↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤字領地を押し付けられた無能文官、数字と仕組みだけで静かに成り上がる  作者: 夜凪レン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/118

第2話 最初の改革と、最初の反発

 翌朝、城の小さな会議室に領地の関係者が集められていた。と言っても、集まったのは老執事、警備隊長、徴税担当、それに商業を任されている中年男が一人。それで全員だった。


(本当に人がいないな……)


 それでも俺は、机の上に帳簿を並べた。


「まず、確認したいことがある」


 視線を巡らせる。


「この領地、毎年赤字だな?」


 全員が黙ってうなずいた。


「理由は“魔物が多い”“土地が痩せている”“人が減った”――そういう説明になっているが」


 俺は帳簿の一ページを指で叩く。


「本当の原因は、これだ」


 徴税担当の男が、顔をしかめる。


「……税、でございますか?」


「正確には、税の取り方だ」


 俺は淡々と続けた。


「今は一律で徴収している。不作でも、儲かっていなくても、同じ税率だ」


「それは昔からの決まりで――」


「結果、農民は逃げ、商人は寄り付かない。収穫量も流通量も落ちて、税収がさらに減る。悪循環だ」


 会議室が静まり返る。


「だから、変える」


 警備隊長が眉をひそめた。


「変える……とは?」


「税を下げる」


 一瞬、空気が止まった。


「なっ……!?」

「そ、それでは、ますます赤字に……!」


 反発は予想通りだった。


「安心しろ。全体を下げるわけじゃない」


 俺は帳簿をめくり、別の資料を示す。


「農民と小規模商人は下げる。代わりに、“特定の取引”だけを重点的に見る」


 商業担当の中年男が、ぴくりと反応した。


「……特定の取引、とは?」


「外部商人との専売契約。価格が異常に低いものがある」


 俺は、ある取引先の名前を読み上げる。その瞬間、中年男が声を荒げた。


「それは……必要な取引です!」

「相手は王都の大商会! 逆らえば、もう物資が入らなくなる!」


「だろうな」


 俺は冷静に答えた。


「だが、その契約のせいで、この領地は“売るほど赤字になる構造”になっている」


 男の顔が青ざめる。


「そ、そんな……今さら……」


「今さら、だからやる」


 俺ははっきり言った。


「このままなら、どうせ潰れる。なら一度、痛みを伴ってでも立て直す」


 沈黙。老執事が、恐る恐る口を開いた。


「……若様。それは、かなりの反発が出るかと」


「分かってる」


 俺は椅子にもたれ、息を吐いた。


「でも、誰かが嫌われ役をやらないと、この領地は本当に終わる」


 警備隊長が、腕を組んだ。


「もし、失敗したら?」


「その時は――」


 俺は少しだけ笑った。


「俺の首ひとつで済む話だ」


 全員が、言葉を失った。剣も魔法も使えない、後ろ盾もない文官の言葉を、それでも誰も笑い飛ばさなかった。


 この改革が成功するか失敗するか、結果が出るのは早くて数週間後だ。ただ、帳簿を閉じながら思う。この領地は死んではいない。腐っているだけだ。


「では、専売契約の一覧を出してくれ」


 俺は商業担当の男に、そう告げた。

会議室で税を下げると言い放ったレオン。反発は、当然のように商業担当から上がりました。


次話では、その反発が城下へと漏れ出し、彼を「無能」と呼ぶ声が広場に集まります。感情でぶつかってくる相手に、レオンが差し出すのは一冊の帳簿だけ。


続きも気になる、と思っていただけましたら、ブックマークをいただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。