休みの日、楽しい時間ほどすぐに過ぎ去ってしまうもの……:1
今日は休日、私はエドガーの家の前に来ていた。
「おはようございまーす、エドガーいます?」
空は清々しい青空。出掛けるのにはピッタリの天気だ。
「ああ、おはようレガリア。エドガーを迎えに来たのか?」
玄関から一人の老人が姿を現す。
「はい、おはようございます。エドガーもう起きてます?」
杖をついて歩く老人は元騎兵のエドガーの祖父だ。イグドラとメトラタが戦争していた頃前線で戦っていたと言う。
「ああ、そのはずだ……エドガー!レガリア君が来てるぞ!」
「はいはい今行くよ!」
大きな足音と共に奥の部屋からエドガーがやって来る。
「おはよレガリア」
「おはよ、早速行きましょ。休日はすぐに過ぎちゃうわ」
「はいよ。じゃあ爺さん、行って来る」
「ああ」
今日エドガー宅には祖父しかいないようだ。
「今日他のみんなは?」
「父さんと母さんは店だよ、弟は学校。泊まり込みで山中訓練だとよ」
エドガーが話すのは騎兵学校で行われる地獄の山岳サバイバルの事だ。
「うへぇ、あのカリキュラムまだ潰れてないんだ……滅べ」
「全くだよ、帰って来たら人格変わってるんじゃねぇかなって」
私とエドガーは待ち合わせ場所のイストサイン駅に向かい歩き出す。最後の面子、騎士ファルレギアと合流するのだ。
「しかしねぇ、なんだってまた騎士様と一緒なんだ?」
「街案内して欲しいって騎士に言われたなら断れないでしょ?」
ぼやくエドガーの気持ちも若干はわかる。
相手は異性、それも騎兵からすれば雲の上の存在とも言える騎士と休日を共に過ごすとあれば、大抵の人は萎縮する。
「お前は凄いよ……騎士とあんなに仲良くなれるなんてよ。それも一日で」
「エドガー、別に昨日が初対面じゃないのよ?それにファルナ明るくて話しやすいじゃん」
「……だよなぁ、距離感近すぎるって。俺の思ってた騎士像と全然違う」
街の大通りが近づく。今日は世間的にも休日だが、街の復興の為建物の補修作業が行われている。
「あ、居た居た」
ファルナはすぐに見つかった。
「おはようレガリア!それとエドガー!」
手を振るファルナの格好はあまり普段と変わらない。
漆黒鉄の装甲は付けていないし服装もお洒落な柄のスカートとシンプルなブラウスだが、頭にいつものとんがり帽子をかぶっているせいで印象が塗りつぶされているのだ。
「おはよファルナ。じゃあ皆揃ったし行こっか」
「うん!……ところでレガリア達は何する予定だったの?」
「食べ歩き」
イストサイン名物、休日のテラス川周辺に向かうのだ。




