1話 とあるの森の中で狼を見つけた件
普通にテンプレストーリーです。
最後だけオチをつけました。
私達は森の中を歩いています。
凄く歩きやすい森で、比較的楽な道のりでした。
「リタ、今日の依頼はこの辺りの調査だよ」
私は相棒の剣士、リタ・フロストに声をかけました。
するとリタはコクコクと首を縦に振るだけで、何も言葉にはしませんでした。リタは寡黙で無口な性格だからです。
「できれば楽な方がいいよね。この間の依頼も大変だったから」
私、シルキー・ルーンとリタは冒険者です。
しかも中級クラスの冒険者なので、そこそこ報酬が良い代わりに、危険な依頼も頻繁に受けていました。
そのせいで楽しいけど大変でした。
装備も度々点検に出さないといけないから、出費も嵩んでしまい、色んな方面から苦労していたのでした。
「って言っても、この森って普段から明るいし強いモンスターもいないから、何を調査したらいいのかな?」
「うーん?」
リタが唸った。
如何やら同じ意見のようで安心した。
「そうだよね。でも調査依頼を出すってことは、何かあったってことだよね? でも何が……うーん、分からないね」
リタはコクコクと首を縦に振った。
だけど私もリタもきっと同じことを思っているはずだ。
如何して中級冒険者向けの依頼になっていたのか、無性に気になって頭の片隅から離れなかった。
「でも今のところ何もないけど……如何したの、リタ?」
先を急ごうとした私の隣で、リタが立ち止まった。
何も言わずに目の前を凝視していた。
何かあるのかなと思い、私も目を凝らした。
「えーっと、どれどれ? あれ、何か倒れてる?」
私が目を凝らしてみると、大きなものが倒れていた。
だけど木の枝とか大岩とかではなかった。
むしろ少し汚れてはいたものの、生き物のように見えた。
「って、アレ生き物だよね!」
「そうみたい。多分狼?」
リタが喋った。
確かに狼のような姿をしていたので、如何して倒れているのかと思った。
だけどすぐに事情が変わった。
横になって寝ているんじゃなくて、息遣いが荒く、背中が微妙にピクピク動いていた。
「ちょっとまだ生きてるよ! リタ、急ごう!」
コクコクと首を縦に振るリタ。
私とリタは急いで側まで寄ってみると、かなり弱った狼のモンスターが「はぁはぁ」とか細い息をしていた。
「この子かなり弱ってる。でも如何して? 何かの病気なのかな?」
「多分違う。見て、お腹のところ」
リタに言われて狼のお腹を見てみた。
すると大きな怪我の痕が残っていた。
何かを叩きつけられたような跡が残り、お腹の部分が一部抉られていた。
「えっ、ええっ!? リ、リタ如何しよう!」
「落ち着いて」
リタに咎められてしまった。
だけどやることは決まっていた。
「そ、そうだよね。まずはこの子の治療をしないと。確か鞄の中に超強力なポーションが入っていたはず……あっ、あったあった!」
私は鞄の中からポーションを取り出した。
瓶の蓋を外し、中に入っている液体をチビチビと狼の口に添わせて飲ませた。
ゆっくりだけど飲んでくれた。
私は安堵するとともに、リタに言われた。
「それから魔法」
「うん。ごめんね、まだ目が覚めてないけど一回私の魔法で飛ばすからね」
私は地面に手を付いてもの凄く集中した。
それから魔法を発動させると、目の前から狼の姿が消えた。
「とりあえずこれで良し。だけど如何してこんなことになったのかな?」
私が腕組みをして考えてみると、急に全身に殺気を感じた。
顔を上げようとした途端、急に体が前に引っ張られた。
「えっ?」
私の首筋に指の感触を感じた。
ちょっぴり冷たかったが、それはリタのものだった。
「うわぁ!」
ポフッ!
私の顔がリタの胸に当たった。
柔らかい感触が顔の前面にあたるものの、そのまま休むことなく、リタは私を抱き寄せたまま急いでしゃがんだ。
「今度は何!?」
あまりに急な出来事に私は驚いた。
しかし次の瞬間、私達の立っていたちょうど頭の辺りの木が倒れてしまった。
「えっ?」
あのまま立っていたら頭が吹き飛んでいた。
その事実を目の当たりにし、私は冷や汗が止まらなかった。
「な、何が起きたの?」
私は瞬きをした。
それから、リタの顔色を窺った。
すると勇ましい形相を浮かべるでもなく、目の前の何かを捉えていた。
「何かいるの?」
「うん。気を付けて、シルキー」
リタが警戒した。
私は振り返った。
するとモンスターがいた。
「チッ、外したか」
人間の言葉を喋った。
かなり知能が高いモンスターだと分かった。
手には分厚い棍棒という武器を持っていた。
先端が太く、ゴツゴツと突起が付いていた。
とんでもなく危なくて、当たったらひとたまりもなかった。
「あんなの食らったら、間違いなく死んじゃうよ!」
とは言えそんな武器を振り回せるモンスターは限られていた。
力任せだとしても、並大抵のモンスターでは持ち上げられなかった。
つまりあのモンスターはかなり強かった。
そして体の色や口元に生えた牙からなんとなく想像した。
「もしかしてオーガかな?」
「うん」
リタが首を縦に振らずに答えた。
現れたモンスターはオーガと言って、とんでもなく怖くて頭のキレる鬼だった。