迎え
ーーーオーズ帝国都市辺境。
「セプテム様、ごゆっくりお休みくださいませ」
美しく礼をして去っていくのは年のいった侍女だ。
一人残されたのは一人の青年だった。
ベッドに横たわる姿は力なく、やつれていた。
しかしそれでも見る者はその造形の美しさにため息をつかずにはいられない。
アイスブルーの瞳に、金糸の髪、鼻や口もこれ以上はないというくらい整っている。
だが残念なことに彼を見る者は身の回りの世話をする老女だけである。
女性なら羨ましがるであろう白い肌は、文字通り病的であり、ここで養生して日が当たらない生活を送っているからだった。
「今日がその日か……もってこいの日かもしれない」
力ない声が呟かれる。
今日も代わりなく高熱を発する身体だが、いつもの靄がかかったような頭は今日はすっきりしている。たった一人ついてきてくれた侍女が、場を離れているうちに自分に何かあって、責任を問われないように一言書いておこうかと思い上体を起こす。
「ぐっ……」
苦痛に声が漏れる。
それでもいつもよりは遥かにマシなのだ。
わずかな動作にも関わらず乱れた息を整えていると、甘い香りを含んだ冷たい風が頬を撫でていく。
“ハクロ“と呼ばれる花だ。朝露が白く濁るほどの蜜を生み出すことからそう呼ばれており、この季節は特に香りが強い。
毎年むせ返るほどの濃厚な香りがするのだが、今年は少し薄い気がした。
そこでおかしいことに気づく。
風が身体に障るということで空気を入れ換える時を除いて窓は閉めきっているはずだった。
苦痛も忘れて顔を上げると、月を背景にして天使がこちらを見下ろしていた。




