二幕目 奴隷商 越後屋
「いらっしゃいませ。これはお侍様。身請で御座いますか」
「三崎藩の者だ。こちらの御仁が護り人だが。戦闘奴隷を所望だ。知人の息子だ」
「越後屋、番頭の豊吉と申します。どのような者達が宜しいのです」
「女人の方が扱い易いので、前衛と後衛。家事もできるのなら尚良し」
「かしこまりました。奥に御通り下さい。少々お待ち頂きます」
奥の畳敷きの座敷に通され、茶がだされる。
「中松さん。無理しなくてもいいですよ」
「こちらが薦めたのです。お気遣い無用です」
けっこう待たされる。襖が開き中年の女が正座して深々とお辞儀をする。
「大変お待たせしました。本日はようこそおいで下さいました。主人は明日の大競り市の仕度の為、出ております。女将のさわでございます」
人間族だ。
「寿凪です」
「御目出度い苗字ですこと」
「よく言われます」
「若い娘で戦闘用で家事もできればと聞いております」
「若いとは申してません」
「これは、失礼を」
「はい」
「全員奴隷としての、躾は済んでいます。では、紹介できるのは六人と、訳ありが三人です」
「訳あり」
「お入りなさい」
女将さんが拍手を二回打つ。
「失礼します」
奥の襖が開き、六人の振袖を着た、若い娘達が入ってくる。
着替えさしていたのか、時間が掛かるはずだ。
「九人全員、未通女(バージン)、生娘(バージン)でございます」
女将さんが胸をはって宣言する。
六人は、恥ずかしそうに俯いた。
「右からつるです。十六歳です。人間族でございます。小太刀の業を身に付けております。二十両となります。家事は多少できます」
女将さんが説明を始める。
「つるです。良しくお願いします」
「次が狐族の迷霧です。十五歳になります。地流の剣術と体術を身に付けおります。狐族が得手な幻術の幻魔道が使えます。家事全般得意です。三十両となります」
「どうか御側に置いて下さい。良しくお願いします」
深々と御辞儀をする。
茶の髪に狐耳が良い。顔立ちは、可愛い系。クラスでアイドルになれる。小柄でスレンダーな感じ。振袖の為、尻尾がよく見えない。
自分の勘が告げる。
この娘の隠した能力と技量、隠された能力と才能。この娘はキープ。
「次はねねです。熊族で十六歳です。槍が使えます。二十五両となります。家事は多少できます」
二メートル以上はある、大きすぎるな、ちょっと見た目がな。この娘が着れる振袖が、よくあったな。
「次が春です。人間族で十八歳です。薙刀が使えます。五十両となります。家事はできません。ある藩の家老の娘でした」
すげー美人だけど生意気そうだな。扱いにくそうだな。家事は×。しかも、高い。
「次が松です。十八歳です。犬族で剣術が多少使えます。二十両となります。家事は多少できます」
多少が気になる。
「六人の最後は炎です。十五歳です。三崎藩の龍人族です。槍と大盾が得意です。龍眼流槍術を身に付けています。素手で熊も倒します。家事もある程度は出来ます。四十両となります」
「炎です。三崎藩の方ですか・・・宜しくお願いします」
「これ、炎」
百八十センチぐらいか。美人さんだが。三崎藩には色々あるみたいだな。
勘が告げる。隠れた才能を。
この娘キープだな。
「次が訳ありの三人です。気性が良ければ、腕前と学問は掘り出し者ですよ」
拍手を二回打つ。
襖が開き三人が出てくるが白い袴姿だ。振袖じゃない。
「三人共、着替えを断りました。奴隷身分は袴は穿けないのですが」
女将さんが腹立たしそうに話す。
「初めに、お取り潰しになった。唐五藩の元姫で森護 和風です。十五歳です。森人族です」
「からご! もりごの姫!!」
中松さんが叫んだ。
森人族?耳の先が尖っている。
あらま!エルフだ!!
訳あり、三人娘の説得どうしよう。