まだ帰れてないね……:3
(話続けたくない……)
重過ぎる、今すぐこの場から去って日を改めたいがそんな事をすればこの少女は二度と心を開いてくれなくなるだろう。
「……あの二人はジルちゃんの家族?」
「ミーナが、私のことをそう言ってくれた」
ミーナと呼ばれているのは亡くなった二人のうち、ジルと歳が近い方だ。
「私たち、仕事から帰る途中だったの」
ジルが自ずと話し始めた
「みんなと一緒に、サインエンドのみんなの家に」
表情には恐怖と悲しみが見える。
だが彼女の意思で何かを伝えようとしている様子だ。
「いつもの道で帰ろうって、近道だからあの場所に行って」
エドガーは私の背後でメモを取っている。
私はジルの手を取りながら、彼女の言葉を待っていた。
「そしたら、急に暗くなって……なんだか突然目の前が真っ暗になったの」
ジルが私の手を強く握ってきた。子供のものと思えない強い力だ。
「……もう、一人いた」
ジルの声が強い恐怖を帯び始めた。
「誰かいる……まだいるの……助けて……!」
突然ジルの眼が恐怖に見開かれた。
一息金切り声を上げ、顔の包帯をむしろうとする。
「まってジルちゃん……!こっちを見て」
ジルの顔を覗き込み、視線を合わせようとする。
呼吸が浅く、途切れ途切れになっていく。
右目から涙を流し、嗚咽をあげる。
「──っ──っ」
(まずい、過呼吸を起こしはじめた)
ジルを抱きしめて、呼吸が整うよう背を抑えた。
「レガリア……大丈夫なのか?」
「エドガー、看護師か医者呼んできて」
少しずつジルの息が一定になってくる。騒ぎを聞いて看護師もやって来る。
「──ハァ…………ハァ……」
私の胸の中でジルが深呼吸を始める。
「大丈夫だよ、大丈夫だから」
彼女の背をゆっくり叩き落ち着かせる。
「あの……後はこちらで」
看護師がジルのベットに座り、少し剥がれた包帯を整える。
「あまり、患者を刺激しないように。今日はお引き取り願います」
女性の看護師が私を睨む、まあ無理はない。
「失礼しました、行きましょうエドガー」
「おう」
病棟から出て、待合室のベンチに座り溜息をついた。
「…………あの子、多分何か見てる」
「ああ……俺もそう思った」
よりによってだ。
一番年若い被害者が手掛かりを握っているとは。
「どうしましょう、あの子しばらくここに居るわよね?」
「孤児っぽいし、入院費出せないだろ、イストサインの病院は無料滞在できて三日だ」
「……それまでに何か聞き出さないとね」
「一応、病院側に話を通しておく。お前待っとけ」
エドガーが受付に向かった。
(この後は……イストサインで起こった最初の事件の調べ直し。あの一家が亡くなった場所に集合と)
昨日現場にやってきた隊長の顔は凄まじかった。
ファルナを連れて貴族街の方へ行く前に、最優先でこの件に当たると言ってくれた。
「リーパー、か」
今回の犯人と目される、過去にロスが戦ったと言う原石武器使い。
『君たちでも私でもない、別の原石武器を持つ勢力がこの街に潜んでいる』
あの時聞いたロスの警告を思い出す。
(私、今度は守れるかな)
「レガリアー、話ついたぞ、あと三日面倒見てくれるとよ」
上階からエドガーが戻ってきた。
「了解、それじゃあ戻りましょ」
エドガーを連れ立ち病院を出る。
入り口を出た所で大柄の男性とすれ違った。
その男性とすれ違った瞬間、何人もの足音が耳に響いた。
「え?」
耳を疑い、病院に入る男性を見る。
入って行ったのは一人、白い外套を着る至って普通の男性だ。
「どうしたレガリア?」
(空耳だったのかしら)
最近頭を強く打ったので幻聴を聞いたのかも知れない。
「なんでもない、行こうエドガー」
早く犯人を見つけなければ。




