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最弱にて最強の  作者: 凪
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三十九幕目 琴はしんちょうに備て芽出鯛

 別式女、美少女の男袴姿に拘る理由です。

「なんと異形いぎょうの者を使役!」

 娘達に続き役人が驚く。

「妾は野仲のなか 吉成よしなりが姪、異界いかいの者を使役するは得て」 

「野仲殿の姪御か。なら、珍しい異形主従いぎょうしゅじゅうの術を使えるな。失礼致した」

 役人が中松さんに謝罪した。

 公文所には運が良くて他に客が居なく、騒ぎにならなくて良かった。


「野仲殿は、乱世の頃に武功ぶこう(戦働き)を幾つもたてた、異形主従の術の使い手、野仲殿の姪御なら異界の者との契約の術と血筋を受け継いでいるかと。

 異形主従は異界に、住む異形の者と主従の契約を結び使役する術。

異界とは現世とは異なる世界、霊界等、異形の者が住まう世界、面妖なる世です。異世界とは別となりまする」

 ひめの先生が自分に囁いた。

 有名なんだ、中松さんの叔父さん。

 異世界と異界は別々の認識なんだ。そりゃそうか、異世界から人を誘拐してるし。建前上は禁止だけど。

 確かに中松さんの人形ひとがたの影からは、霊気、妖気、邪気とも違う気配がした、禍々しいが初めて感じた気配だったぞ。

「野仲殿の妹御が、中松殿の母上で御座います」

 町田様が小声で教えてくれた。妹の嫁ぎ先か。



 奴隷商で受け取った、八人分の書類を渡す、白い護り人の札を八枚受け取った。自分の札より少し小さい。

 紐を通す穴の横に◎が書いてあり、中にべと書いてある。別式女のべの事だ。

 此で、奴隷でも袴OK、捕まらないぞ。男装のひめのを楽しめる。憧れの侍姿の美少女を楽しもう。琴様ラブ。男袴の美少女ラブ。絶世の美少女の男袴姿を楽しもう。


 人数が多い為、四人が書類に書き込み、後の四人が指先を針で傷つけ、札に血を付ける。そして、何故か主人である自分の血も付ける。

 奴隷は主人のモノだから、本人が魔道力を込めないと、見れない札の記入内容も、主人の魔道力を込めるだけで読める様にする為と御役人講座終了。


 人数が多い為に、二刻(二時間)程待つらしい。その間に別室で役人の指導の元遺言書を書く、立会人は町田様。

 別室に移動する前に、迷霧ちゃんが内容を聴いてきたが、秘め事だよと答える。迷霧ちゃん少し不満そう。

 遺言書を書きながら、精霊達にもひめの付きの精霊に、話さない様に念押しをする。

『和風様にも話さねえのか』

 中身を知れば、ひめの達が気を使うと思う位、皆に良い中身だからね、草犬君。

『そうだな、甘いな、あんた』

 そうだよ、甘いよ。日本では当たり前だけどね。

『日本とやらの人は甘いな』

 異国の人々から面妖(不思議)な国で、大勢の異国の人が観光・・嫌、物見遊山ものみゆさん(他所を見て回る事)に訪れるよ。

 此方では寺子屋かな、異国の人は、童が一人で通うのが危ういと言うがね。

『寺子屋?ああ、ここら辺じゃ手習指南所てならいしなんじょって人は呼んでるがな。指南所に一人で通うなんて、そんなの、皆で見護り教え諭せば良いじゃねえか』

 異国の人はそこが、面妖。

寺子屋は手習指南所か。ふ~ん。覚えとこう。地域で呼び名が違うんだな。

『異国の人は変〜』

 だから、物見遊山に来るの。火の精霊さん。


 遺言書を書き終える、自分の札に小さくゆの文字と番号が記入される。魔道力を込めなくても読める文字だ。奴隷の札にも番号が記載される。

 遺言書は公文所に保管されて、自分が死んだ時に、近くの公文所に札を持って行き、確認後遺言書が執行されるんだって。


「護り人は三人より、そなえとなる。名を決められよ」

 御役人、そなえは何ですか?


 奴隷娘八人を待ち合い所の長椅子に座らせる。

「そなえは何だい」

「そなえは、衆や組、隊の事で御座います。天災や戦などの食べ物や薬草の備蓄の意も御座います」

 何時もありがとう、ひめの先生。

 そなえは備、備え、具え書き、五つの意味があり、一つは非常食や薬の備蓄を意味する。万一に備える。

 何時にも使えるの備える。

 必要な物事を具備ぐび(必要な物事を準備する事)する。

 生まれもって才を備える

 備・と書くこの場合は部隊にあたる言葉だった。

 部隊は小隊からなり、小隊は、組・衆・ぜい・隊の名で区別する。弓組、唐五勢とか。

 大名の備は大規模になり、公儀によって、石高によって人数も定義も決まっているが、少人数で活動する護り人・討伐人は三人から備、小隊扱いとなり名を付けるとひめの先生。

 名、チーム名は何にしようか?


「衆や組、勢や手を後に付けるのが多御座います。珍らしゅう御座いますが、隊も御座います。衆や組を付けないところ御座います。討伐人の曙が名が知られております」

 迷霧ちゃん、講座ありがとう。う〜ん。何にしようかな。新微組、特攻女子いろはチーム、唐五幕府、菜山娘はボツだな。


「名は何がよいかな」 

麗人れいじん(綺麗な人)勢!」

 自分の問いに真っ先に答える迷霧ちゃん、元気があって宜しいが、自分で綺麗て言わないの、却下。

「●●組は」

 早彩ちゃん、それは危ういよ。危険過ぎる為に全部伏せ字だ、御想像にお任せします。

神龍しんりゃう手なら」

 龍に係わりあるのは、炎よ、君だけ。其に何処かで見た文字だから、却下。

「龍と付けている備は多く御座います。鬼神きじん衆は如何でしょうか」

 鬼姫、怖すぎるでしょ。それに奇人きじんに間違われたら困る。

獣隊じゅうたいはどうで御座います」

 琥珀よ、獣人は二人だけだし、重体、渋滞みたいで却下。

「琥珀、隊は珍しいですよ。そら衆、そら組で宜しいかと」

 隊は珍しいのか。でも、真風よ、空組はな。空を飛べる翼人も二人、みりあを入れれば三人だが、三人だけだし、どこかの歌劇団の新しい組に読みが似てるから却下だよ、真風。みりあの翼は内緒にしたいしね。

「しんちょう組はいかがで御座います」

 みりあ、今何て言った、確かしんちょう組?

「しんちょう組!!此方にもあるのか」

「凪様、にほ・・向こうにもしんちょう組がありますので御座いますか」

「みりあ、しんちょう組は向こうにもあった。百五十年近く前だ」

「向こうのしんちょう組の事を、教えて頂きたいです」

 小声でひめのがおねだりしてきた。他の奴隷娘達と少し離れていて、聞き耳をたてていた三崎藩の監視役三人も興味津々で話しに加わる。日乃のしんちょう組はそんなに有名なの?

 町田様も立ったまま、話しを聴くつもりらしい。

 役人がいるから、日本を向こうと濁す。

 

 日本をまったく知らない人に、ややこしい幕末を解説すんだから、概容を言葉を選んで話さないとな、英語はアウトだな。

「向こうのしんちょう組は、新しいの新と、微笑の微で、新微組。

 清河 八郎が帝と京の街の警護の為に、江戸で人集めした浪士ろうし組が、京で二つに別れます。京に残ったのが新撰組となり。もう一つが江戸に戻り幕命で庄内しょうない藩(現在・山形県鶴岡市)の預かりになり、幕府が在る江戸を警護する新微組になりました。

 庄内藩は北にあり、冬は寒い所です。魚拓の発祥地が庄内藩です。

 京の新撰組の名は高名です。江戸の新微組は無名むめいです。

 京の新撰組は初めは浅葱色あさぎいろの陣羽織で、中位から黒い陣羽織でした。

 江戸の新微組は赤い陣羽織を着て、江戸を警護の為に巡るので、江戸の町人達はおまわりさんと呼び慕いました。

 幕府が終焉しゅうえん(最後)して江戸も物騒になり、おまわりさんが巡れば、来てくれれば安全・・平穏だな、平穏になるから、その間に大人は買い物に商売をして、童達は外で遊べました」        

「幕府、公儀が終焉したのか、寿殿。浅葱色の陣羽織とは・・ところで、寿殿、ぎょたくとは何で御座る」

 町田様が驚いたが、御座るは日乃で始めて聴いた。浅葱色に食い付いたか、豊家が伝えたのかな、切腹の作法は一緒?浅葱色は切腹の時に着る死に装束の色。新撰組は何時でも死ねる覚悟あると、アピールする為に初期は浅葱色の陣羽織にした説がある。

町田様は魚拓にも食い付いてる、日乃には無いのかな?

「魚拓は釣った魚が大物の時、魚に墨を塗り、紙に押しあてて魚の形と大きさを残した紙です。文字は魚に選択の択と書きます」

「ほう、珍妙な、しかし、面白味がありそうで御座いますな」

 町田様、目付きが悪いです。

「幕府が終焉ししてからも、幾つもの戦があり、侍の世も終焉します。

 新撰組の隊士、沖田総司の姉の婿で、総司の義理の兄・沖田 林太郎が組頭でした。

 高橋 泥舟でいしゅう、山岡 鉄舟てっしゅうも隊士でした。幕末三舟ばくまつさんしゅうと後の世で名が知られる二人も参加してます。

 二人の親戚で、三舟のもう一人の勝海舟は入ってないです。

 新微組と言えば、男装の麗人 中沢 ことです。男袴の別式女べっしきめ姿です。

 兄の中沢 良之と供に浪士組に参加しましたが、兄は隊士名簿に名が有るのてますが、琴の名は名簿には無く、女だから正式に浪士組入れず無理矢理同行したと伝わります。

 兄は六番組に配属され、新撰組の局長になる近藤勇、鬼の副長の土方歳三、沖田総司、試衛館しえいかん道場と一緒の組でした。

 浪士組が別れると、兄と供に江戸に戻り庄内藩預かりとなった、新微組で兄と行動しました。

 幼い頃から、兄と一緒に法神流の剣術道場を開く父親に師事して、父親を凌ぐ薙刀の腕前。

 向こうの強藩の島津屋敷の騒動にも参加して、薩摩屋敷で左足のかかとを負傷しました。これが戊辰ぼしんの戦のきっかけに成ります。

 戊辰・庄内の戦の時に、薩摩藩と長州藩の他の藩との連合は、名を官軍と称します。

官軍の兵十数人囲まれたのを、瞬く間に数人を斬り捨て、囲いを突破いたしました。

 庄内藩には他に、新整しんせい組、朔法さくほう組、同僕どうぼく組、亀城きじょう組があり、そして新微組を使い、庄内藩は勢いにのる官軍相手に連戦連勝をしましたね。

 庄内藩の藩士・酒井 了恒のりつね鬼玄蕃おにげんばと官軍から呼ばれ怖れられました。

 周囲の藩が降伏した為に、孤立無援になり、庄内藩の降伏によって戦が終局しゅうきょく(決着)したのち、琴は兄と供に国に帰参した後は、自分よりも強い男に嫁ぐと、求婚する男達を全て打ち倒してしまい、生涯独身だったと伝わってます。八七、八歳で他界しました。(昭和二年十月十二日他界)

 浪士組の無理矢理同行の時は、十七歳、背丈は高く(身長百七十センチ当時は高伸長)美貌で男装の女剣士。侍姿なら女人が惚れ、女人姿に戻れば男に求婚された、麗人の女剣士。

 好きで男装してるから、別式女ではないです。

 中沢 琴も向こうでは無名ですが」

 中沢 琴様は憧れの女性です。別式女、侍姿にこだわるのは、琴様ラブもだけど、美少女の男袴姿もラブだから。

「女人でその御強さで御座いますか」

 中松さん、何ですか、その表現できない表情と目の輝きは。何か怖いぞ。

 

 全員が無言になった。静けさを早彩ちゃんが破った。

「御侍姿ならおなごが惚れ、女人姿なら男衆が求婚する程の麗人。しかも御強い、まるで御姉様(椿)、みりあさん、ひめの御姉様、真風御姉様の様で御座います。琴様は」

「我は、その中に入れてくれないので」 

 あらま!迷霧ちゃんが少し不機嫌。

「えっと、迷霧御姉様はとても愛くるしいです」

 迷コンビの相方の不機嫌に早彩ちゃんは咄嗟の言い訳だが、確かに迷霧ちゃんは可愛い系だ。迷霧ちゃんは狐耳をピコピコして、野袴の穴から出している狐尻尾ブンブンしてる、嬉しそうだ。

でも、迷霧ちゃんがメランを褒めたのと一緒のセリフだよ。

「しんちょう組は、光 小太郎様が造られた組で御座います。しんちょうの名は多く御座います」

 早彩ちゃんにおだてられて嬉しいのか、少し顔を赤めたひめのが、説明して文字も教えてくれた、またしても光 小太郎か、神朝組・神の朝ね、異世界は奥が深すぎすな。

「しんちょう組はそんなに多いのか、ひめの」

「文字は違えど多くあります。衆や勢に手も御座います」

 そんなに多いのか、せっかくのしんちょう組だから仲間内で遣おう。文字は後で決めよう。

「備の名で御座いますかが御主人様である、凪様の名字を頂いて、寿組ことぶきぐみ寿隊ことぶきたいはいかがで御座います」

 ひめのの案が一番無難だがな。自分の姓か、何か恥ずかしいな。新微組の話しで空気が替わったからな、ひめのが気を遣ったな。

「寿隊に致しましょ。御目出度おめでたい名で御座います」

 早彩ちゃん、確かに寿は御目出度いけど。

「なら、御目出度おめでたい!目出度めでたいに致しましょう」

 迷霧ちゃん止めてね。

「文字はどちらに致します」

 早彩ちゃん、公文所の備品の紙に落書きしたらダメ。もう名が決まった様な事にしないで。

  御目出度い 御目出隊

  御芽出度い 御芽出隊

 御芽出度い?こんな書き方も有るんだ。

 ん、迷霧ちゃんが二つ書き足すが。

  芽出隊めでたい

  目出鯛めでたいか?

 もっとダメだ!神社の縁起物で目出鯛が有るが、日本の家に置いて有る。でも、名が目出鯛はダメ!

 御目出隊?御芽出隊?目出鯛?どれも嫌だ!寿の方がまだましだ。

 早彩ちゃん、迷霧ちゃんの迷コンビに任したら珍名隊、お笑い組にされる。

「釣ったよ~目出鯛を~目出度いよ、喜ばしいよ、釣ったよ~目出鯛を~目出度いよ、喜ばしいよ」

 迷霧ちゃんか歌ってるし、早彩ちゃんは魚拓・魚拓と言いながら合いの手を入れてるし、誰か止めて。場の空気がますます変になった。

 椿、みりあは早彩ちゃんのはしゃぐ姿に、目が点になってる。早彩ちゃんは普段は大人しそうだもんな。

 迷霧ちゃんの毒に汚染されないで、早彩ちゃん。

 一番ましなのは、ひめのの案だな。

「名は寿隊にする」

 迷霧ちゃんの歌を遮る様に、自分が名を決定する。迷コンビは不満そうだが、迷コンビの頭が芽出度いよ。そうだ、迷コンビの名は芽出隊に決定。

「迷霧、早彩は二人の時は、芽出隊だ」

「凪様、ありがとう御座います」

 あらま!迷霧ちゃんが御礼をいった。君のセンスはどうなってるの?早彩ちゃんは目が点。文字は後で教えよう。

 後の六人は安心した表情だ、そうだよね、チームの名が目出鯛は嫌だよね。


 あらま、町田様は壁に手を付けて笑い死にしてる。笹は?怯えるぞ。げっ!中松さん眉毛MAXだ、背中から本日二度目の黒い人形の影がでている!

 異形の者に襲わせないで下さい。中松様。


 


 新微組は、御存知なかったと思います。

 新微組がおまわりさんと呼ばれていたのは確かですが、町奉行の同心の定廻りが語源との説もあります。

 御廻りさん・お廻りさんと書く説もあります。

 明治時代の警官が、新微組の愛称を受け継いだのが、今に継ぐ説があります。

 諸説有りすぎて判らないのが現状です。


 小説家になろうは凄いですね。無いと思ってた、中沢琴様を書いてる方が、二人いらっしゃっる。計三作品もあるとは。

 魚拓は庄内藩が発祥です。藩で釣道と名付けて奨励してました。日本で最も古い魚拓が現存してます。


 寺子屋は、京都・大阪・伊勢等の特定の地域での呼び名です。他の江戸とかでは、手習指南所・手跡指南と呼ばれました。

 江戸が舞台の時代劇で、寺子屋がでてくるのは間違いです。


 備は、時代と権力者で替わります。手、勢も流行り廃りがありました。

 隊は珍しいく、幕末に奇兵隊が成功したので、隊ブームがあり、諸藩で隊が乱立しました。会津藩の白虎隊、朱雀隊とか。

 ブーム前に設立した、新撰組、新微組は組。


 唐五幕府、菜山娘は何のパロディか解りますか?

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