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第41話 ベイルアウト


機体の高度が上がるにつれて、王女が囚われている城と城郭の全体像がはっきりと見えた。3つの塔で構成された城の中央にある一際高くそびえる塔、その最上階に彼女はいる。


「もう時間がない、この闘いに一刻も早くけりを付けて彼女のもとへたどり着かなくては…… 」

操縦桿を握る手に力が入る。


スロットル全開でF104スターファイターの速度は一気に音速に近づく。機首に張り付いたハサクウェルは風圧で顔を歪めているが、まっすぐこちらを睨みつけている。軍帽は飛ばされ表情はぐちゃぐちゃだが憎悪に満ちた眼ははっきり見開いている。


「こ、こんなことをしても私は死なないっ!!! 」


ハサクウェルの叫びが轟音の中からわずかに聞こえた気がした。超音速の世界で意識が保てるとは流石だ。


機体はさらに高度を上げて上空10000mまで舞い上がった。地表は霞がかってわずかしか分からない。レーダーで目標地点を定め、王都中心に向けてまっすぐ降下を始める。この機体ごと奴の肉体を葬り去る。いかに来訪者といえども10000mからの超音速落下を喰らって無事で済むはずがない。


ハサクェウェルも飛行機が墜落することを察したのか、魔法を放とうともがいている。しかし呪文を唱えらえず、必死に作った雷撃の雲は音速で吹き飛ばされる。彼のいたゲームでもまさか超音速の世界で魔法を使うことは想定していないだろう。


みるみる高度が下がり、墜落警報がキャノピー内に鳴り響く。


「Pull up !! Too Low terrain !!」

警報を無視して、まっすぐ地表に向かって突っ込んでいく。点だった街の光が徐々に建物の形状になってくる。操縦桿を握るグローブにじっとりと汗がにじんだ。



一瞬でもタイミングを逃せば機体ごと爆発四散する。死の恐怖から全身のアドレナリンがみなぎる。

高度計1000mを切った瞬間に緊急脱出装置を作動させた。座面下の発火装置が起爆し、座席ごと上空に吹き飛ばされた。腹部を思いきり殴られるような衝撃とともに王都上空に投げ出された。

射出から数秒後パラシュートが開き、ゆっくりと夜空を落下する。


『ドンッ!!!!!!』


という衝撃音とともに肌が焼けるような熱風が吹き付ける。眼を開くと城の左側の塔が爆煙を上げながら傾いていた。積木のおもちゃを崩すようには煉瓦がバラバラになり崩れていっている。


「頼むから死んでいてくれよ、こっちは貴重なコレクションを犠牲にしたんだからな」


攻撃が通る保証も、脱出できる保証もない危険な賭けだったがうまくいった。

ミサイルや機銃はバリアで防げても機体自体は攻撃として認識されないので防げない。それゆえに雷の魔法で破壊しようとしたのだろう。だが、不意を突いて突撃できれば防ぐ手段はない。風圧と急激な気圧変化で動きを封じ、航空機自体の爆発で葬り去る。墜落の衝撃とその爆発は攻撃でないから彼の自動防御魔法は作動しない。


こちらは貴重な機体のストックを失ってしまったが手段を選んでいる余裕はなかった。死んでいるだろうが、仮に生きていたとしてもとても戦えるような状態ではあるまい。

爆発でクレーターのようになっている墜落地点を一瞥し、城の中央塔へと先を急いだ。

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