三十三幕
ベロニカはプリンのレシピを探って恋人に貢ごうとしていたそうだ。
恋人は他領の商会の跡取り候補だった。三人兄弟の末っ子で跡取りの座を巡って兄たちと争っていた。プリンをセルダ領以外でも販売できるようになれば、兄たちを蹴落として跡取りになれると思ったらしい。
バラハの町ではプリンは領主と契約している厨房施設でのみ調理されていた。町で取り扱っている店は販売のみを託されていて、レシピは知らされていない。
ベロニカは厨房勤めに応募したが不採用で領主邸のメイドになった。領主邸で探っているうちにエミリアナがプリンの発案者だと知った。エミリアナに接触すれば何かわかるかもしれないと王都のタウンハウスへ移動願いを出した。
運よくタウンハウスに欠員がでて、すでにメイド教育が済んでいるベロニカなら即戦力になると希望が通ったが、一足遅かった。
ベロニカがエミリアナ付きになった時にはもうプリンのレシピが一般公開された後だった。ただし、スタンダードなプリンだけだ。かぼちゃプリンなどはまだ秘匿されていて、ベロニカは考案者のテオドラに取り入ろうとしたらしい。
しかし、テオドラは二号店のオープン準備で忙しく、接触は無理だった。そこで初志貫徹ではないが、色々な案をだしているエミリアナをターゲットにすべく、今回の誘拐騒動を思いついた。
ちょうど、ルカスが領内の視察で長期的に留守にしていた時期でもある。ルカスの護衛に人手が裂かれていて、タウンハウスには若手で経験の未熟な護衛が残されていて、いい機会だと思ったのだ。
攫ったエミリアナからまだ公にしていないアイディアを聞きだして自分たちで利用するつもりだったという。
御者は裏賭博にハマっていて借金があったし、護衛は武器コレクターでどうしても欲しい剣があったが、貯金が足りなくて困っていた。ベロニカは二人に高額な報酬をちらつかせて仲間にした。
三人ともエミリアナからアイディアを聞きだしたら解放するつもりだったから、自分たちも被害に遭ったフリをすることにした。恋人が雇ったならず者に馬車を襲わせて、捜査撹乱と身の安全を図ったのである。
大人気のプリンの二号店オープン直前で、他家や他店との情報戦が激しくなっていたから上手く誤魔化せると思ったらしい。
「・・・それで、たまたま居合わせた君のおかげでエミリアナ嬢は助かったわけだけど、ちょっと出来過ぎだよね。君が奴らの一味ではないと証明はできるのかな?」
イラリオがにこりと微笑んで尋問している相手はフィデルだ。
テオドラから秘密裏にルイシーナに報告が行って、エミリアナを保護した後は捕らえた者たちを尋問して全容を明らかにせねばならない。尋問の責任者はエミリアナを先に帰して被害に遭わせたと後悔したイラリオだ。フィデルも事情確認のため、セルダ家に招かれていた。
フィデルは呆れたようにため息をついた。
「お、いえ、私が奴らの仲間で助けたフリをして侯爵家に取り入るつもりだとお疑いですか?
何のために? 報酬目当てなんて、あり得ませんよ。私はもうすぐB級にあがる。
上級冒険者になれば高額報酬は当たり前だし、B級になれば無理なく貴族家との接点はできる。
わざわざ危険を犯してまで侯爵家に取り入る必要がありません」
「でも、君はエミリアナ嬢と親しかったのだろう? まるで、兄妹のようだったと聞いている。
君に救われた彼女は昔の気安さと恩を感じて、何かと君に便宜を図るようになるだろう。侯爵家の後ろ盾を得るのは十分な動機になると思うけど?」
「そんなことのために第三王子の仮婚約者を危険に晒す?
心外だな、私はずいぶんと愚か者だと思われているようですね」
目が笑っていないイラリオに対抗するかのようにフィデルは冷笑を浮かべていた。すっと赤い瞳を細めて剣呑な目つきになる。
「たかが冒険者と侮るのはいかがなものかと思いますよ?
私は上級冒険者の知人が多い。その気になれば、こんな誘拐未遂なんて雑な手段ではなく、本当にエミリ、アナ嬢を拐かすのは可能だ。
なんなら、偽装して彼女が死んだことにしてもいい。彼女が他国に逃れて自由に生きられるようにもできる。
その手段も伝手も、そして動機も私には十分にあるのですがね?」
イラリオが意外そうに目を見開いた。予想外の反撃に内心では面白がっていた。
「へえ、大した自信だ。
それなら、どうしてやらなかったのかな? 今日の誘拐未遂なんてちょうどよい機会だろう。彼女を連れて逃げてもおあつらえ向きにベロニカたちが犯人だ。捜査の手が君に及ぶことはない。
もしかして、準備が足りなかったのかい?」
どことなく揶揄うような雰囲気に、フィデルは顔をしかめた。
「もし、エミリアナ嬢が冷遇されていたら、これ幸いにと実行したかもしれない。
でも、彼女は侯爵令嬢に妹として受け入れられて身の安全が保障されていた。仮婚約も成否は五分五分という噂で、どうなるかはまだわからなかった。
何より、彼女自身の意思を確認もせずに、そんな無謀な真似はできない。
・・・エミリの幸せが一番大事だからな」
最後の呟きは聞き取れないくらいの小声だった。風の幕を周囲に巡らしていたから拾えたイラリオは無意識の独り言かと内心で頷いた。
「・・・まあ、君の気持ちはよくわかったよ。証拠や証言があって本気で疑ったわけではないんだ。
ただ、君が避難先に選んだのはA級冒険者のダニエル・ベラスコ氏の持ち家だろう? ベラスコ氏から何か聞いているのではないかと思ったんだ」
「ダニエルさんとは時折パーティーを組む仲間で、最近やっか・・・、いや、非常に難しい依頼を受けたとかで数カ月から半年くらいは王都を留守にすると聞いている。
その間、王都に滞在するなら、屋敷を自由に使っても構わないと言われていたのだが・・・」
フィデルは首を傾げた。
『厄介で面倒で全く乗り気でない依頼だが、どうしても断れなくて引き受けるしかなかった』と、ダニエルは顔をひきつらせていたな、と。
ダニエルの父親は男爵家の跡取りでメイドだった母と一緒になるために駆け落ちしていた。ダニエルの祖父はずっと息子を案じていたようで、遺言で王都の屋敷を父に残してくれたのだが、ダニエルたちはアルファーノ国で暮らしていたから何も知らなかった。
ダニエルが上級冒険者になって有名になったら男爵家の弁護士から連絡が来て初めて知ったのだ。
なんでも、王都の屋敷は区画整理で貴族街から外れてしまい、周辺は交通の便が悪くて寂れていく一方で手放したくても買い手が見つからなかった。男爵家では持て余していたから、遺言通りにしたそうだ。
しかし、連絡がとれた頃にはもう両親は亡くなっていたし、姉も前夫から解放されてアーロンと幸せになっていたから、王都の屋敷はダニエルが引き継いだ。管理の老夫婦も行き先がないそうで、冒険の拠点として使うからそのまま住み込みで管理をお願いしていた。
ダニエルのスキル『属性強化』はレア中のレアスキルだった。自分以外にもスキルをかけられるので、パーティー加入のお誘いが相次いで争いにまで発展しそうな勢いだったという。
ギルドが仲裁に入って、ダニエルのスキルが必要と思われるパーティーに臨時加入という形であちらこちらに渡り歩く活動をしていた。フィデルも臨時加入が多くて似た境遇だったから、レアスキル仲間の先輩後輩の間柄だ。
ダニエルがギルドの紹介で技術指導に赴いた学園にはエミリアナも通っていたが、騎士科の外部講師だったダニエルと令嬢のエミリアナでは接点はないと思っていた。
ダニエルがお貴族様に抹殺されそうになったのは、てっきり高位貴族の令息を遠慮なくぶちのめしでもして報復されたのかと思っていたのだが・・・。
「一体、ダニエルさんにどんな依頼をしたのかは知らないが、彼は依頼内容を漏らしたりはしない。冒険者は守秘義務のある依頼を受けることもあるから、詳しい内容は相手が話さない限り詮索しないのがマナーだ。
だから、今回の件とダニエルさんは無関係だが、彼が受けた依頼はエミリに、いや、エミリアナ嬢に関係のあるものなのか?」
フィデルが険しさを増して厳しい顔になる。
「そうだねえ・・・」
イラリオはしばし対応を悩んだ。
ここは煙に巻くべきか、公爵家の権力で脅すべきか、それとも・・・。
まだルイシーナには知らせていないが、ベロニカにエミリアナがプリンの発案者だとバラしたのはオクタビア付きの侍女だった。オクタビアは最初の侍女長による嫌がらせ以降はエミリアナの存在さえも無視して関わりを避けていた。夫の隠し子相手にしては穏便な対応だ。
だが、オクタビアの心の底では庶子が憎くて仕方がないとしたら?
自分の手は汚さずに目障りな相手を排除するなんて、実に高位貴族らしいやり方だ。オクタビアは社交をしないと言っても決して無教養でも知恵が働かないわけでもない。
ルイシーナはエミリアナに貴族籍に留まってほしいと願うほど気に入っている。本当に妹のように思っているのだ。エミリアナに何かあれば悲しむし、それが自分の母親によるものだとしたら、深く傷つくだろう。
イラリオは目の前の青年をじっと見つめた。
あと一月ほどで成人すると聞いているが、すでに体格は成人男性のものと変わらない。ずっと冒険者を目指して鍛錬していたと聞くし、家業につける十五歳から冒険者活動を始めてもうすぐB級に上がるほどの腕前だという。
B級目前ならば対人相手の剣技も身につけているはずで、公爵家の護衛騎士に確認させてみてもいいかもしれない。
イラリオは第三の選択肢を思い浮かべて、にこりと貴族の笑みを浮かべた。
「君の腕前を見せてくれたら、教えてあげてもいいよ。どうかな、我が家の護衛騎士と一勝負してみないかい?」
エミリアナに関する情報ならなんでも大歓迎だ。フィデルは即答して頷いた。
「エミリアナ、もう大丈夫なの? 無理はしないで休んでいていいのよ」
ルイシーナが心配そうにエミリアナを気遣ってくれたが、本人はすこぶる元気である。
何しろ、気絶というか、眠り薬で意識がなかった間に全てが終わっていたのだ。起きたら、目の前にずっと会いたがっていた相手がいて、最初は夢かと思ったくらいだ。
「お姉様、わたくしは大丈夫ですわ。ご心配をおかけして申し訳ありません」
「いいえ、貴女のせいではないもの。プリンの評判を甘く見ていたわたくしの判断ミスだわ。
まさか、貴女のアイディアに目をつけられるとは思わなかったの。専門店も新商品も貴女に任せっ放しのせいね、怖い目に遭わせてごめんなさい」
ルイシーナに謝られて、エミリアナは慌てて首を横に振った。
「いえいえ、お姉様のせいではありません。わたくしが好きで楽しんでやっていたことですし、謝らないでくださいな。
それに悪いことばかりではありませんもの。
フィデルと会えて嬉しかったですわ。彼は兄のような人で、ずっと一緒だって、家族だって約束していたのです」
エミリアナが本当に嬉しそうな笑顔を見せるから、ルイシーナは曖昧に頷いたものの複雑な気持ちだ。
誘拐未遂を秘密裏に処理するために信頼する者をお迎えにだしたのだが、エミリアナは助けてくれた相手にずっとひっついていたと報告を受けている。実際、侯爵邸に着いて出迎えた時に彼女は隣の冒険者の服の裾を掴んでいた。
テオドラよりももっと気を許しているようで、彼と離れる時に一瞬だけだが不安そうな顔になっていた。
ルイシーナはふと以前エミリアナが好みのタイプを吹聴していたのを思い出した。
「そういえば、貴女は年上の方が好みだと言っていたわね。確か、運動が得意な努力家で兄貴分みたいな人、だったかしら?
・・・上級冒険者だと具体例をあげていたわ。もしかして、あの方のことを言っていたの?」
「ええっと、はい、まあ、そうです。一番、身近な人だったし、フィデルはいつもそばにいたから」
エミリアナが視線をうろうろとさせたり、にまりと顔が緩んだと思うとしかめ面になったりと忙しく百面相をくり広げている。
「まあ、彼と比べると確かに殿下は頼りなく見えるわよねえ。体格も、その、殿下はひょろっとした感じに見えるし」
「そうですよ! フィデルは冒険者を目指して鍛えてたから、カッコいいでしょう?」
エミリアナが我がことのように声を弾ませている。
「もしかして、エミリアナは彼のことが好きなの?」
「はい! 家族ですから」
元気いっぱいの返事にルイシーナはなんとも言えない顔になる。
家族ということは異性としては意識していない、つまりは恋愛対象外なのか?とルイシーナが考え込んでいると、ノックがして顔をだしたのはテオドラだ。
「お嬢様方、少しよろしいでしょうか? ご報告したほうがよいことがございまして」
「テオドラ、どうしたの?」
エミリアナが尋ねると、テオドラはきっちりとドアを閉めて部屋の中のメンバーを見渡してから素に戻った。
「それが、若君がフィデルの腕前を見たいとおっしゃったそうで、若君の筆頭護衛騎士と勝負するのですってえ」
「ええ! フィデルが?」
エミリアナが驚いて目を見張る。
イラリオの筆頭護衛騎士は王都の剣術大会の優勝記録保持者だ。対人戦のエキスパートと言ってもよい。
フィデルはもうすぐB級に上がると言っていたが、対人よりも魔獣相手のほうが慣れているはずだ。勝敗は勝負する前から見えている気がする。
「フィデルはタイミングよく助けに入ったから、あいつらの一味じゃないかって疑惑があったみたいで。疑惑を晴らすためにも勝負するみたい。
まあ、あいつのことだから、エミリアナの顔を見るだけでもって近くを彷徨いていた結果だと思うのだけどねえ」
テオドラが呆れたように肩をすくめた。エミリアナが不安そうに顔を曇らせる。
「フィデルはわたしを心配してくれてただけだよ。大丈夫なのかなあ」
「心配なら見に行く? ルイシーナ様、構いませんか?」
「そうねえ、騎士科の練習を見学に行くのと同じだと思うし、わたくしも見てみたいわ」
ルイシーナが同意したので皆で見学に行くことにした。
騎士の訓練所に着くと、ちょうど勝敗が決したところだった。
意外にも勝者はフィデルだ。荒い息をついて、剣を相手に突きつけている。
両手をあげて降参のポーズをとっているのはイラリオの護衛騎士だが、彼は余裕の表情でまだまだ余力がありそうだった。
「あれ、シーナたちはどうしたの?」
イラリオが気づいて寄ってくる。ルイシーナが代表で答えた。
「勝負すると聞いて、見学に来たのよ。でも、もう終わってしまったようね」
「ああ、私の護衛は剣を手放してしまってね。続行不可で負けてしまったよ」
「剣を手放したって何があったの?」
イラリオの説明によると、スキルの使用有りの勝負だった。剣を打ち合っているうちに急に護衛の剣が凍りついて腕まで凍りそうになったそうだ。慌てて剣を手放したところで、剣を突きつけられたのだという。
「いやあ、完敗しました。まだ若いのに、大したものだ」
護衛騎士が爽やかな笑顔で称賛するが、フィデルの顔はものすごいことになっていた。しかめ面に苦い笑みが張り付いている。
「何が完敗ですか。そちらはスキルも使っていないでしょう。
こっちは奥の手も全部使いきって、かろうじての辛勝だ。ただの不意打ちでしかない。腕前の確認になんか、なってない」
「そうでもないさ。
様子見のつもりが本気で打ち合うハメになった。剣が凍り始めたのに気づくのが遅れたし、私の油断が招いた敗北だ。相手の隙をつくのも対人戦では常套手段だからね。誇ってよい勝利だよ」
護衛の言葉にイラリオも頷いているが、フィデルは納得し難いようだ。
エミリアナはフィデルに近寄ってぐるりと一回りして眺めた。フィデルの体のチェックだ。
「フィデル、怪我はしてないよね? フィデルが無事なのが一番だよ」
「ああ、大丈夫だ。心配させてごめんな」
フィデルが頭を撫でようと手をあげたが、周囲の視線に気づいて中途半端に手が止まる。
「どうしたの、フィデル。やっぱり、どこか痛むとこあるの?」
「ああ、いや、なんでもない」
フィデルは若干渋い顔だ。
エミリアナが第三王子の仮婚約者のうちは適度な距離を保たないと不貞を疑われてしまう。エミリアナの名誉のためにも自重すべきだった。
イラリオがそんな二人を見て、ふうんと呟いた。
「ねえ、シーナ。ちょっと、相談があるんだけど・・・」
後日、誘拐未遂に関わった者の処分が決定した。秘密裏に収めると言っても、平民による貴族令嬢の誘拐未遂だ。
処刑の一歩手前の刑罰になった。鉱山での重労働で給与は全額被害者への慰謝料に充てられる。一生、借金奴隷の扱いで更生の余地はない。
ベロニカの恋人も密かに処罰対象となった。恋人の商会はライネス家とセルダ家から圧をかけられて倒産した。恋人は破産宣告を受けてまともな職には就けなくなったという。
処罰を聞いたエミリアナは顔をしかめたものの、この世界は身分差のある社会だ。今のエミリアナは侯爵令嬢で第三王子の仮婚約者でもある。妥当な処分だと納得するしかない。
しばらくはエミリアナも自重して大人しくしていた。プリン専門の二号店のオープンも参加は諦めて、テオドラから話を聞くだけにしたし、アイディアの提供も控えていた。
学園と邸の往復だけで二月ほど過ごした頃に姉から新しい護衛の話がでた。
これまでは邸内の内部調査で他に怪しい人物や素行不良の者はいないか確認されていた。調査が終わるまではエミリアナやルイシーナの護衛にはライネス家から信頼できる護衛騎士が付けられた。
ようやく、セルダ家内部が落ちついて通常運営に戻ることになった。
「ねえ、エミリアナ。リオからまだ若手だけど、将来性有望な護衛を紹介されたの。
貴女さえよければ、貴女専属の護衛にしようと思うのだけど、どうかしら?」
「わたくし専属、ですか・・・」
エミリアナは少しだけ考え込んだ。
エミリアナの護衛は邸内の護衛が当番制でついてくれて、これまでは不満などなかった。
しかし、今回の件で身内とも言える相手に裏切られたのは少しだけ怖くなった。御者も護衛騎士もそれなりの勤務年数を経たベテランで問題を起こしたことはなかったのに。
庶子とはいえ、主家の令嬢を危険に晒すなんて常識人ならあり得ない。お金の力って怖いなあ〜と、しみじみと思ってしまった。
「えっと、一度会って話をしてみたいです。どんな方か為人を知ってから考えようと思います」
「ええ、そうするのがいいと思うわ。多分、貴女は気にいる方だと思うけれど」
ルイシーナが揶揄うように含み笑いを漏らして、エミリアナは珍しいなあと思った。
「彼がそうよ」
姉の声を合図にミレイアがドアを開けて招き入れたのは黒髪に赤い瞳の青年だ。ライネス公爵家の騎士服に身を包んでいる。
「お嬢様方、お初にお目にかかります。ライネス家所属騎士、フィデル・レイクスと申します。
何卒、以後よしなに。お見知り置きをお願いいたします」
エミリアナ専属の護衛騎士が決定した瞬間だった。
フィデルが仲間になった! テレレテッテレ〜(RPG風)




