↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/102

56

 大陸暦1053年 戦の月 4日



 =B7階=


 黒い画面に白い線で描かれたようなダンジョンの通路をゆっくりと歩いていきます。

 右側にいるカマキリは見ないふりです。

 そのまま通り抜けよう……とする所で飛びかかって両手の鎌で私の首筋を狙ってきました。


 うん、まあ見逃してはくれませんよね。


 ただそういう能力なのか習性なのか、首を狙ってくるのは丸わかりなので防ぐのもそんな難しくはないんですよね。首のあたりを守っておけばいいので。


 鎌を〈ドラゴンスケイル〉で受け止め、相手の頭に力いっぱい〈ドラゴンクロー〉を振り下ろします。

 結構深く爪がえぐったと思うのですが、さすがに一撃で倒れてはくれないようです。ただ、反撃が予想外だったのかひるんで距離を開けて身構えました。


 次の一撃を、と思った所で左手が何かに引っ張られます。


 何ごと?と思って左手を見ると、何か白い糸のようなものが巻き付いています。その先には通路の曲がり角の影から糸を吐き出している白い線で描かれた蜘蛛がいます。


 ふむ。ああいうのもいるんですね。


 糸に気を取られた私に隙あり!とばかりに斬りかかってきたカマキリを〈ドラゴンテイル〉で吹き飛ばしておいて、糸は〈ドラゴンクロー〉の爪で切っておきます。


 カマキリはダンジョンの壁に叩きつけた後の〈ドラゴンバイト〉で倒せました。味は、エビかカニかそんな感じですね。

 蜘蛛の方はと言うと、糸で相手の邪魔をするのがメインなのか糸をこちらの体に巻き付けてくるだけで近づいてきません。〈ドラゴンクロー〉で糸を斬りながら近づいて〈ドラゴンバイト〉で美味しくいただいておきました。



     ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇



 何かキャラクターブックに通知が来ている、と思ったら〈竜闘術・王魔★〉が20レベルになっていました。新しいアーツを覚えたようです。


 誕生日にレベリングをしてぎりぎり20レベルになれなかったのから結構時間がかかりましたね。

 最近、戦闘より罠や仕掛けが厄介だから仕方ないとも言えますが……。


 新しいアーツは何でしょうか。


 〈ドラゴンハウル★〉


 大声を出すのが発動条件になりますが、周囲の敵に硬直を与えるアーツです。竜の咆哮というやつですね。

 では、試しに使って見ましょうか。



 途中で襲ってくるカマキリや蜘蛛に使って見た感想としては。


 ボス戦のテレンス戦の前に20レベルまで上げておけばよかった……。

 大声出すのは慣れていないのでそこは大変なのですが、かかると相手が動かなくなります。体感一瞬ではあるんですが相手の動きをかなり阻害できるのですごい便利です。


 これがあったら瞬間転移で逃げられるのに苦戦することはなかったなあ。

 ただ流石に連発はできないようです。残念。



     ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇



 この階層に出てくる敵はカマキリ、蜘蛛、ともう1種、蜂のようです。お尻の針で攻撃してきます。攻撃は全部防いだので毒があるかどうかはわかりません。〈鑑定〉が使えないと不便ですね……ゲーム始めたばかりの頃はよく使い忘れてたのですが。


 ただ、どれもそれほど強くはないですね。ダンジョン自体も見た目以外は普通ですし、〈魔力知覚〉を使わないといけないことに気づけるかどうかが肝なのでしょう。


 そんなことを考えつつ通路を歩いていたらふっ、と床が消えて体が落ちる感覚に襲われます。


 えっ、落とし穴!?


 〈罠察知〉スキルに何の反応もなかったんですが……レベルが高かった?でも、下のB10階の通路の罠は気づけましたが……。


 もしかして、〈魔力知覚〉でないと何も見えないこのダンジョン、〈鑑定〉も含めて他の知覚系スキルが全部死んでる?だとすると見た目以外普通かと思いましたけど結構大変かも。


 と。〈ドラゴンウィング〉を発動させて、落下を止めます。


 うわぁ。底が見えない。

 落ちたら確実に死んでいましたね。

 元の場所に戻るために上へと飛んでいきます。



 飛んでいきます。



 ……いや、ちょっと待って。


 落下した時間は体感せいぜい5秒くらいです。何で10秒以上、全力で〈ドラゴンウィング〉で上昇して行ったのに元の位置に戻らないんですか?

 【MP】に余裕はあるのでまだ当分飛び続けることはできますが。

 もう1度下を見ます。当然、真っ暗で底は見えません。それは〈魔力知覚〉をかけても変わらないので最初の仕掛けとは違うようです。


 上を見上げます。落ちてきたはずの穴は見えません。


 まさか。


 〈ドラゴンウィング〉を解除してみます。


 体が落下していきます。たぶん。たぶんというのは落ちている、という感覚はあっても辺りは暗くて何も見えないので実際に落ちているかどうか見えないからです。



 落ちていきます。



 底に激突する衝撃に備えてましたが、いつまでたっても落ち続けるだけです。

 私はキャラクターブックを開いてGMコールをしました。




 「お問い合わせありがとうございます。私はGMニーネアです。なお、ゲームの攻略に関する情報に対する質問は返答しかねますのでご了承ください」


 お久しぶりですね、ニーネアさん。ダンジョン入った時以来でしょうか。


 「変な空間に入りこんでしまったぽいのですが、バグではないでしょうか」


 落下しながら話をするのも変なので〈ドラゴンウィング〉を発動しなおしました。


 「調べますので少々お待ちください」


 何か本を取り出してページをめくり始めます。しばらく頷いたり首を傾げたりしながらページをめくっていましたが、最後に大きく頷いてぱたんと本を閉じました。


 「状況を確認しました。仕様ですね」


 「仕様ですか?」


 「そうです。定義された罠の一種です。それは女神の祝福を受け、死を受け入れることのない者たちを屠るために考えられた罠。不死を殺すために、死へ至る道を永遠に歩ませる罠です」


 何かかっこいいですね。


 「なるほど。実際は?」


 「開発がコンピューターゲーム黎明期のあるアクションゲームの『ゲームオーバーになるまで永遠に落下し続けるステージ』の仕掛けに感銘を受けて作りました」


 やっぱりこの開発は一度天罰を受けるべきではないでしょうか。



 大陸暦1053年 戦の月 6日



 =B7階=


 結局、「死に戻るしかありません」と言われたので死に戻ってきました。いわゆる即死罠と思うことにしましょう。上のB6階でもありましたしね。


 おそらくとしてこの〈魔力視覚〉で見るエリアは察知系のスキルが全滅している可能性が高いです。そういえばカマキリも蜘蛛も姿は見えて認識していたのに気配をまったく感じていませんでしたね。やっぱり油断でした。


 〈罠察知〉なしで即死する落とし穴がどれだけあるかわからない通路を歩き回るのはあまり精神的によろしくはありません。


 そこで。


 〈ドラゴンウィング〉で常時飛びながら進むことにします。


 これなら落とし穴があろうと落ちる心配はありません。【MP】の消費はちょっと痛いですが、そこは休憩をはさみながら進めば問題はないでしょう。


 我ながらいいアイデアです。

 では、気を取り直して再出発です。


 〈ドラゴンウィング〉を発動させて、少しだけ宙に浮いた状態になります。


 体がそのままゆっくりと上昇していきます。


 ……あれ?


 え、いやちょっと待ってください。そんなことをしている覚えはありません。

 床からちょっと浮いているだけでいいんですけどおおおぉぉぉぉ!?




 ……ふぅ。


 天井に吸い込まれたと思ったら同じような脱出できない空間に放り込まれたのでやむなく死に戻ってきました。

 おそらく空中にいる状態だと天井に吸い込まれるようにできているのでしょう。


 これが意味することは、つまり。


 ダンジョンの造り主に考えてることを完全に読まれてるじゃないですか!!


 何「我ながらいいアイデアです」とか言ってドヤ顔してるんですか、ちょっと前の私!?完全に対策取られてるし!?浅はかすぎる。浅はかすぎるぞちょっと前の私!!

 しばらくダンジョンの床に八つ当たりしたので、気持ちが落ち着いてきました。


 深呼吸、深呼吸です。


 今回の件は楽をするな、という戒めだった、と教訓にしましょう。



     ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇



 少し前に〈地図〉スキルが10レベルになったことで、〈書き込み〉というアーツを覚えました。戦闘スキル以外でもアーツがあるんだという感じですが、これはどういうアーツかというと。


 発動させると羽ペンが手の中に現れます。


 これでキャラクターブックを開いて見ることのできるオートマッピングで作成された地図に好きなことを「書き込める」ようになります。


 例えば、落とし穴のあった通路にマークをつけたりもできるわけです。


 つまり歩いて落とし穴に落ちた(そして死んだ)場所を確認しながら、この〈魔力知覚〉ゾーンの地図を完成させて先に進むルートを見つけるわけです。


 あ、作業のめんどくささを想像するとお腹が痛くなってきた……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。