごくごく普通の攻撃にしかなってません。瞬間でそれを見切られた!?


 「〈ヘヴィスラスト〉!」


 槍の間合いに入ったフィルハウトさんがアーツを放ちます。


 しっかりと足を踏ん張り、大きなモーションで力を込めた突き。ジュードさんとの戦いを見て、私が高防御型と見ての速度は遅いが威力重視の一撃……っ!


 で、助かりました。


 「……螺旋!!」


 フィルハウトさんの槍に、回転する竜の角を合わせます。


 威力なら、負けません。ドリルのように回転する〈ドラゴンホーン螺旋〉。ロッドさんから教えられた槍技の中でも最強の威力。


 フィルハウトさんの一撃が、モーションが大きく遅いから、発動が間に合いました。


 角は槍を弾き飛ばし、フィルハウトさんの胸の前で静止します。


 「……お見事。私の負けですね」


 フィルハウトさんが大きく息を吐きます。


 「1つ聞いてもいいですか? その技はもしや〈天威武法〉ですか?」


 「あ、はい。確かそんな名前だったと思います」


 後ろのロッドさんが「そうだぞ」と言ってるので、名前はそうなんでしょう。キャラクターブックを広げられたら確認できるんですけどね。


 「……失われた槍術の流派まで修めますか。底の知れない人ですね」


 正直言うと今回のは槍の技の応酬という意味では私が負けてたと思います。アーツの使い方がすごい雑でしたし。



     ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇



 「さて、模擬戦をしてノエルさんの実力はよくわかりました」


 治療が終わったらしいジュードさん、レスタさん、レイラさんが集まって来ます。


 「……で、ノエルさんが冒険者ギルドに所属する冒険者となる件なのですが」


 「はい」


 「ノエルさんを冒険者ギルドに所属させることはできません」


 え?


 「……えっと、どうしてでしょう?」


 も、もしかして、何かやりすぎた!?


 「いえ、根本的で単純な問題なのですが」


 申し訳なさそうに、フィルハウトさんは言いました。




 「……モンスターは冒険者にはなれないのです」


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