表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/130

邂逅④


 フェリクスは滑落した地下空間で焚き火にあたりながら座り、濡れた体を乾かし煙草を咥えると上空を見つめた。


「さて、どうするかな……」


 紫煙をくゆらせながらぽつりと呟いた。

 頭上では自分達が落ちてきた穴がぽっかりと口を開けている。距離にすればおよそ三十メートル程。

 ビル等に換算すれば十階相当にあたる高さは、さすがにフェリクスともいえど、跳躍等でどうにか出来る距離でもなかった。


 ため息をつき、横で眠るように横たわるクリスに目を向ける。


 こいつが起きたとしても、どうにもならないだろうな――。


 そんな事を考えながらクリスを見ていると、ようやくクリスが目を覚ました。


「う……う~ん……あれ?何?」


 目を覚まし周りを見渡しても状況が理解出来ないクリスが戸惑いながら呟いた。


「ようやく目覚めたか。おはよう」


 フェリクスが少し皮肉を込めて語りかけると、クリスはキョトンとして見つめていた。


「……あら、黒い死神ってそんな顔をしてたんだ」


 バトルスーツの面部を外していたフェリクスの素顔を見てクリスは笑みを浮かべた。


「それで、まず聞きたいんだけどなんで私は手足を縛られてるの?貴方の趣味?私、こんな趣味ないんだけど」


 縛られた両手を掲げて問いかけるクリスに、フェリクスは僅かに口端を上げて微笑む。


「俺もないよ。お前が目覚めて暴れ出したりしないようにだ。暴れないなら拘束は解く」


 フェリクスの言葉を聞き、クリスが眉根を寄せて語気を強める。


「何?ひとを獣みたいに言わないでよ!暴れないから早く解いて。あと、お前とか言わないで。そういう言い方嫌いなの」


 強気な態度を崩さないクリスに、少し気圧されそうになりながらフェリクスはナイフを取り出し、縛っていたロープを切った。


「ほらこれで自由だぞ」


「ふぅ。で?何この状況?」


 クリスが縛られていた手首を擦りながら問いかけると、フェリクスは頭上の穴を指さした。


「あそこから俺達は地底湖に落ちてきたんだ。それで濡れた体を乾かす為に今焚き火にあたってる所だ」


 フェリクスからの説明を受け、状況を整理しながらクリスは考え込んだ。


「なるほど。落ちた場所が地底湖だったから助かった訳ね……あれ?貴方、ひょっとして私を引き上げてくれたの?」


「そうだよ。落ちてからお前……いや、君が上がってこないから潜ってみたら意識を失って沈んでいく君をみつけて引き上げたんだ」


 フェリクスの話を聞きながら、クリスは笑みを浮かべた。


「なるほどね、ありがとう。殺し合いしてた相手に助けられるとは意外ね。遅くなったけど私はクリスティーナ・ローレル少尉。まぁクリスでいいよ」


「俺はフェリクス・シーガー少佐だ。俺達兵士は戦場で死ぬのは覚悟してるが、こんな所で事故死みたいな死に方は本意じゃないだろ。さすがに見捨てる事は出来なかった」


 フェリクスの言葉を聞いてクリスは笑みを浮かべながら頷いていた。


「ふふ、黒い死神とか言うから血に飢えた殺戮者みたいなイメージだったけど全然違うわね」


「はは、とんでもないイメージだな」


 広い地下空間に二人の乾いた笑い声がこだましていた。


「それでここからどうするの?さすがにもう殺し合いする雰囲気じゃないでしょ?」


「まぁそうだな。それでどうしようもなくて途方に暮れていた所だ。出口は探してみたけど上の穴以外にはないし、ジャンプして届く距離でもない。通信機は電波の関係か、まったく通じない。クリスのも一応試してみてくれないか?」


 フェリクスに言われ、クリスも試すがまったく繋がる様子もなかった。


「八方塞がりね。どうするの?」


「それを困ってるんだよ。仲間が発見してくれるのを待つしかないかな」


 そう言ってフェリクスは両手を頭の後ろで組むと横になった。

 クリスはそんなフェリクスを見て小さなため息をつくと、微笑んだ。


 そこから暫く二人の間には静寂が訪れる。

 ぱちぱちと焚き火の音だけが地下で響く中、クリスは揺れる炎を見つめながらゆっくりと口を開いた。


「ちょっと聞いてもいいかしら?」


「ん?なんだ?」


 フェリクスは体を起こし、クリスの方に向き直る。


「シャーロットって誰?貴方の恋人?なんであの時シャーロットって呼んだの?」


「……わからん。まず恋人はいないし、シャーロットって知り合いもいない……だからなんでそんな事を口走ったのか……」


 フェリクスは顎に手を添えながら唸った。あの時の幻覚を話すべきか悩んだが、今は話すべきではないと思いその事は伏せる事にした。


「ふ~ん、どこまで信用出来るのかわからないけど、いきなり別の女の名前で呼ぶのはやめてね」


 微笑むクリスにフェリクスは苦笑いを浮かべる。


「じゃあ別の質問……貴方達ラフィン共和国はどうしたいの?この戦争、貴方はどう思ってる?」


 いきなり核心をつくような真剣な問いにフェリクスは戸惑いクリスを見つめる。

 先程までの笑みは消え、真剣な眼差しで見つめるクリスと目が合い思わず息を飲んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ