焦っても事は進まない、落ち着いてやりましょう:3
「アイツ騎兵学校入る前と後で性格全然違うんだよなー」
あろう事か私の背後でエドガーが私の過去を喋り始めた。
「学校行く前はもうシンプルにワガママ女、他人の痛みがわからない上好奇心のまま突っ走る悲しいモンスター……」
奴にこれ以上話させてはならない。
「学校入って牙抜かれるまでは俺が毎日──」
「エドガァァ……」
奴の頭に原石銃の糸を這わせる。
「古傷が!古傷が痛むであります姉さん!新しいのも開いちゃう!」
「誰が姉さんか!カチ割るわよ!」
頭を下げさせヘッドロックをかけてやる。
「なるほどこんな感じなのね」
「いでででで」
エドガーの頭の傷が開くのは怖いのでほどほどにして解いてやる。
「っ……ふー、今回はこの辺にしといたげるわよ」
ついついやってしまった。
年甲斐もなくはしゃぐ姿を隊長に見られたかもしれない。
隊長の方を振り返る。
「…………ふっ」
愉快そうにこちらを眺めていた。小さな笑い声が聞こえたような気もする。
わにゃわにゃした妙な恥ずかしさを押し殺し、後は大人しく歩く事にした。
イストサインの屋台通り、昼時のそこは街の人達憩いの場。
「なんかがらんとしてるな」
だが、今日に限って空いている店が少ない。
「本当、どうしてかな?」
屋台が、と言うよりも外を歩く人自体少ない感じだ。
「……朝刊のせいだな」
隊長の言葉にはっとする。
「昨日怪物が出た件、新聞社が騒ぎ立てたろ」
「それで屋台が減ったの?」
ファルナは少し残念そうな顔をしている。屋台での食事が楽しみだったのだろう。
「そうです……な、組織的にやってる所はともかく、個人営業の屋台は出店に来なくてもおかしくない」
昨今のイストサインの状況を思い出す。
街には連続殺人鬼が潜み、外国人労働者の流入による治安の悪化、まだ記憶に新しいグラドミスの暴動、と。
「結構ヤバい街になってますねぇイストサイン」
「だなぁ、早いところ元に戻ってほしいぜ」
「……そっか、事件が増えると屋台も減っちゃうんだ」
ファルナの声は寂しそうだ。何か認識を間違えている気もするが。
「でも、解決すれば元に戻るんだよね」
ファルナの眼に熱い決意のような物が灯った気がした。
「……だと良いね」
「よし!頑張りましょ!」
ファルナが私の手を握り、決意を込めて大きく振り上げた。
(眩しいなー)
どこまでも前向きな彼女の姿に私は憧れを覚えていた。




