第1話 うるさい隣
中学3年生の最初の定期テストが返却された。
そのとき、隣から声がする。
「ねぇ、数学のテストどうだった?」
僕の隣の席の陽キャ女子、渡瀬栞凛。クラスでも上位の可愛さらしい。そんな栞凛は、容赦なく話しかけてくる。
僕、徳村大輝は、少しのけぞる。椅子から落ちるギリギリまで逃げる。
「48点じゃん! 50点満点だよ? すっごぉ」
栞凛は、ただ単に感心していた。
「私なんて14点だよ? やっぱ大輝くん頭いいねえ」
「あ、えっと、はい」
僕は、話をするのに慣れていない。急に話しこられても、反応することは一切できないのである。
「え、どんな勉強したの? 私ほとんど勉強してないんだよねえ」
よくこんな軽く言えるものである。14点なんて人間がとっていい点数ではないと思う。
「え、ワークとか、を」
「ワーク? めんどくさいじゃんあれ。私一切手をつけてなくてさ」
あのワークに手を付けないなんか、人生10割損していると思う。面白い問題しかなかったからだ。
「『答えを写すだけじゃだめだ』とか先生よく言うけど、別によくない?」
僕には理解のできない思考回路である。間違えるのはいいこと。それをどう解けるようにするかが1番大切だ。
「えっと、だめ、では?」
カタコトの日本語でしゃべっていそうだと思う。本当にこの声は聞こえているのだろうか。
「やっぱそう答えるよねえ。まあなんとなくそう思ってたけど」
僕は、速やかにこの場を離れてほしいと思う。人と関わるのは、この世で1番嫌いかつ苦手なことだ。他の友達のところへ行ってくれと思うばかりだ。
「私にさ、勉強教えて! 『なんでこうなるか考えろ』なんか言われてもそんなのわかるわけないしさあ。私に説明してくれない?」
栞凛は、僕が考えていないことを言う。これだから陽キャというものは。
「え、あ、ちょっと⋯⋯」
「あ、時間帯によるもんね。今日の放課後とかどう? 部活もないし」
どんどん話が進められていく。僕はそのペースについていけていない。
「今日空いてる?」
栞凛はうつむいている僕の顔を覗き込んでくる。それも満面の笑みで。
みんなの太陽が僕みたいな影よりも薄い存在に構っていいものではないと思う。
「今日、は、塾で」
「無理かぁ。あ、じゃあ塾何時から?」
なぜこんなにぐいぐい来られるのか、僕にはまったくわからない。
「19時から、21時まで、です」
「うわ〜、その後時間ある? あ、でも学校空いてないのか。私の家でいい?」
どうやったらこんなに話せるのか、僕にはわからない。とても不思議な人間だ。
「家、ですか?」
僕は疑問符で返した。なぜ人の家に行かなければならないのか。
「あ、家知らないのか。じゃあどこの塾? 私もそこ行くから」
なぜか勝手に話が進んでいく。まず説明するとも言っていない。意思を伝えることは、とても難しいことだと思う。
「あ、でも今日一緒に帰ればいいのか! 一旦家帰るでしょ?」
「え、まあ、はい」
僕はほとんどしゃべらない。だからか勝手に話が進められる。
「ここから近かったよね?」
「ま、まぁ。はい」
僕に拒否権はないのだろうか。もっと友達がいるのに、僕に聞く必要性なんて、一切感じない。
「じゃ! また後でね!」
そう言いながら、女子グループの元へ走っていった。
そこからは、僕の話題のようなのがかすかに耳に入ってくる。
それと同時に、他の男子からの冷たい視線も、浴びさせられていた。
その後の授業も、他の男子からの視線が痛くて、とても集中できる状態ではなかった。
毎週火曜日、朝6時50分に1話ずつ更新していきます!お楽しみに!




