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赤字領地を押し付けられた無能文官、数字と仕組みだけで静かに成り上がる  作者: 煤原ノクト


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第4話 数字が、止まった日

 改革を始めてから、十日。


 正直に言えば――

 劇的な変化は、まだない。


 城下町は相変わらず静かで、

 畑の様子も、急に良くなるわけじゃない。


 だが。


「……減ってない?」


 老執事が、帳簿を見ながらぽつりと呟いた。


「え?」


「税収です。

 先月と比べて……減少が、止まっています」


 俺は、数字を確認する。


 確かに。


 増えてはいない。

 だが、これまで毎月続いていた“右肩下がり”が、ここで止まっていた。


「理由は?」


「露店が増えています。

 逃げていた小商人が、戻り始めているようで」


 それを聞いて、俺は少しだけ息を吐いた。


(予想通りだ)


 税率を下げたことで、

 「どうせ取られる」という諦めが、少しだけ薄れた。


 城下を歩くと、それが分かる。


「久しぶりに店を出してみたんだ」

「今なら、何とかやれそうでな」


 笑顔とまではいかない。

 だが、前より表情は明るい。


 ――そして、数字にも出ている。


「……若様」


 警備隊長が、低い声で言った。


「正直に言うと、半信半疑でした」


「だろうな」


「ですが……

 この短期間で、ここまで空気が変わるとは」


 俺は、何も言わなかった。


 空気じゃない。

 数字だ。


 昼過ぎ、商業担当だったマルコが呼び出しに応じた。


「……何の用ですか」


 態度は、硬い。


「報告だ」


 俺は、帳簿を差し出した。


「税収の減少が止まった。

 露店と小規模取引が増えている」


「……それが?」


「君の言っていた“破滅”は、まだ来ていない」


 マルコは、黙り込んだ。


 反論できない。

 数字が、嘘をついていないからだ。


「勘違いするな」


 俺は続ける。


「これは成功じゃない。

 失敗が止まっただけだ」


「……」


「だが、止まれば――次は、積める」


 マルコは、唇を噛みしめたまま、何も言わなかった。


 その夜。


 執務室で一人、帳簿を見直す。


 赤字は、まだ重い。

 借金も、消えていない。


 だが。


「……いけるな」


 小さな数字の変化。

 たったそれだけで、未来は変わる。


 剣も魔法もなくてもいい。


 数字は、裏切らない。


 この領地は――

 ようやく、止血が終わった。


 次は、血を増やす番だ。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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