九幕目 奴隷達との夕餉
少し改定しました。
迷霧が泣きやむまで、待っていたと話すとすぐに開放された。
神様がらみはこちらでも特別みたい。
「お帰りなさいませ。凪様」
部屋に戻ると、留守番組みの真風と炎が挨拶する。
「凪様。夕餉まで半時ほどです。湯浴み(風呂)ですが中松様が気を利かせてくれまして、七の刻(午後七時)から九の刻(午後九時)まで借り切り風呂もみじの湯が使えます。広いので六人全員で入れます。御背中は誰に洗わせますか」
真風が聞くが、夕餉は夕食で湯浴みは風呂だよね。
えっ。貸し切り風呂。体を洗ってもらうのですか、全員で一緒にお風呂に入るの。出会ったその日に混浴ですか。
中松さん説明不足なのに気を利かせすぎです。
取りあえず保留にしよう。
『和風ちゃん達とお風呂入るの。おふろ~』
火は楽しいみたいだね。
『精々楽しみな。くくくっ』
伝承どうりの性格だったんだね。草犬君は。
『火と植よ。静かになさい。風の名の人よ。他の精霊は我、水と土で抑えますから、ゆっくりとお疲れを取って下さい』
ありがとう。 水と土の精霊さん。
「夕餉まで、少し話そう」
自分が話す。時間稼ぎ。
円になるように座らせる。
真風がお茶を皆に入れる。
「迷霧は何故、忍者を隠す」
「知られたくないからです。今の藩主様には、戦国の頃は決まった主に仕えず、雇われ忍だったので藩主様に使い潰されるか、不審がられて皆殺しにされるかもしれません」
迷霧ちゃん。辛い立場だね。
「流れ忍」
「はい。売られたのは村の年貢が払えなかったからです。我は五人兄弟の三番目の一人娘でした。兄弟皆から可愛いがられましたが。忍者を知られたくなく。娘の我が売られました。長男が心配して良い主人に巡り会えた時のみ、持てと道具を隠してくれました。すべては年貢です。獣人は三年前より、年貢が三倍になりました。御公儀の方針だと」
「御公儀は人間族以外を偽人と勝手に名づけ、人間族以外の藩を潰す感じがします」
ひめの憤慨しながら話にはいった。話しを続ける。
「その偽人の力を戦国の頃は、散々当てにしたくせに」
「三崎藩が我ら龍人と獣人を僻地の開墾にあたらせたのも、御公儀の命との噂が。我が売られたのも、年貢です。開墾中なので年貢なんてとても払えないのに」
炎が話すが機嫌が悪い。
「話しを替えよう。皆の事が知りたい。ひめのは加護の事は知られたくなかったの」
「は、はい。風大精霊様の加護を受けし者は、今まで我も含め四人のみ。百十二年振りです」
「少ないな」
「少なすぎるからこそ、秘め事にしました。特に御公儀には力ある者は幕命で無理やりか、人攫い同然に連れ去り、奴隷魔道具より更に強い魔道具で、武具として死地に行かされます」
また、公儀か。
「戦国の世を終わらせた。初代将軍様が八年前に他界され二代目となり。イキガミ正義教なる、不審すぎる宗教が取り入ってからです。偽人と言い始めたのは」
「落ちついて。今は皆の事が知りたいから。ひめのはエルフって知ってる」
ひめのは驚愕の表示を浮かべた。
「森人族のみに伝わる種族の名をどうして、御存知なのです」
「日本ではなく、海の向こうの国にある伝説。映画じゃ駄目、芝居で有名になった。耳が尖っていて弓と魔道が得意な種族。森と生きる。それがエルフ」
「確か今日初めてお会いした時も森人は伝説と・・我ら森人の特徴ですが」
「琥珀に真風は知っていた」
「存じませんでした」
真風が代表。
「一族でも限られた者にしか、教えれませんから」
「それなら此処での話しと越後屋の六人だけの話しにする。矢上神家の忍者道具と魔道の事は秘め事で頼む」
五人の首輪の黄色の石が鈍く光った。
「誰かきます」
迷霧 忍者の子。さすが。
「失礼します」
襖が開き女中が聞く。
「夕餉が整いました。お持ちして宜しいでしょうか」
「お願いします」
「失礼します」
女中さんから、料理をのせた黒い膳を受け取り、真風が自分の前に持って入ってくる。
後の五つは廊下にある。真風と迷霧に炎が中心となって紅い膳とお櫃と鍋を持ってくる。
「えっと」
「主人の身の回りは我らの特権です」
真風よ。少し怖いよ。
「我、ひめのにさして下さい」
「ひめ。でも給仕は」
「初めてです。それに、ひめのです。凪様、我に盛り付けをさして下さい」
「お願いします」
ひめのちゃん。盛り付けで必死にならないで。
真風と迷霧ちゃんの指導の元、ご飯と汁物の盛り付けが終わる。六人分を盛り付けさしたけど。ひめのちゃん不器用すぎ。
「あれ、膳の色が違うだけと思ったら、料理の皿が二品多い」
「主人と違うのは、当たり前です」
そうなの真風。
小鉢と細長い皿が多い。
小鉢の方は、椎茸と白菜の煮物だ。白菜?日本で一般的に食べられてる白菜だ。
「真風。この野菜は白菜かい」
「はい。白菜です」
「大陸から入ったの」
「どうでしょうか。昔から有りますから」
「日本では、明治、いや、百年ぐらい前に大陸から入ったから」
日乃国原産なら、かなり生態系が違う。虎も居るし。
「細い皿は肉料理なの」
「猪の魔獣の肉ですね」
さすが虎娘の琥珀。肉は詳しい。
魔獣も種類によっては食べると聞いてだけど、魔獣のステーキ肉は初めてでた。
「肉は、皆で分けてお食べ」
近くにすかさず陣取った、迷霧に皿を渡す。
「宜しいので」
「肉は苦手。それに、種族的に肉が好みだと思うけど」
「ありがとうございます。頂きます」
迷霧ちゃんは、ペコリと御辞儀をすると、ひめの以外と分け合う。
「ひめのは」
「森人は野菜か果実のみです。肉や魚は、体が受けつけません」
「ベジタリアンなの」
「べじた何です」
「ベジタリアン。菜食主義」
「主義で無く、体が受け付けないのです」
「そうなんだ。じゃあ、温かい内に食べよう。お代わりは、自分でする事」
「「はい」」
全員良い返事です。じゃあ手と手を併せて。
「いただきます」
「「えっ」」
自分の言葉に全員が固まる。
「いただきはしますが。あの凪様」
ひめのは少し慌てた感じで話す。
「中松さん達も怪訝な顔してたけど。変かな」
「我等は、全ての神様と仏様に感謝いたします」
ひめのが代表で答えた。
「やってみて」
「食事と平穏無事を全ての神仏に感謝いたします」
各自が唱え、五人が合掌した。
「仏様はあるんだ」
「はい」
ひめのは満面の笑みで答えてくれた。
「説明は後、冷めるから。この赤い食べ物は何」
皿に二つある。赤く円になっていて、真ん中あたりが黄色の円になっている。初体験。
「柿衣です。干し柿に真ん中が栗で、油で揚げ、輪切りにした食べ物です」
真風が解説してくれた。
「干し柿を揚げた。初だ」
食べてみた。不思議だ美味しい。
五人の奴隷との初めての食事は、楽しかった。
でも、炎と琥珀でお櫃の米が、無くなった。
食費は、どうしよう。
もみじの湯は、どうしよう。
柿衣
参考文献
別冊歴史REAK 江戸の食と暮らし




