対立
「なるほど、つまり解決の目処が立たない以上対応作が必要なわけだ」
細い指でティーカップをつまみながらニクスが言う。
「そのために王国に戦争をふっかけるってのはやり過ぎじゃないか?というか性急過ぎると思うんだが。」
しかし、セプテムは沈黙を保っていた。内容が内容だけに話あぐねているのだ。
しばらく続いた沈黙はセプテムの返答で破られる。
「……いや、流石に王国と敵対するつもりまではなかった。そんなことをすれば他の二国からも敵視されるだろうしな」
ニクスは首を傾げざるを得ない。セプテムの言葉通りだったが、実際に兵を出していたからだ。
「どういうこと?」
「……調査では王国では現在の王は全く支持されていない。密かに新たな王を担ぎ上げる。我々はその支援の対価として安く農産物を売ってもらう契約を結んでもらうつもりだった」
「なるほどな。帝国が王国を実行支配しようとすれば国内外に敵を作ることになるが、愚王に罪をなすりつけて賢王を担ぎ上げる手助けをしたのだといえば文句のつけようもない、か。エグいやり方だけどなるほど効果的だ」
批判されるだろうと思っていたセプテムは予想外に好評価で驚く。
「帝国は各国に傭兵として戦力の貸し出しもしているし、うん、悪くはない。親善として来た時の対応も帝国兵の士気を上げ、後々王国民が知った時には国王の対応が悪かったと同情を誘える可能性も否定できないわけだ」
「でも悪いけどその作戦はダメだね」
「!?なぜ!?」
ガタっと音をたてて腰を浮かせたセプテムにニクスが無慈悲な応えを返す。
「王がすでに変わっているからだ。療養していたセプテムの元へと連絡が遅れているんでしょ」
椅子に腰を戻すことがかなわずその場にがっくりと膝をつくセプテム。
国内の地盤を固めるために急がせたことが対外的にも効果を発揮していたのだった。
「ならば仕方ない。挨拶に来るであろう新しい王を人質にとって……」
とそこまで言いかけたところで身を襲う殺気に身体が固まる。
「それ以上は言わない方がいい。私は自分の手の中に入れたものを害そうとするものには容赦しない」
ニクスの立ち位置は不明だったが、今のニクスはそれこそ死神のようだった。
「ニクスに嫌われたくはないが、私も帝族の名において守らねばならぬものがある」




