フローレア、女王の一歩
城内は浮かれた空気に包まれていた。
これまで兄がかばっていた、兄を持ち上げて好き放題やっていた貴族たちは今頃顔を青くしているかもしれないが、
「これで王国はまたいい国になる」
とか、
「フローレア女王万歳!」
などの声が飛び交う。明日、国民から煩いと陳情がきて、謝罪が初めの仕事になるのではないかとドキドキしている。
正直に言えば彼らの期待は重い。気を抜けば足が震えそうだ。それでも、(見た目は)私より幼い少女が不安を隠しながら助力しようと手を差し出してくれたのだ。彼女に恥じない自分でありたい。
最も当の本人は止めるまもなく、姿を消してしまったのだけれど。急ぎの用事があったのかもしれないけれど、もう少し側にいてくれてもよかったのではないか。
宴会が行われていた。
私を推してくれていた人たちが集まって飲み潰れている。料理長や侍女たちもどこか明るく料理を作ったり運んだりしている。
「姫様がやっとその気になってくれて嬉しい。私が何度頼んでも受けてくれなかったのを、今日会った者に動かされたのは悔しくもありますが、やっと王国がまともに動き出せるのです。姫様、聞いておられるのですかっ!?」
はい、もう3度目です。
と言うわけにもいかず、ポーカーフェイスで聞いている。
ニクス様、もう少し助けてくれてもよかったのではないですか?
「陛下、今後のことについてご相談が。ライデッグ、陛下をしばし借りるぞ」
「待て、今は私が……」
そのまま、テーブルに突っ伏してしまう。
テーブルの水滴はコップの露滴にしては多い。
「何も陛下自ら酔っ払いの世話を見なくてもいいのですよ?」
廊下に出たところで宰相のテュエールが言う。
「連れ出してくれてありがとう。私は自分だけでは何も出来ないわ。だから私のために力を貸してくれる人たちと話をして、知りたいと思ったのだけれど、流石に同じ話は困るわね」
困ったように笑いながらそう言えば、
「ライデッグ殿は幼い頃から陛下に目をかけておられましたから。無理もありません。急ぎ今後の予定ですが、陛下が王位に就かれたことを、国民や隣国に伝えねばなりません。ひとまず10日後に国民の前で、一言お言葉を頂くことになりますので用意をお願いします。隣国にはとりあえず手紙を出し、挨拶に回るのは様子をみましょう。後は日常業務のことで、私たちの方で回していましたが、陛下の許可が必要なものが溜まっております。急ぎのものからご覧いただけますよう」
…目が回りそう。
一気にまくし立てられてクラッときた。
少し熱も上がっているような気がする。
「申し訳ありません。少し急ぎ過ぎましたね。本日のところはお休みください」
「…ごめんなさい、そうさせてもらうわ」
私は離搭の自分の部屋まで行き、ベッドまでたどり着くやそのまま倒れ込む。
体が熱い。ひんやりとしたシーツが気持ちよかったのも最初だけだ。ニクス様が最後に言っていたことを思い出したところで目の前が真っ暗になった。




