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第15話 白昼夢



 日差しが眩しい。話に聞いた通り、カルマクロ海岸のエメラルドブルーの海はどこまで行っても海底が見えるくらい透明度が高い。ヤシの木と白い砂浜に突き抜けるような青い空。どこを切り取ってもまるで絵葉書のような景色だ。


 絶好の海水浴日和、普通ならさぞ人で賑わっているだろう。だがここに一般人は入ることができない。マリーのおかげで特別に王立保護公園の砂浜を使えることになったからだ。今この海岸にいるのは3人だけだ。


「どうです、似合ってますか? この日のために新しく買ったんですよ!」真っ白の水着を身につけたシャーロはくるくると回ってみせた。

 夏の日差しに負けないくらい元気に海岸を跳ね回る。透き通るような白い肌と水に濡れて艶やかな黒い髪のコントラストが美しい。


 そして……なかなかグラマラスな体つきに思わず目を奪われた。普段はふわっとしたワンピースか軍服姿しか見たことがなかったため気がつかなかったが、歩くたびに胸が揺れ水着が弾けそうになっている。


「す、すごい綺麗だぞ。なんていうか……美しいな」


「そんなに褒めないでください!照れちゃいますよー」

 水着のまま腕に抱きついてきた。柔らかく滑らかな皮膚の感触がダイレクトに伝わり俺の理性が飛びかける。なんとか最後の良心を振り絞って引き離した。


「そういえばマリーはどこだ?」


「マリーさんは……あそこです!おーい、私と大尉はここにいますよー!」


マリーは木陰に隠れるように立っていた。せっかく海にきたというのに泣きそうな顔をしている。


「どうしたんだ?体調が悪いなら少し休んでたほうがいいぞ」


「そんなんじゃないわよ!今行くわ」なぜだが居心地悪そうにモジモジしている。


 マリーは瞳の色と同じ鮮やかな青色の水着を見に纏っていた。フリルがついていて愛らしさをより一層強調している。まごうことなき美少女なのだが、シャーロと比べるといかんせんスレンダーな体型だ。どうやら体型を気にしてなかなか出てこれなかったようだ。ここで間違ったことを言うと彼女の心に大きな傷を残すことになる。


「可愛いじゃないか。前いた世界でもこんな可愛い子はアイドルでも見たことないぞ。その水着も似合っているな、まるで砂浜に迷い込んだ1羽のオオルリのようだ」この際この世界にオオルリという鳥がいるのかどうかとか、青い羽根はオスだとかいう野暮な話はなしだ。 


「そ、そうかしら。まあ私の部下なら私の良さがわかって当然よね」

 マリーはちょっと嬉しそうに咳払いをして胸を張った。よかった、機嫌は損ねなかったようだ。


だが俺の並べた言葉は嘘ではない。確かに体つきは少々スマートだが、彼女の透き通るような肌と細い手足はこの世に現界した天使と言っても通用しそうな美しさだった。


「それじゃあ、思う存分遊びましょう!3人だけの貸切ビーチなんてこの上ない贅沢です!」シャーロは俺とマリーの手を引いて透き通った海面にダイブする。大きな水しぶきが上がり3人は水中に沈んだ。


 水の中には鮮やかなサンゴと魚たち、マリーは泳ぐのが少し苦手らしくなかなか潜れないようだ。俺は彼女の手を引いて海中遊泳をする。こっちの世界に来てから心肺機能も強化されているので並みのダイバーよりも素潜りができるようになっていた。


 しばらく海岸で遊んでいると奇妙なものを見つけた。「石柱?」壊れた遺跡の一部が波打際に打ち寄せられていた。かなり太いが途中で折れて根元の部分しか残っていない。奇妙な盾をかたどった紋章が中心に刻まれている。


「ああ、それは古代の遺構の残骸よ。全時代の遺跡が海中にあってたまにその一部が打ち上げられるの」


 どんな遺跡なのかは全然わかっていないみたいだ。この世界ではまだ水中を詳しく調査できる装置は存在しない。少し気になったが俺の力でもどうしようもない。だが海に眠る古代の文明にはロマンがある。

 少し立ち止まって考えているとマリーが俺の腕を引っ張る。


「早く行きましょ、あっちに大きなサンゴがあるの」


マリーは水中の古代文明にはあまり興味がないみたいだ。

石柱を後にしてビーチを駆け出す。俺はかすかに心に引っかかるものがあった。あの遺跡の残骸に刻まれた紋章、どこかで見た気がする。だが彼女たちと海を駆け回って遊んでいるとそんなことはすぐに忘れてしまった。


 今日は二人の少女とともに海で思う存分遊んだ。もし天国があるならこんな感じなのかもな。こうして一日はあっという間にすぎていった。



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