早く終われ……仕事終われ……
(やっと終わった)
「おつかれー」
私と一緒にファルナが会議室から出て来る。
「良かったねレガリア、騎士の資格があるって言われて」
(不穏な事も沢山言われたんだけど!)
最後の言葉、アレは確実に脅しだった。
「……ねえ、ファルナはどうして騎士に?」
「私?私は親の仕事継いで騎士になったんだ」
ファルナが自分の剣──ファランと呼ばれたそれを掲げる。
「私の家は代々イグドラの筆頭騎士って事になっててね、長男か長女がファランを受け継ぐの」
話すファルナの顔は誇らしげだ。
「原石の剣と共に王を守る騎士!なんてね。ファラン継いでからまだ一年しか経ってないし、私もまだ修行中なんだ」
「騎士の仕事、気に入ってるんだ」
「そうなの!レガリアは?」
「私?」
あまり尋ねられたくない事だった。
「私は……」
(騎兵の仕事、そんなに好きじゃないかも)
物心ついた時には騎兵学校に入り、それなりの成績で卒業してそのまま騎兵になった。
(自分のやりたい事なんて、あんまり考えてこなかったからな……)
「まあまあ、そんなに好きでもないかも」
この話は切り上げよう。
「私、そろそろ行くね。報告書上げないと」
「はーい、あっ!ちょっと待ってレガリア、明日仕事は?」
「休みだけど」
「そうなんだ!暇だったりする?イストサイン案内して欲しいんだ!」
「明日はエドガーと出かけるんだ。アイツと一緒でも良い?」
「良いよ、ありがとう!どこで待ち合わせするの?」
「11時前に駅前」
「オッケー、楽しみにしてるね」
エドガーに断りなく決めてしまったが、彼なら多分許してくれるだろう。
騎兵隊イストサイン支部の地下。
そこには牢屋があり、近隣で犯罪を犯した者を一時的に収容している。
「どうしてイストサインまで来たのよオリンピア」
「……言うわけないじゃん」
その一画でファルナとオリンピアが互いに睨み合いながら会話していた。
「もしかして私追っかけて来た?負ける為に?」
「……殺すよ」
オリンピアが威嚇するように鉄格子を蹴るが大して音は響かない。
「タイタニア壊されて弱くなったみたいね」
「壊れてない」
「どうだかね」
オリンピアがタイタニアと呼ぶ鉤付きの鎖は支部の保管庫に仕舞われていた。
「グラドミスに武器流してたの、アンタ達でしょ」
「……知らないけど?そんな奴」
「ふーん、じゃあ良い物見せたげる」
一枚の地図をファルナが広げる。
「アンタの荷物よ」
「下品な騎士様だなぁ、勝手に持ち物漁るなんて」
「この地図、マークしてある場所全部グラドミスが武器を隠してた場所と一致するわよ」
「……」
「ここに何か回収に来たの?既に騎兵達の捜査は終わってるんだけど、何か重要な物でもあるの?」
「出してくれるなら、教えてあげるけど?」
「……はー」
呆れた様子でファルナが溜息を吐く。
「また今度来るわ、それまでここで身の振り方考えてなさい」
「……ねえファルナ」
地下から出ようとするファルナにオリンピアが呼びかける。
「……なによ」
「あの原石銃持った子、名前はなんて言うの?」
「教えない」
そのまま振り返らずにファルナは地下を後にする。
「……あーあ、暇になっちゃった」
オリンピアは床に寝そべり、天井を眺めている。
「……全て破壊すれば、願いが一つ叶う」
眼を瞑りながら、一言呟いた。
「ファルナも、同じ夢見たのかな?」




