確かに対応すべきなのは私なんだろうけど……!重要案件なんだけど……!他に誰かいないの!?:2
(この女、私を挑発してきやがる)
無関係な街の住民を害すなら、私はコイツから目を離せない。
動きを制限する糸をオリンピアの身体に巻き付ける。
「そうそう、それで?」
オリンピアがその場で回転した。
「ぐはっ……!」
「糸くらいじゃ止まらないんだよ!」
巻き付けた糸を逆に利用された。身体が浮き上がり、地面に叩きつけられる。
「はー、邪魔邪魔、どうするの?また一軒壊しちゃうよ?」
糸を使いアガサを手に引き寄せる。
そのまま余裕を見せるオリンピアの武器を──
「どうするの?」
「な──!」
私の視線、アガサの銃口の先にオリンピアの頭がある。
「とろいんだよのろま!」
腹部に強烈な一撃をもらった。
身体が後ろに吹っ飛び、何処かの扉にぶつかった。
「ナイスショット!これで一軒」
起き上がり、今度こそタイタニアに狙いをつけ──
「で、そこからどうするの?」
アガサ撃つ前にオリンピアが私の腕を抑える。
「く……」
彼女がそのまま私を振り回す。腕を引き剥がそうと原石糸をかけるが、オリンピアは怪力で糸を引き剥がしてしまう。
「戦っててわかる。お前は私を倒せない」
私を壁に押し付けたオリンピアが眼前で嘯く。
「傷付けたくない、周りを巻き込みたくない、挙げ句の果てには敵にやめてほしい?バカじゃないの?」
喋る度に頭を壁に叩きつけられる。
「なんで騎兵なんてやってんのよ?そんな甘い考えで仕事するなっての!」
タイタニアを顔面に叩きつけられた。
また一軒、背後で建物が沈む。
度重なる衝撃で頭が働かない、視界もぼやけ、吐き気もしてくる。
「どう?続ける?流石に効いた?死んじゃった?」
オリンピアが私を掴み、立たせる。
「うぇ……」
「なんだ生きてるじゃん」
掴む腕に力が籠る。
「それじゃあ、このままお前を凶器にして街を壊してまわろうか」
(ダメだ……勝てない)
だけどこの女を野放しに出来ない。ファルナが悪辣と評したこの女が何をしでかすかわかったものではない。
「お?」
私を掴む腕を抑え、オリンピアを睨む。
お互い身体に原石糸を絡ませて、とにかく時間を稼ぐ。
「もう飽きたよ、お前」
何度目の衝撃だろうか。気付くと今度は完全に石段に埋められていた。
「はー、ロスは楽しんでるんだろうなぁ。『戦車』のグレイマンと戦えて」
動けない私をオリンピアが引き摺り出す。
「そんじゃ、有言実行といきます──」
ファルナの声が、鈴を割るような轟音でかき消された。
「な……何?何なの?」
さらに閃光、ぼやけた視界でもわかる、鮮烈な光。
「ああっ!クソっ!誰だよ!?」
誰かの手が、私を引っ張った。
「ごめんレガリア!遅くなった」
エドガーの声、力の出ない私を背負い、何処かへ駆けていく。
「エドガー!こっちだこっち!早く行け!」
イストサイン騎兵隊の一人、ブランドンの声。
「了解っす!」
エドガーが答えた瞬間。背後で何かが爆ぜた。
「走れエドガー!!」
複数人の声、騎兵隊の誰かだろう。
声援が続き、怒号が走る。
破壊音になり、悲鳴が続く。
気がつけば、私は地面から空を見上げていた。
「それで?お前は何ができるんだよ一般人」
オリンピアの声だ。
次いで大きな音が響く。助けを求める音響弾の音。
「何も持ってないのに私の前に立つからこうなるんだ。弱くて、単なる一員で、状況なんて動かせない弱い奴が」
(エドガーが、危ない)
身を起こし、オリンピアにアガサを向けた。
「がっ……!」
「見えてるっての、雑に倒れたフリしやがって」
オリンピアが私の首根っこを掴み、エドガーの方へ歩いて行く。
「レガリアを離せよ…………バカンピン」
オリンピアの手に力が籠る。
「…………っフン、お前のより良いジョーク思いついた。見なよこれ」
オリンピアが私をずいと前に出す。
「人の盾、レガリアの盾、壊れない盾、えーっと……私の力でも壊れない……」
「ジョークのセンス無いぞ、バカンピン」
「もう良い、殺す」
エドガーが銃を撃つ。支給品の特殊銃、最後の一発は閃光弾。
「無駄だっての、それで何するんだよ」
「……呼んだ」
「あ?」
私の前に立つエドガーは、堂々と銃を構えている。
「俺じゃ戦えない……だから、呼んだ」
オリンピアの腹に原石糸をけしかけた。
「……!動くなレガリア!」
「……来たぞ!レガリア」
オリンピアが私をエドガーに投擲すると同時に、彼女の立つ場所に衝撃が続く。
「……そうかよ、結局お前かよ」
「オリンピア……」
オリンピアとファルナレギア、二人の原石武器使いが対峙している。




