休み中に業務がやってくるんじゃないよ:1
アガサが突然動き出す事は何度かあった。
その度私の近くでは原石武器が動いていた。
(ファルナは原石武器──ファランを抜いてない)
私でもファルナでもない別の誰かの原石武器、それが近くにある。
(無視したい……)
休み中に仕事めいた事をしたくない。
「レガリア、どうしたの?」
無言で立ち尽くす私を不審がったのかファルナが声をかけてきた。
「……ええっと」
どうしよう、正直に言うなら今しかない。
けれど内からトラブルを避けたい気持ちが──
「近くから……原石武器の気配がする」
「本当?」
言ってしまった。もう退けない。
足は重たかったがアガサが指す方に向かう。
着いたのは再び路地裏、屋台が並んでいるような場所ではない、暗い通りだ。
(反応が消えた)
ほんの少し前までアガサは強い鼓動を打ち、糸はピンと張っていたが今はどちらも落ち着いている。
「レガリア、この辺はヤバいぞ」
昼間だと言うのに薄暗い、光は空の隙間からしか届かない路地裏。
「……言っちゃ悪いが移民や貧民の溜まり場になってる場所だ。騎兵も迂闊に入り込めない」
エドガーの言葉で思い出す。
ここはサインエンドと呼ばれるイストサインの吹き溜まり。今居るのはその入り口だろう。
足元を見るとタールのような黒い塊があちこちにこびりついている。
暗い道の先からは苦い悪臭が漂ってくるような気もする。
「やっぱり、どんな街にもこう言う所はあるのね」
壁に寄りかかって寝ている酔っぱらいらしき男性を見ながらファルナが呟く。
(もう、この場所には居ないのかな)
情報は期待できないと思うが酔っぱらいを起こして話を聞こう。
「ねぇ貴方、起きてくれない?ねえ?」
近くに寄り揺り動かすが一向に目覚めない。
しこたま酒を飲んでいたようで周りに悪臭が漂う。
「……なあレガリア」
「もしもーし?起きてくれませんかー?」
起きない。
「レガリア、その人死んでる」
ファルナの声に驚き、酔っぱらいから離れた。
力ない身体が汚い道に倒れこむ。
すぐファルナが死体に近付き身体を調べ始める。
「……まだ温かい、死後硬直も始まってないし。たった今死んだって雰囲気」
「何かあったのは間違いないな、屯所で報告してくる」
エドガーがその場から動こうとした。
「待って」
それを私が引き留める。
「どうした?」
「また反応がする」
さっきよりもアガサの鼓動が強い、すぐ近くにいる。
「……近づいてきてる」
私の血管から伸びる原石糸は何かに引かれるかのように伸びている。
目の前からやって来る人影を指して。
「……そこの人、止まりなさい」
アガサをホルスターから引き抜き、構えた。
やってきたのは奇妙なほど見覚えのある姿。
帽子を深くかぶり、杖を突いた白髪の男性。
「……どうも、奇遇ですな」
杖からは白輝鉄らしき糸が伸び、その糸は私と──アガサと引きあっていた。




