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赤字領地を押し付けられた無能文官、数字と仕組みだけで静かに成り上がる  作者: 蒼野湊


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第82話 止まれない時間

 復旧は、数字よりも遅かった。


 道路は寸断され、

 物資は偏り、

 避難所には人が溢れる。


 報告書は整い始めている。


 だが、現場は整っていない。


「医療物資が足りません」

 事務官が言う。

「優先順位を決める必要があります」


 優先順位。


 その言葉が、再び重くなる。


 レインは、資料を開く。


「重症度、回復見込み、年齢、搬送距離――」


 基準を並べる。


 合理的だ。

 間違っていない。


 だが。


「それ、今決めるのか」


 ルカが言う。


「決めなければ、配れない」


「現場はもう配ってる」


 短い言葉。


 会議室の空気が止まる。


「基準がなければ、不公平が生まれます」

 若手が言う。


「公平に遅れるより、

 偏って間に合わせる」


 ルカは即答する。


 沈黙。


 レインは、ゆっくりと言う。


「……現場判断を優先する」


「最初からそうしてる」


 ルカの声は、疲れている。


「ただ、後で説明できる形にしてくれ」


 それは、中央への要望だった。


 責任の言語化。


 午後。

 主人公は、現場報告を読み続ける。


> 薬剤不足

> 軽症者の処置遅延

> 高齢者優先で配分


 数字にすると、歪む。


 だが、現場ではそれが自然だ。


「……基準は、遅れる」

 レインが呟く。


「現場は、先に決める」


「追いつくしかない」

 俺は言う。


「基準は、後から整える」


 彼は頷く。


 それは、第5章の逆だった。


 あの時は、

 基準が先で、

 現場が従った。


 今は、

 現場が先で、

 基準が追う。


 夜。

 ルカから短い報告が届く。


> 本日、配分完了

> 三名、状態悪化

> 一名、回復


 四人。


 数字は小さい。

 だが、重い。


 レインは言う。


「全体最適ではない」


「そうだな」


「だが、最適を待てば、間に合わない」


 彼は、ようやく理解している。


 止まれない時間がある。


 その中では、

 最適は意味を失う。


 成り上がりは、

 常に正しい順序で進む物語ではない。


 **順序が崩れた時に、

 それでも選び続ける物語だ。**


 窓の外は、まだ曇っている。


 雨は止んだが、

 空は晴れていない。


 制度もまた、

 完全には晴れていなかった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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