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借金まみれの貧乏令嬢は麗しの侯爵子息の幼馴染に愛されていました【連載版】  作者: サトウアラレ
3章

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痺れ薬の瓶が語るもの

学園に着く間にアイリーンとキャサリンさんに私は状況の説明を受けた。


私が街へ出た後、殿下は騎士科の授業に参加されたらしい。


実技の授業の為に着替えをする為、個室に入ったわずかな時間に殿下は連れさられたのだ。狭い更衣室の為、ナジム様だけが傍に着き、ハリスさんは入り口近くにいたらしい。


殿下が着替えようとしたところ、いつも置いてある運動着がそこになかった。そこで、ナジム様が外のハリス様に声をかけ、運動着を取りに行って貰い、運動着を受け取り、殿下に渡そうと部屋に戻り、仕切りの向こうを覗けば上から液体を掛けられ、殿下がいなくなっていたのだ。


あっという間の出来事で、ハリスさんが物音に気付き、部屋に入った時はナジム様は走れない程の状態だったらしい。


殿下の行方は急いで調べているそうだが、外交問題に発展する為、今は水面下で静かに探しているそうだ。


「で、私を呼んだのは?」


「貴女の力が欲しいそうよ」


「私は何も分からないよ」


「ええ。でもね。今。私達も情報を集めているの。まずはパーラメント様にもお会いしましょう。サロンを一部屋借りているの。レオナルド様をお呼びしているわ」


「レオナルド様はアイリーンの婚約者様だよね?」


「ええ、私の立場では王宮に連絡を入れない訳にはいかないの。例えソレイユ国が望んでいなくてもね。だからレオナルド様に間に入って頂く事にしたのよ。学生と言う立場に甘えさせてもらわなければね」


ふむふむ、と聞きながらも、私に出来る事はあるのだろうか、と考える。


ナジムさんとハリスさんの一瞬の隙をついて、殿下をさらった。で、急いで街にも探しに出たようだけれど殿下の痕跡はない。


「誘拐犯から、何か声明はないの?」


「ええ。今のところはね。殿下のご無事をお祈りするだけよ」


馬車の中に重い空気が流れた。


明るくて太陽の様なソレイユ殿下。第七王子と言っていたけれど、護衛がしっかりついていた。何か自国で継承問題等があるのだろうか?


そう言えば、私は殿下の事をあまり知らないな。


すぐに帰るし、あまり王族と関わりたくない、と深く立ち入る事をしなかった。


だから、という訳にはなるが、ソレイユ殿下が武芸好きと言うことくらいしか知らない。


護衛という立場にいたのに。


ガタンゴトンと馬車は道を進み、学園の門に着いた時は既に騎士が門の周りに来ていた。


「ミランダ、セントバンク公爵家の騎士ですわ」


アイリーンはそう言うと、馬車の窓から自分の家名の印を騎士に見せ、「ポレット侯爵家のアイリーンよ。レオナルド様はもう、いらしているの?」と騎士に訊ねた。


「これは、アイリーン様。レオナルド様はサロンに」


「分かったわ」


そう言うと、馬車は一番奥の特別な時にしか留められない馬車留めまで進み、私達は教師や客人が使う通路から学園に入った。


サロンに入ると、ナジムさんは病人が着るような服を着ていた。


「ナジムさん」


「リンツ令嬢、見苦しい姿で、すまん」


「いえ、大丈夫ですか?」


「痺れ薬だ。殺傷能力は無かった。一応検査を受ける必要があっただけだ」


「検査?」


「瓶と縄だ。これが落ちていた…」


「痺れ薬に縄?」


「上からかけられたが、人はいなかった。俺が入ると上から痺れ薬が落ちるようなトラップを仕掛けられていた」


「短い時間に簡単とはいえ、罠を?」


「ああ。だが、気になる点もある」


ナジムさんは瓶を私に渡した。


「これは傷薬の瓶。学園の売店で売られている物ですね」


「そうだ」


「しかも日付は、三日前」


私も瓶を持って考えていると、サロンの奥に私達を案内し、そこにはアイリーンの婚約者にノアもいた。


「レオナルド様」


「アイリーン。リンツ令嬢を連れてこれたか」


「はい」


「ミラ」


そうノアが自分の横の席を指さすので、私はレオナルド様に挨拶をするとノアの横に座った。


「今から、現在分かっている事の説明をする。君からも殿下の足取り、犯人のめぼし等分かれば聞きたい」


今迄誘拐犯から連絡もなく、街も静かで、まだ犯人のめぼしも殿下の行方も分かっていないらしい。


「うーん。ナジムさん、殿下は恨みなどは?継承問題や女性関係とか」


私がナジムさんに聞くと、皆は良く聞いてくれた!というような顔をした。


「継承問題で殿下が問題になる事は無いかと、第七王子であられ、継承権で言えば十三番目にある。姉姫様が四人おられる。そして第一王子様にはもう既に子供が二人。殿下は外交関係で王族の務めを果たすか、軍部に入られるおつもりのようだ。女性問題も婚約者がいらっしゃったが、その方が幼少期に儚くなられ、それからは婚約者はいらっしゃらない。恨みも思いつく限りはない」


「成程。では王子本人に恨みとかではなく、外交や、金銭目的?」


「そうであってほしい。私の失態だ」


ナジムさんは悔しそうに拳を握り頷いた。


私だって王子を救いたい。なんで王子は誘拐されたんだ。


犯人は痺れ薬を使って、王子を運んだ。おそらく窓から。短時間で。男性の殿下を抱えたのだろうか?罠の準備もして?短時間で?


「犯人は一人だと難しいことをしていますね」


私はそう言うともう一度瓶を見た。三日前、私も売店に行った。パンを買いに行ったら、橋の所で事故があって、商品の入荷が午後は出来ないと言っていた。


だから売店も午後は臨時休業して、商品を近く迄受け取りに行かないといけないと言っていた。


「この瓶を買えたのは午前中のみ。学生だけなんです」


午後から学園の図書館を使ったり保護者が入ることもある。が、よほどのことが無い限り、授業がある午前中に学生以外は入れない。


「犯人は…」


窓から逃げるのは結構大変だっただろう。力がある人間?私がノアと一緒に変態第三王女から逃げた時も、ノアを担いで逃げるのは無理と思って、すぐ側の部屋に逃げ込んだのだから。


「ん?」


「どうした?」


「いえ、もしかして…。逃げるのは大変だった…。殿下が攫われた部屋の左右。調べましたか?」


「左右?いや。まさか…」


「殿下はすぐそばに隠されているかもしれません。ノア、私達が隠れたみたいに」


「ああ、そうだね。ミラが僕を救ってくれた時の事だね」


「いこう」


そう言って、すぐに私はサロンを出ると、ナジムさんと途中で合流したハリスさんと共に走って出んkなが攫われたという小さな部屋の前に来た。


ここから攫われたのなら…。


私が隣の倉庫を開けるとそこは荷物がごちゃごちゃとしていて誰もいなかった。


「ここが?」と、追いついてきたレオナルド様が私に問いかけた。


「しっ!」


私は耳をすまし、辺りの気配を感じた。


「…。いる」


ゆっくりと奥に進むと、クローゼットがあった。そこを開けると、殿下が倒れていた。


「「殿下!!」」


ナジムさんとハリスさんが殿下に駆け寄り、無事な事を確認していた。


そして、私は奥に声を掛けた。


「出て来て。この部屋の周りは騎士で固めているよ」


嘘だ、固めてはいない。


「出てこないなら攻撃をする」


そう言って、私はスカートの下から棒手裏剣を取り出すと奥に投げつけた。


ザシュッ!


と突き刺さる音がすると、バタバタと人が動く音がし、ノア、レオナルド様とその護衛、そして私は武器を構えた。


「ま、まってくれ、俺達は関係ないんだ」


そう言って、出てきたのは騎士科の生徒達だった。




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