なんだか思ってたのと違うけど、私の人生はまだ続いているみたい:2
「ロスさん……気味悪いんでそれ近づけないで」
「ああ、これは失敬」
ロスと私が一息ついた時、私たちの背後から鉄の動く音が聞こえた。
「鎧……?こいつらまだ……!」
辺りに立つ鎧、全てがこっちへ向かって来ている。
「どうやら『これ』目掛けて来てるようですな」
ロスの手には未だ脈打つグラドミスの首があった。
「それじゃあ私はこの辺で……」
ロスが立ち去る素振りを見せた時、轟音と共に辺りの鎧が粉砕された。
「へーいそこの不法入国者!我が国の騎士殺した件、スパイ行為を働いていた件その他諸々で逮捕するー!神妙にしろーい!」
「あー、まだ面倒なのがいた」
土の剣を投げたファルナが新たに剣を構え、ゆっくり近寄って来ている。ぎこちない様子を見ると足でも折ったのだろうか。
「そうね、ここ敵国だもんね」
走り去ろうとするロスの腕に糸を巻き付けた。
「……見逃しては?」
「あげません」
「そうですか……」
一瞬観念したかと思ったらロスは突然グラドミスの首を空高く放り投げた。
「え……?」
気を取られた瞬間、私の身体が宙を舞った。
「えっちょっと……こっちくんな!」
下の方からファルナの声が聞こえた。
そこでやっと、糸を引っ張られロスに投げられたのだと理解した。
「ぎゃああ!!」
激突の衝撃で脳が揺れた。疲れた頭を揺さぶる衝撃だった。
「きゃああ!!」
続いてグラドミスの生首がお腹に落ちて来た。湿った重みが服に付き戦慄する。
「クッソ!待てロス!」
私の下ファルナが吼える。
「また会いましょうレガリアちゃん、次は敵同士かも知れませんが」
生首を払いのけてロスの方を見る。
走り去る彼の手には漆黒の拳銃──グラドミスの持っていた原石銃の原本があった。
「……そっちが本命か」
重要な原石武器を奪われ逃してしまった。
落胆と共に立ち上がって見ると数体の鎧がこちらに向かって来ていた。
「アンタ達いい加減しつこいよ」
グラドミスの首を足下に置き、痛む手で原石銃を撃った。
頭が潰れ、鮮血が飛び散る。
「はぁ……久々に動けたのにこんな事態か……」
「レガリアァ……アイツ捕まえて……」
ぐったりした様子でファルナが言う。けれどもうこっちの身体も限界のようだ。
「無理、遠すぎ」
鎧達の動きが止まった。もうこの辺も安全だろう。
「……疲れた、隊長のとこまで運んで」
ちょうどいい瓦礫があったので寝転んだ。すぐにまぶたが重くなってくる。
(もうダメか、また動けるようになるかな……?)
「え……?ちょっとレガリア、あ!寝るな!起きろ──」
ファルナの声を聞きながら私の意識は沈んで行く。




