1977年6月後半
7月1日(金)
布団の中で11時頃目を覚ましたら、外は土砂降りだったが、12時頃、昼飯を食いに行くときにはキレイに止んでいた。
今日は漫画本の売り出し日なので、勉強開始時間は遅れて14時くらいになるだろうと想定していたが、13時半には始めることができた。
十姉妹の鳥籠の下替えをしてやろうと縁に近い方の籠を開けてみたら、新聞紙の下にナメクジがゴロゴロいて、あまりにも不潔で気持ち悪かったので、中の三匹を出して木箱の鳥籠の方に移し替えた。12匹というとちょっと多いような気もするが、まぁ良いだろう。
7月2日(土)
11時頃、M・村山とM・松隈がバイクを借りに来た。てっきり、またJ・Eとばかり思っていたが。13時には返しに来た。
18時頃、勉強疲れの解消に外をぶらぶらした。本屋に行くかどうか迷っていたが、決断して行ってみたら新巨人の星があった。このときはちょっと立ち読みしただけだ。
明日でも買おうかなと考えたものの、いや待てよ、もしかしたら無くなってしまうかもしれないと心配になった俺が、晩飯を中断して本屋に駆け付けたら、危なかった、もう三冊しか残ってなかった。
解説;初中、バイクを友人に貸しているが、当時の俺は相当気前が良かったんやな。今は車を他人に貸すなんて考えられない。M・村山は野球部でポジションはピッチャ。身長は180を超えていた。彼とは一緒のクラスになったことはないから親しくない。ただの同窓生だ。言葉も最低限交わした程度だ。
当時の鳥巣高校の平均身長は170を切っていたと思う。俺と田尻と日隈は何とか170は超えていたが、江崎も豊田も170を切っていた。だから、M・村山とかH・Iとか、180を超えた者は校内で物凄く目立った。
7月3日(日)
ちゃんと12時に起きれたから、今日は13時から勉強を始められると思っていたのだが。パンを買いに行こうと台所までやって来たとき、一瞬足が止まる。そうテレビから俺の大好きな西部劇の音声が聞こえてきたからだ。
ここ数ヶ月、テレビ映画を見てなかったから、13時半までならいいだろうと安易な気持ちでいた。
14時頃、気分を変えたかったのだろう、哲が俺の机で勉強しだした。やっぱり人が部屋にいるといろんな面で精神集中ができず…。
解説;俺は浪人中の勉強に机は使っていなかった。コタツ台だ。
7月4日(月)
昨日の失敗を顧みて、万難を排し、13時にはきっちり勉強を始めることにした。お陰で英熟語の瞑想確認も17時にはぴしゃっと終わった。
鳥巣中学の期末テストが今日で終わって哲は遊び呆けている。18時頃、バイクに乗せろと言ってきたので聞いてやった。あの野郎、ローギヤで不必要に引っ張りやがる。
部屋に準備している洗面器の表面に汚れがこびり付いている。眠気覚ましに顔を浸けてみたらヌルヌルして気持ち悪い。氷の解けるのが早い。
7月5日(火)
10時頃に一度目が覚めたが、郵便が来たのに気付くはずもない。
17時頃、俺が本屋から帰ってきたらお袋が、「11時頃、本の来たとば知らんやったとね。名刺の入っとたよ。一日滞納したら、360円払わんといかんけんね」と文句言う。
ということは、俺が高校生だったら家には誰も居ないから、滞納金がどんどん増えて行くということか。どっちにせよ、午前中は絶対に起きないから居ないも同然だ。さてどうするか。本はそれほど切望してないし、この一年はどうせ読む暇なんかないのだから。
解説;本とはリーダースダイジェストの広告を見て注文した、デュラント著・日本ブッククラブ・世界の歴史・全32巻だと思う。現在なら一括購入、一括払いか分割払いだろうが、果たして当時はどうだったのか。一巻1200円で32巻だったら、38400円。浪人生の俺がこんな大金一括で払える訳ないし、親父が買ってくれる筈もない。
ということは毎月1200円づつお袋から金を巻き上げて、一巻づつ手に入れていたとしか考えられない。でも一日延滞金360円とは高い。俄かに信じられない。宅配が発達して郵政公社になった今は不在票が入っていたら直接取りにいけるが、当時、郵便局に取りに行った記憶は全くない。不在票が名刺とは。
代金引換だったとして、翌日また郵便屋が来るのを待たねばならないということか。
俺が今まで住んだところは猪町の植松の町営住宅、猪町の御堂住宅、鳥巣の鉄道宿舎(大学四年まで)、小倉のアパート・松風荘(独身中)、小倉の賃貸マンション・日豊ビル(結婚して3年間)、そして小倉の今の持ち家。
就職で北九州に出てくるとき、この世界の歴史は持って来た記憶がある。俺の性格は書籍とか、文集とかの記念の印刷物は絶対に捨てない。物持ちが抜群にいい。だから、ここに越して来て、借家を自己所有にしてもう20数年になるが、押し入れを弄れば梱包されたままの段ボールの中に必ずある筈だ。
世界史がどうしようもなく好きでついつい買ってしまったこの世界の歴史だが、構成・内容が俺向きではなかった。著者の原文ではなく翻訳だったので違和感を感じたのだろう。ちょっと目を通した程度で押し入れ行きにしてしまった。
7月6日(火)
本を受け取るために目を覚ましてなければならなかったので、身体は寝ていたが、頭は活動させていた。外出できないので、焼きそばはお預けだ。
テレビをつけて新聞を見ていたら、宮崎県で新しい条例が施行されたとあった。少女の春を買った者は氏名も明かすし懲役刑もあるとのことだ。ということは、女を買えるという男の特権がなくなってしまうではないか。女にもちゃんと身体を売って飯を食えるという特権があるのに。
有害なポルノ雑誌を売る自動販売機業者に罰金を科すということにも腹が立った。
解説;要するに都道府県の淫行条例だ。高校を卒業したばかりだから浅薄な知識しか持ってなかった。許して欲しい。
現在18歳未満の少女の買春は犯罪だ。漸くこの頃、売春だけではなく未成年に対する買春にも世の中の目が向きつつあった。
ポルノ雑誌の自動販売機には正直お世話になった。通称ビニ本、H・Tとよく原チャリを並べて自販機を回った。自販機は明るい街中には設置してない。設置されていたのは、大概が寂しくうす暗い郊外だ。夏は表紙がよく見えるように明々と照らされたアクリル板に虫が蝟集していた。こんなもの店では買えない。内容が良いか悪いかは買ってみなければ分からない。一種の博打だった。結構楽しかった思い出だ。
7月7日(水)
今日もお昼のワイドショーが面白そうだったので、焼きそば屋に行くのを止めて見ていたが、福富太郎が反論攻めに合っていた。
12時頃、Aコープでパンを買っての帰り道、大正町で真田と擦れ違った。H・Tがこの前、「真田たちももう部活終わったなぁ」と言っていたのを思い出した。そう言えば、格技室の柔道部の部室には俺たちグループの想い出が詰まっている。できれば、もう一度あそこに入ってみたい。鳥巣高で賢二たちの期末試験があっているなんて全然気付かなかった。
解説;真田は柔道部の一年後輩。身長も高くゴツイ体格をしていた。俺には正に柔道をやるために生まれてきたような男に見えたのだが、高校柔道界ではその名を残していない。防衛大学校に進学した。H・Tの話では戦闘機乗りになりたいとのことだったが。
防大に進学したのは俺の学年では蒲ヶ原だけだ。
鳥巣高校には体育館の後ろに、体育館よりは小さい剣道部と柔道部が使う格技室があって、柔道部にはJE・HT・MI・大野君・YTが居たので三年のときは入り浸った。




