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47.茶②

「あの軍神と崇められるお方と結婚されるなんて…! 本当に羨ましいです!」


午前は北部家門のお茶会。午後からは西部家門とのお茶会になっていた。

北部家門のお茶会はそれもう北部らしく凍り付いたお茶会だったのに対し、西部家門のお茶会はとても明るく元気いっぱいの雰囲気に溢れていた。

北部令嬢とは違い少し焼けた肌に、朗らかな笑顔。色々なテーブルから笑い声が聞こえてくる。

私はこのお茶会を主催したディースカウ伯爵令嬢とその友達のテーブルに招かれ、キラキラとした目でアレス様のことを聞いてくる。


「まさか義務として送った招待に応じて下さっただけでも嬉しいのに、あのお方のことまで聞けるなんて狩猟大会より嬉しいですわ」

「皆さんはアレス様のことがお好きなのですね」

「あっ! 違います違います。アティルナ公女がいるのに好意なんて抱いていません!」

「そうです。私達はなんて言うか…そのぉ…」

『強い男性が大好きなだけです!』


さすがは現在も西の大国「ベルグスルス王国」と戦争を続けている領地なだけあって、西部では強い男性がモテるらしい。

だから軍神アレス様は西部で大人気で、そして理想的な旦那様だと楽しそうに話してくれた。

午前中はあんなにも気分が沈んでいたのに今は少し…いやかなり楽しい。

アレス様が人気なのも、格好いい!と言ってくれるのも何だか誇らしくて自然と笑みがこぼれてしまう。


「私にも婚約者がいますけど、もう少し筋肉があればなぁと思ってて…。でもいくら鍛えても筋肉がつかないと嘆いていました」

「えー、でもお姫様抱っこはできるでしょう? 羨ましいです。私の婚約者は私より年下で筋肉どころか身長も…はぁ」

「そう思うとお相手はやはり年上に限りますよね! アティルナ公女はトラキア大公殿下と少し離れていましたよね? どんな感じですか?」

「え、えっと…。長年戦地にいたとは思えないぐらい優しくて…紳士的で…。その、いつも私を守って下さる…とても頼りになるお方です」

「キャーッ! 羨ましい! トラキア大公殿下なら誰であろうと臆することなく完璧に守ってくれますよね! いいなぁ本当に羨ましいです!」

「やはり筋肉も凄いですか!? 開会式の時に遠くから見ただけでは解り辛くて…」

「わ、私もそこまで知りません! もっ、勿論見たこともありませんっ」


違う意味で居心地が悪い!

そもそも令嬢が異性の筋肉についてこんな大っぴらに話してもいいの?!

南部でも北部でもこんな話題で盛り上がったことない。領地でこんなにも違うものなんだ…。


「さ、さすが侯爵令嬢…。私達もこの品の良さを見習わないといけませんね!」

「ですね…。……でも軍神の筋肉って気になりませんか?」

「婚約者の前ですよ! 申し訳ありません、少しばかり興奮して勝手に盛り上がってしまいました」

「気にしないで下さい。皆さんがとても楽しそうで私も聞いているだけでとても楽しいです」

「ほら見なさい。私達と同じ年齢なのにこの落ち着きようを! これぐらいにならないとトラキア大公殿下と婚約なんてできないのよ!」

「リル嬢にも憧れますけど、アティルナ公女にも憧れますね」

「リル嬢?」

「西部伯爵家の方です。とても優しく、強くて明るい性格で平民にもとても好かれているのですよ」

「曲者が多い伯爵家門を上手く纏めていると言われるほど逞しいんです! 西部のほとんどの令嬢は彼女に憧れてるんですよー!」


それは是非皇太子妃候補に相応しいお方では?

西部は剣や魔法の才能でのし上がった者が多いせいで血気盛んで纏まりが悪いと聞く。

それをリル嬢がまとめ上げるなんて…。普通の令嬢ではない!


「その…リル嬢はここへ?」

「今年は妹が熱を出したからと不参加です。楽しみにしていたのに残念そうでした」

「お名前を伺ってもいいですか?」

「ヴァナルガンド伯爵リル・フエンティル伯爵令嬢です。今年で16歳になると聞きました」


16歳……。そうだよね、まとめるだけの力があると言うことはそれなりの年齢じゃないとできない…。

ロキ皇太子殿下は10歳だから……いやさすがに離れすぎかな。年齢が逆なら大丈夫なんだろうけど。


「そう言えばアティルナ公女にもご兄弟がいらっしゃいましたよね?」

「え? はい、兄が二人います」

「お二人とも婚約者はいらっしゃいますか!?」

「長男にはいますが次男にはいません。…それがどうかしましたか?」

「お名前はテュール卿でお間違いないですよね!?」

「は、はい」

「テュール卿は魔法が扱えなくても剣技の才能に溢れた方で、無駄のない筋肉をお持ちだと聞いたことがあります!」

「アティルナ家の剣技は西部でも有名ですもの! 是非とも拝見したいものですね!」

「あの…」

「もしテュール卿に婚約者候補がいなければ、是非ともリル嬢を薦めて頂けませんかっ!?」

「まだ若いですしこれからどんな筋肉を育てるのかしら…。私に婚約者がいなければ是非ともご紹介頂きたかった…!」

「とてもとてもとぉぉぉっても素敵な方なのに何故か婚約者ができなくて…。いつもは明るいのにそのときばかりは……。あんな姿なんて見たくないので是非!」

「例え大柄でなくとも、見たことのないような綺麗な筋肉なんでしょうね…。ああ、拝んでみたいわ!」

「ちょっと貴女達黙ってて!」


皇太子妃候補を探しに来たのに、テュールお兄様の婚約者候補に変わって言葉が出てこない。

つい最近別れたから問題ないとしても、リル嬢の話も聞かず勝手に言っていいものかしら…?

テュールお兄様は女性を外見で判断するような方ではない。だから紹介すると喜んでくれるだろうけど…。


「リル嬢の許可を頂ければいつでもご紹介致します。またお手紙ください」

「はい、是非! それからいつか西部にも遊びに来て下さい。南部に比べると少し涼しいですし、まぁガサツな方ばかりですが活気に溢れてきっと楽しいですよ」

「国境付近はさすがに危険ですが、闘技場が大人気で誰でも参加できます。是非トラキア大公殿下にも参加して頂きたいです!」

「あの雄姿を是非ともこの目で!」

「私からもお願いしますッ!」

「ありがとうございます。機会がありましたらご連絡するのでご案内して頂けますか?」

「勿論です! その時を楽しみにしております!」

「ところでアティルナ公女。南部には筋肉隆々な船乗りが多数いるとお聞きしましたがそれは本当ですか?」

「あははっ!」


皇太子妃候補を見つけることはできなかったけど、西部の人達は明るくてとても頼もしい人達ばかりだった。

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