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34.願

「ところで、今日は本当にお茶会だけでよかったのですか?」

「ロキに会わせたかったのもあるし、本当にこれだけだと思う。それとは別に、貰った招待状の参加報告もしたかった」

「招待状ですか?」

「毎年秋になると北部で狩猟大会が行われるらしいな」

「そう言えばもうその時期でしたね。アレス様はご参加されるのですか?」

「(どうせ大したことない大会だろうけど…)アティルナ家は毎年参加していると聞いた」

「ええ。我が家の楽しみでもあります!」

「(笑顔で解る。そして今日一番の可愛さ)婚約者が行くなら出る以外の選択肢はない。その報告をな」

「本当ですか? 毎年楽しみですが今年が一番楽しみです! 弓はあまり得意ではありませんが気合いが入ります」

「(俺と一緒なのが嬉しいとか可愛すぎて無理。本当に無理! シルが放つ純粋な言葉ほんと無理!)……ん? シルも狩猟側で参加するの?」

「我が家ではそうですね。南部の令嬢達とお茶会を楽しんだり、お母様と一緒に小動物エリアで狩猟したり…色々してます。(南部領の令嬢達とのお茶会にしか行ったことないけど、あの方がいらっしゃるし…)」

「そ、それは危険じゃないか? もし怪我でもしたら…」

「お母様やお兄様、アティルナ家の騎士団も一緒ですし怪我をしたことはありません」

「でも…。因みにどっちの兄?」

「テュールお兄様です。セティお兄様は優勝景品を婚約者に贈りたいから深いところまで潜るでしょうし、お父様もお母様の為に毎年気合い入れていますから。あ、でも今年は参加できないと言ってました」

「(セティに婚約者いたのか! にしてもテュールか…。テュールかぁ…! 本当はシルと一緒に狩りをしたいが、俺も大物捕まえてシルを驚かせたいから……いやでもさすがに危ないよなぁ…)」

「テュールお兄様も私も慣れていますし心配いりませんよ?」

「そう言われても心配なものは心配なんだよ…。ああそうだ。近々魔道具渡すから大会中はずっとそれを持っていてくれ」

「魔道具ですか?」

「シルに危険が迫れば俺が転移できる魔道具」

「そッ、それはさすがに…。慣れていますし、大物を狙うことはありませんよ?」

「さすがに譲れない。今まで怪我をしなかったかもしれないが、今年もそうだとは限らん。絶ッ対に持っててくれ!」

「わ、かりました…。ありがたく頂戴します」

「まぁ初日だけだしそれがあれば大丈夫だな。(ついでに視認もできるマルスを連れて来てもらおう)」

「………。大会は三日ありますよね? 最低二日は参加する予定でしたが駄目でしょうか?」

「え、まだ聞いてない? 手紙もアティルナ家に届いていると思うけど…。ロキの皇太子妃候補を探して欲しいとのことだ」

「…えッ!?」

「俺も断ったんだが何度も何度もうるさいし、色々と俺のせいでロキに迷惑かけててな。………嫌いになった?」

「(本当にロキ皇太子に対しては甘い…)嫌いにはなっていませんが…。えっと、どうしたら……」

「現状の皇太子妃候補は誰か知ってる?」

「年齢的に考えて西部を納める三大公爵家のヘクシオン家と、北部を納める同じく三大公爵家のカリュオン家が有力だと聞いております。五大侯爵家には私以外の女性がいませんし」

「そう。で、その二つの公爵家か家格は低くても他領地の公女にするか悩んでいるらしい。ロキ曰く、両親のように相思相愛で結婚したいからとかなんとか」

「(皇太子妃候補となれば必然的に公爵家令嬢になると思っていたし、皇帝陛下が勝手に決めるものだと思ってた)それでその人達を観察してほしいと?」

「そうそう。………改めて言われると自分勝手すぎるよな。断ろう」

「いえいえ、とんでもありません。他領地のお茶会にあまり参加したことがないのでお力になれないかと思いますし、私なんかが皇太子候補を選別するなんておこがましいことですが、ご命令とあれば全力を尽くします」

「(謙虚なシルも可愛いけど…)シル、私なんかじゃないだろ」

「いえっ、でも!」

「シルは未来の大公妃だ。今からでもその地位に慣れておいて。上が謙遜しすぎのはよくないし、混乱してしまう」

「あっ……。そ、うですね。すみません、気をつけます」

「それに夫はこの俺だ。堂々としてくれ。勿論、困ったことがあったら何でも俺に相談して。絶対に助けるから」

「頑張りますっ」

「それにそこまで重く考えないでほしい。最終決断を下すのは結局兄上だし」

「それはそうですが」

「見ての通り粗暴な兄上だから女心に疎いし、女性には女性にしか解らないものもあるだろ? そのきっかけを作るつもりだと思ってくれ」

「…あの。少し疑問なのですが質問いいですか?」

「勿論」

「こういったことは皇后陛下の方がいいのでは?(何故か皇后陛下の噂は聞かないのよね。聞いたらいけない雰囲気もあるというか…)」

「あれ、シルは知らない? 兄上が人前に出したくないからって後宮から出さないんだ。だからどの社交界にも顔を出したことがない」

「(それは許されることなの…? 皇后陛下となれば社交界を盛り上げて貴族との関係を良くしたりとか、色々あると思うのだけど…)」

「(また考えていることが顔に出てる。全部教えてあげたいけど、この皇族にのみ受け継がれる「何かに執着する」という病気みたいなもんは今はまだ言えない。言うとしても結婚してからだな)」

「…愛、されているのですよね?」

「そりゃあ弟である俺にも滅多に見せないほど大事に閉じ込めている。(兄上も俺もその「執着」が妻に向かうとは思わなかったが、あの野郎の「戦争狂」よりマシだな)」

「(閉じ込めてるの!? いや、私が皇帝陛下と皇后陛下の夫婦仲を気にするなんて駄目! ………アレス様もそんなことしたりしないよね…?)」

「シルがいい子でいたらしない」

「声に出てましたか!?」

「顔に全部出てる」

「うっ…。すみません…」

「いやいや。是非そのままでいてくれ。見てて飽きない」

「ふ、普段は解りにくいとか読みにくいなどと言われるのですが…。アレス様の前になると駄目みたいです」

「(可愛い。無理無理なにその理由! めちゃくちゃ俺のこと意識してるし、もう俺のこと好きじゃん!)」

「では初日だけお兄様と一緒に狩猟に参加して、二日目と三日目はお茶会に参加しますね」

「んんっ…! そうだな、そっちのほうが安心するからそうしてくれ。その代わり、俺がシルの代わりにたくさんの獲物を仕留めてくる」

「はい、期待しております」


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