今日休みますとか言い出しとけばよかったな……そんな勇気ないけど:2
半壊したイストサイン騎兵隊支部。
その瓦礫の側に一体の鎧が蹲っている。
「あ、いたいたグレイマン」
少女の声が鎧に呼びかけた。
「……ファルナか」
鎧の中の男──グレイマンが兜越しに反応する。
「うそ……大丈夫?」
グレイマンの状態を見て、ファルナは驚きの表情を見せる。
彼の右腕──鉄の義手が砕けていた。
「失ったのは義手だけだ。それよりロスの足取りは?」
「騎兵達が追ってる。まあ、列車は止めたあったから遠くには行けないはず」
ファルナが腰に提げた鞄から何かを取り出す。
「グレイマン、貴方の言ったようにグラドミスの拠点掘り返してみたよ」
出てきたのはおくるみに包まれた小さな物体。
「…………埋めてあった」
困惑と悲しみが入り混じった表情でファルナが言う。
「ねえグレイマン、どうして……こんなのが出てきたの?」
「……知る必要はない」
そんなファルナを前にグレイマンは冷たく言い放つ。
「『それ』は君らの世代に残す物ではない。我々大人が始末をつけるべき物だ」
「……たとえ新米でも、私はイグドラの筆頭騎士なんだけど」
「そうだな、そして私は最年長の騎士だ」
欠けた義手をさすりながら、グレイマンが立ち上がった。
「……問題はロスだ、奴が原石の技術を掘り起こした」
立ち上がった後、グレイマンの鎧が変形を始める。
「ファルナレギア、君はあの子──レガリアを見張ってくれ。私は中央にその遺体の件を報告する」
「はいはい」
ファルナが渡した包みをグレイマンが抱き抱える。
鎧が車椅子に戻り、グレイマンがその場を立ち去った。




