表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤字領地を押し付けられた無能文官、数字と仕組みだけで静かに成り上がる  作者: 蒼野湊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/116

第84話 余白の形

 復旧会議は、いつもより長かった。


 資料は整っている。

 被害総数。

 対応時間。

 救出率。

 物資配分の推移。


 数字は、きれいに並ぶ。


 だが、

 全員が知っている。


 これだけでは足りない。


「再現可能な基準案を提示します」


 レインが言う。


「現場判断を分類し、

 条件ごとに分岐させる」


 合理的だ。


 ルカは腕を組んだまま聞いている。


「だが、それで現場は動けるか?」


「動けるようにする」


「水は待たない」


「だからこそ、迷わない形にする」


 短い応酬。


 俺は資料の一枚をめくる。


 そこには、別の欄が追加されていた。


> 現場判断記録(自由記述)


 空白の欄。


「……これは?」


 若手が問う。


「残すための欄だ」

 レインが答える。


「何を残す」


「数にできなかった判断」


 沈黙。


 ルカが小さく頷く。


「それなら、使う」


 それだけで十分だった。


 午後。

 試験運用が始まる。


 現場報告に、短い文が増える。


> 判断理由:目の前にいたため

> 判断理由:声が聞こえたため

> 判断理由:間に合うと思ったため


 曖昧。

 だが、嘘ではない。


 数字ではない。

 だが、現実だ。


 夜。

 執務室で、レインが言う。


「基準は、整いました」


「そうか」


「だが……完全ではありません」


「最初からそうだ」


 彼は、少しだけ笑う。


「余白を残しました」


「どんな形だ」


「記録として残る余白です」


 俺は頷く。


 消えない余白。


 次の判断に、

 直接は使えないかもしれない。


 だが、

 消えなければ、

 誰かが見る。


「それでいい」


 それ以上は言わない。


 成り上がりは、

 すべてを埋める物語ではない。


 **余白に形を与え、

 消さないようにする物語だ。**


 帳簿には、

 数字と、

 言葉が並んでいる。


 どちらも不完全だ。


 だが、

 並んでいる限り、

 制度は呼吸を続ける。


 そして今。


 余白は、

 空白ではなく、

 残された形になっていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ