第22話 魔力の源
「第5艦隊は王国の連合艦隊とは別行動でフロレアル共和国南部にある国立魔導院を解放しにいくわ。あそこが敵の駐留部隊の魔力供給源として利用されている。敵の補給路を断つ重要な任務よ」
マリーはいつもの口調で今回の作戦概要についてクラウソラスの乗組員に説明している。木箱に乗って背伸びをしながら必死で空域地図を指し示す。本人は必死だがなかなか愛らしい光景に思わず吹き出してしまった
「何よ。この作戦がおかしいっていうの?」
「いや、なんでもない」
「そう、ならいいわ。各員出航準備のため持ち場に戻りなさい!」マリー艦長の掛け声とともに搭乗員は慌ただしく元の作業に戻っていく
この作戦は中央の戦略司令部から伝えられたものだ。主力艦隊は第1から第3艦隊を束ねた連合艦隊で共和国駐留艦隊と交戦したのち、首都奪還のために西に航路を取る。一方で第5艦隊だけは連合艦隊に入らず単独で魔導院の制圧が任務だという。なにやらこれ以上彼女に手柄を取らせないようにわざと主力部隊から外された気もするが……作戦である以上従うしかあるまい。
「それじゃ、私たちは先に行くわ。マレストール上空でまた会いましょう」
今回我々が侵攻する目的地は魔法都市マレストールだ。フロレアル共和国の南部に位置する都市マレストールは近くに魔法石の採掘場があり、昔から魔法石の加工や研究によって発展してきた。距離にしてここレインフォースからおよそ800kmといったところだ。今回の攻略目標であるフロレアル国立魔導院はその中心にある。
国立魔導院とは国の魔法研究の中枢となる研究教育機関である。それと同時に魔力で動く兵器に対して生成した魔法石を供給したり直接魔力を提供する発電所のような役割も担っている。確かに首都に比べれば優先度は下がるがそれでも最重要拠点の一つには違いない、敵の防衛も事前情報ではかなり厳重とのことだった。
「そうだな。今回は空での戦いは頼んだぞ」
「任せなさい!敵の航空隊は艦隊が相手をするわ。あんたは地上を掃除してちょうだい」
「ああ、了解だ」
そろそろ主力艦隊も交戦に入る頃だ。公国のマレストール駐留艦隊も味方本隊との戦闘のために出撃して魔導院の防衛が手薄になる頃だろう。こちらもクラウソラスを旗艦として隷下6隻が出航した。
俺とシャーロは艦隊に同行せず基地その出撃を見守る。今回俺はレインフォースから直接発進して戦場でちょうどで合流する計画だ。作戦に使う兵装を選択している最中、シャーロは今回の戦術について尋ねてきた。
「レイ少佐、この魔導院解放作戦はどんな戦いになりそうですか?」
「今度の作戦では、敵の航空部隊の大半は共和国首都に侵攻する連合艦隊との戦闘に割かれるだろう。だとすればメインは占領部隊との対地戦闘になる。前回の国境防衛戦以上に熾烈な対空砲火が待ち受けていると考えて間違いない」
「それはなかなか厳しい戦いになりそうです。でも少佐がここに残って後から行くのも何か理由があるんですよね。」
「今回のミッションにぴったりの頑丈な攻撃機がある。こいつで艦隊の脅威となる敵の対空兵器を無力化する。対空戦闘能力は低い機体だが、その分は艦隊の航空部隊に支援してもらうつもりだ。敵地上部隊を摩耗させて、その後こちらも歩兵部隊や機械化部隊を降下させて迅速に魔導院を制圧する。確実性が高くこちらの損害も少ない方法だ」
「確かに合理的な戦術だと思います。今回は長距離侵攻作戦となりますがいつ頃出撃するんですか?」
「本隊が交戦空域に到着するのはおよそ14時間後だ。俺の機体はおよそ2時間で戦場に着くからあと半日ほど待機してから出撃して地上の高射砲を破壊するつもりだ。」
「じゃあもうしばらく二人でゆっくりできますね」
「ああ、でもちょっと今から準備をしてくる」
「私もついていっていいですか?」
「構わないぞ」二人で基地の滑走路に出てきた。
今回使用する機体は艦載機ではないのでレインフォースの基地から出撃し、そのまま共和国へ飛ぶ計画だ。そしてマレストール上空で合流し俺は対地攻撃、艦隊は敵航空戦力との戦闘を行う。その後完全に制空権を掌握したら、第5艦隊は強襲着陸し陸上兵力が魔導院各施設を制圧する計画だ。俺は攻撃が終了したら停泊する戦艦に回収してもらう手はずになっている。
「いよいよこいつが活躍しそうだな」所持する機体の中でもお気に入りの項目を選択する。
WS内でも地上目標撃破のミッションで無類の強さを誇った機体の出番だ。無骨な形をした航空機が姿を表す。まっすぐの主翼に胴体後部に据え付けられた双発のターボファンエンジン、そして何より目を引くのは機首から飛び出た巨大なガトリング砲。滑走路に現れたのはA10サンダーボルト攻撃機だ。こいつなら単機でも守備隊の機械化部隊を制圧が可能なほどの攻撃力がある。
A10サンダーボルトⅡ アメリカ空軍所属の攻撃機、対空戦闘能力は皆無だが対地攻撃に関しては他の追随を許さない。湾岸戦争からISILに対する空爆に至るまで米軍の関与する多くの危険な対地任務をこなしてきた地上攻撃のエキスパートだ。7tを超えるペイロードを持ち10以上の爆弾や兵装を搭載できる。また非常に防御力が高くコックピットは20mm圧のチタン装甲で覆われ、並みの対空火器では貫通すらしない。
そして何より特筆すべきはGAU-8アヴェンジャーガトリング砲だ。分速4000発近い速度で30mm徹甲弾を発射する。その火力は凄まじく戦車を貫通し地面をえぐるほどで、既存の先頭車両にその攻撃を耐えられるものはいない。反動で連射すると期待が失速するという都市伝説が囁かれるほどの代物だ。
俺は巨大なガトリングを見上げる。こいつならこの世界のどんな兵器でも打ち破れるだろう。




