表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浪人日記  作者: クスクリ
PR
2/34

大学に受かった場合の三例

1、KGI大学

 金が掛かり過ぎ目が回る。50のバイクで練馬の叔母さんのところへ行く。暗い部屋で一人で勉強。孤独感に苛まれる。時々、ポルノ映画なんか見に行く。できるなら宏美(岩崎)ちゃんのコンサートに行きたいな。兎に角、この大学に行ければ、史学の勉強に生き甲斐を感じることができる。


 解説;鳥巣高校三年のとき、志望校を選べと言われてもすぐに答えられなかった俺だが、全く勉強しなかった割には世界史はマニアック的に好きで得意だった。参考書は赤線を引き捲ってほとんど頭にぶち込んだ。中間期末テストでも90点を切ったことはないし、一斉模試とかの実力テストも軒並み高得点だった。この時代の私大のほとんどでマークシート方式が採用されていたが、もし論述問題が出たとても全く怖くなかった。

 3科目受験の私学なら世界史で90点以上稼ぐ自信はあった。日本史の先生がKGI大学卒で、この大学が史学に特化しているということを聞き、なら俺もこの大学を受験して世界史の教師になろうと漠然と考えた。

 東京に行ったるとは粋がっていたものの、俺は自分の障害者という殻をまだ破ってはいなかった。だから、東京の一人暮らしには言い知れぬ不安を覚えていた。

 家の経済状態では風呂付きの部屋なんて借りれる訳がない。杞憂だと笑われるかもしれないが、銭湯を利用せねばならないなら、義足外して恥を忍んで入る勇気なんてあるだろうかと真剣に悩んでいた。俺はそれまで他人と一緒に入る銭湯、温泉には行ったことがなかったから。

 現役ではKGI大学史学部以外受験しなかった。全く受験勉強せずに受かる、ある程度のレベルの大学なんてある筈ないと思っていたから。それに受験料が勿体ない。高い確率で落ちるのは分かっていた。

 世界史で点を取れるだけ取れば、もしやということもあるんではないかと、ダメもとで母親同行で東京に受験に行ったが、見事に撃墜された。マークシート方式の問題が結構多かったが、まぁ鉛筆の6面に番号を振って転がして答えを書いているようじゃ、絶対受かる訳ないか。


2、KKS大学

 日本は古来中国と何らかの関りを持ってきた。これからもそうだろう。俺は一生懸命中国伝統文化と現代の中国について学ぶ。場合によっては、小倉の伯父の家に下宿するかもしれない。朝眼を覚ますと、植木に水を遣る伯父の姿が見える。ときどき、T・T鳥巣高校の同級生)の下宿を訪ねるだろう。


 解説;共産党一党恐怖独裁の中国に被れていたとはちゃんちゃら可笑しい。ソ連は鉄のカーテン、中国は竹のカーテンとも揶揄されていたにも関わらず、ネットも無かった時代だから、汚い中共の本当の姿なんて高校生の俺に分かる筈がない。級友に乗せられて、冗談にも毛沢東万歳なんて叫んでいた自分が恥ずかしい。


3、SNG大学

 いつもと変わらぬ生活。ただSNGという名誉ある大学に入れたことが誇りだ。昔からの友達といつも会って話し、遊ぶ。バイクの免許は取らないだろう。只管、読書に精を出す。


 解説;KGI大学しか眼中になかった俺は受験シーズンを迎えるまでSNG大学のレベルを知らなかった。しょうもないキリスト教の大学だろうと高を括っていた。

 まだ覚えている。受験期の昭和52年3月、SNG大学の弓道部員5名が筑後川で遭難して亡くなった。この事件を聞いた誰かが心から漏らした。

「折角良い大学に入れたのに本当にかわいそうやね」

えっ!SNG大学って良い大学やったん、と俺は初めてその難易度を知った。事実、現役では鳥巣高校から2人しか受からなかった。

 余談だが、俺が幼少期を過ごした猪町町のド田舎に、周囲から神童と呼ばれた頭の良い男子が居た。道を挟んで親父の本家の前だったから親父はよく、「金吾、金吾」と呼び掛け、親しんでいた。

 俺が小学校に入学したとき、金吾は児童長を拝命し、また、みんなの憧れの的、鼓笛隊の総指揮にも選任されていた。学校一の優秀な児童でないと選ばれない役だった。と言っても当時の猪町小学校の児童数は360人ほどだったが。

 その金吾が目指していた大学がSNG大学だったとのこと。親父から聞いた。当時の交通事情、認識から言えば、猪町から福岡市は外国並みに遠いところという感覚だった。

 無念ながらというか、かわいそうに、高校在学中、金吾は気が狂ってしまった。

 親父は、「頭良かったばってなぁ。かわいそうに何の因果でこげんことになってしもうたんかのう。金吾が大真面目に言うんじゃ。おいさん、俺宇宙人と話してきたんじゃとかのう」と嘆いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ