まあ、生活もかかってるので文句言ってもしょうがないんですけどね:3
支部の外、破壊痕や血痕が続く先から激しい戦闘音が続く。
「こっちだ」
私の前を騎兵の先輩が進む。もう勤務時間も関係なくイストサイン中の騎兵が駆り出されている。
また原石銃が反応し始めた。間違いなくこの先に原石武器を持つ騎士が居る。
「酷いな……」
先輩が足元の血だまりを見つめている。
「グラドミスって奴はどうしてここまで暴れるやがるんだ」
記憶の片隅にあるグラドミスの記憶を思い出す。
あの時見た映像が事実ならなら奴の一族とやらの怨念はかなり深そうだ。
深い血だまりに足を突っ込み血がパシャリと跳ねた。
「先輩、あそこです」
見えたのはコートを羽織った大柄の男性と、三体の鎧。辺りには濃い土煙が巻き上がっている。
「でかいのがゾディアさんだ、間違ってもあっちに撃つんじゃねぇぞ!」
「そのくらいわかってますよ!」
目を凝らし一体を狙い撃つ。土煙で視界が安定しない。
一番近くの鎧の脚に命中した。鎧もこちらの存在を認識したようでこちらを向き、手に持った槍を投擲してきた。
「危ない!」
先輩の前に立ち、衝撃に備える。
「うぉぉ……!助かった……」
「大したものだな」
「──っ!」
衝撃の代わりにやってきたのは誰かの声。
おもわぬ声の出所に咄嗟に銃を向けてしまった。
「おいおい、私は撃たないでくれよ」
声の主は先ほどから鎧と戦闘している騎士ゾディアだった。
「まさか漆黒鉄が拳銃で傷付くとはね」
そのまま槍を投げ返し、落ち着いた様子で長身の騎士が話しかけてくる。
「動きは私が止める。あの鎧の破壊、任せられるな?」
「っはい!」
「いい返事だ」
ゾディアが両手を水平に構えた。彼の両手から原石糸を彷彿させる極彩色の糸が伸びだした。
「漆黒鉄の重さだ、長くは持たない」
糸が無数に絡まり鎧が束縛された。
最寄りの一体に原石銃を放つ。胴体に命中し中身が辺りにはじけた。
「気を付けろ!」
先輩が私を引き寄せた。目の前にずっしりとした鉄の塊が降ってくる。
鎧の一体が鎖の付いたハンマーを得物にしているようだ。
「次!早く!」
まだ敵は残っている。ゾディアがハンマーの鎖を掴み、尋常ではない力で引き寄せようとする。
「アイツを撃て!」
言われるまでもなく銃を放つ。二体目の鎧も胴を撃ち抜かれ動きを止めた。
後は脚に穴の開いた一体だ。




