おしまい
ネク太郎は、トラックの荷台にあった金銀財宝を、返してまわりました。
オークもひきつれて、襲った場所に謝りにいきます。
最初は受け入れてもらえなかったり、怖がられたりしました。
でも、オークはほんらい、気のいいやつらだったこともあって、時間をかけて、ゆっくりと、ひとびととわかりあっていきました。
ネク太郎は、いつしか、オークたちの中心人物になっていました。
じっくり、1年ほどかけて、ようやく、財宝を返し終わりました。
ネク太郎はオークたちをひきつれて、おばあさんたちの待つ、おうちへと帰ります。
てがみはだしていましたが、実際にあいにいくのは、ほんとうに、ひさしぶりです。
ネク太郎はちょっとどきどきしました。
家に帰ると、そこには5人の女の子がいました。
エルフのおばあさんと、ネク太郎にとってのかあさんである、お孫さん。
旅のさいしょに助けたハーフリングの女の子。
それに、バードリングの女の子と、女騎士さんもいました。
ネク太郎に案内されてから、ずっと、家にいたんですね。
1年もあったら、でていくこともできたでしょうけれど。
「ただいま」
ネク太郎は、みんなに言います。
おばあさんが来て、ネク太郎のおおきなからだに、だきつきました。
「おかえり、ネクターロウ……手紙では聞いていたけど、ほんとうに、オークたちといっしょなんだねえ」
「そうだよ、おばあさん。みんな、気のいい、仲間たちさ。オークがわるものだなんていうのは、かんちがいだったんだ」
「そうみたいだねえ。……実はね、ネクターロウ、今までずっとだまっていたことがあるんだ」
周囲がざわつきます。
ついに『アレ』を言うのか、という期待がたかまっているようです。
『アレ』とは、もちろん、ネク太郎のほんとうの種族です。
おばあさんは、期待にこたえるように、口を開きました。
「おまえは、じつは、あたしたちと同じエルフじゃなくて、オークなんだよ」
言ってしまいました。
お孫さんはもちろん、事情をなんとなくさっしていた、オークたちも、ハーフリングの女の子も、バードリングの女の子も、女騎士さんも、みんな、きんちょうした顔をします。
ネク太郎は、笑いました。
「知ってたよ。こんなみための俺が、エルフのわけないじゃないか」
みんな、おどろきます。
ネク太郎は、それでも、笑ったまま、言いました。
「でも、エルフのおばあさんと、エルフのかあさんに育てられたんだ。種族がなんだって、俺は、ふたりのこどもだよ。俺にとって『エルフ』っていうのは、種族の名前じゃなくて、『ふたりの家族だ』っていう、意味なんだ」
おばあさんとお孫さんは、泣いて、ネク太郎にだきつきます。
ネク太郎は、いままでいっしょにいたオークたちに、こう言います。
「オークのみんなだって、もう、俺の家族みたいなものだ。だから、オークはエルフなんだよ」
オークたちも、泣きじゃくりました。
ハーフリングとバードリングと、女騎士さんは、ぽかんとしています。
でも、空気をよんで、はくしゅをしました。
○
そのご――
ネク太郎は、オークにたいするかんちがいをどうにかするため、世界をまわりました。
旅でであった仲間たちの助けもあって、オークをこの世界で7ばんめの種族として、みんなに認めてもらうことに成功します。
相手が同じ有機物なら、わかりあえるのです。
ネク太郎はきずなのとうとさと、かんちがいの怖さを、世界中のひとたちに、教えました。
いつしか、ネク太郎は、オークたちの、ほんとうの、他国からその権威を保証された、おうさまとなります。
そのかたわらには、色々な人種のおきさきさまが、いたそうですよ。
めでたし。めでたし。