あー鬱、ネガティブ、楽天的になれない、休みたい、それでも明日はやってくる:1
少し高めのソファー、灯りのついていない天井、窓の外は夜で暗い。どことなく落ち着く雰囲気の誰かの部屋。
「なんだ、エドガーの家じゃん」
不安が一瞬で消えた。
騎兵学校に通っていた時からよくお邪魔していた客間だ。
緋鉄の燭台を点けるとぼんやりとした光が部屋を照らす。
(どうして私ここに居るんだろ……支部はどうなったのかな)
枕元にあるアガサを持って部屋を出た。
「あ、起きたのか」
「ん」
部屋の外にはエドガー。手には紅茶の入ったカップを持っている。
客間に戻り、時計を見ると深夜を指していた。
エドガーの家は結構広い、家業の雑貨屋は儲かっているのだろう。
「オリンピア達が逃げた後に隊長がもう帰って良いって言ってくれてさ、でも支部沈んでるし、お前の家鍵かかってるしでこっち運んだんだよ」
紅茶を飲みながら私が寝ていた間の事を説明してくれた。
「ウチの支部……ありゃもうダメだな、地下潰れて傾いちまった」
「明日は?」
「サインエンドの屯所に出勤。あの死体の件、俺たちに任せるってさ」
「うへぇ」
グラドミスの一件から、イストサイン騎兵支部は大忙しだ。
サインエンドで起こった殺人事件などに構っていられない、という訳だろう。
「今日は泊まっていけよ。アンナさんも来てるぞ」
「え、母さん居るの?」
「ああ、上に」
少なくとも母親を心配させる事はなさそうだ。
(気を遣ってくれたのかな)
「ところでどうして起きてたのよ?夜中に、それも部屋の前で。もしかして……」
「ねぇよ、爺ちゃんに殺される」
軽くあしらわれた。
「これが痛くてさ、起きちまったんだよ」
エドガーの頭には包帯が巻かれていた。
「……オリンピアの」
「ああ、飛んできた瓦礫でな」
客間の机には彼が持ってきた新しい包帯が置かれている。
「後ろ向いて、巻いてあげる」
「え?いいって自分でやるから」
「やらせて」
「…………」




