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第13話 勝利の宴



 艦の中は明らかに明るいムードが漂っていた。連戦連敗中だった王国艦隊がほとんど無傷で勝利したのだから当たり前だ。レインフォースの街へと無事に戻ると軍の会議へと呼び出された。どうなるのかと思っていると……


「君があのカノン砲を薙ぎ払ってくれたのか、まさに救世主だ!!要塞守備隊を代表してぜひ礼を言いわせてくれ!」ひげ面の守備隊指揮官は号泣しながらすごい力で抱き着いてきた。正直ちょっと暑苦しい。


「君の話は姫殿下から伺っていたが実に素晴らしい働きだった。本当に感謝する」


「君の活躍は王国名誉勲章ものだ。共に戦えたことを光栄に思うよ」


 次々と第五艦隊の艦長達や要塞の幹部たちが俺の元を訪れて熱い抱擁を交わしてくる。役に立てたことは嬉しかったが、おっさんとのハグが続くのはあまり気持ちいいものでない。


 会議の後も様々な祝賀会が続きあっという間に日付がまわった。やっと解放されて部屋でくつろいでいると誰かがドアをノックした。おっさんだったら追い返そう、そう思ってドアを開けるとボトルを持ったネグリジェ姿のマリーが立っていた。


「眠れないの、一緒に飲まない?」ネグリジェは胸元が大きく開き、華奢な肢体がわずかに透けている。熱いわ、と髪をかきあげるその姿に思わず見とれてしまった。


「いいね、俺もちょうど喉が渇いていたところだ」部屋の中に彼女を招き入れる。棚の中からグラスを二つ取り出した、ボトルから真紅に輝く液体が注がれた。


二人でソファに座りながらグラスを傾ける。昼間見る勝気なお姫様といった雰囲気はすっかり息をひそめ、グラスを傾けるその姿は妖艶さ醸し出していた。マリーにこんな大人っぽい色気があるとは……その美しさに思わず見とれてしまう。


「この世界のお酒も結構いいものでしょう。」頬を赤らめながら彼女は言った。色は赤ワインのようだが、どうやらベリー系の果実を原料にした果実酒のようだ。


「なかなかいけるな」 口にするたびに芳醇な果実の風味が口から鼻腔へと中に広がる。

「あなたがこの世界に来てくれなければ、ここに二人でいることもなかったのね。」

彼女はこちらにもたれかかりしみじみと言う。肩に触れる髪から漂う甘い香りにクラクラしてくる。


 思えば不思議なものだな。あそこでマリーの声が耳に届かなければいまこうしていることもなかった。声が届かなかったとしたら、公国側の人間となっていたのか、もしくは全く異なる異世界生活を歩んでいたか今となっては想像もつかないが……


 だがあの時、彼女の声を聞いた瞬間俺は彼女を守りたいという理屈では説明のできない感情を抱いた。その時の思いとここまでの戦いに後悔の念は一片もなかった。


「前々から気になってたことがあるんだ」

「なあに?」彼女は小さな手で俺の手を握ってきた。細く白い指を絡める。

「どうして違う世界から来た俺に対してこんな手厚くしてくれるんだ。最初に助けたのも半分偶然みたいなものだし」

一番感じている疑問を彼女にぶつけた。これまでの建前上の理由ではなくマリーの本当の気持ちが知りたかった。


「それは…」マリーは言い切る前にこちらの胸に飛び込んできた。彼女の吐息が耳に当たる。体が密着すると彼女の熱量と鼓動が伝わる。


抱き合いながらこんな話をしているとまるで恋人同士のようだ。無意識に顔が近づき唇が重なりそうになったその時……


『ガチャ』ノックもなしにドアが開く。驚きのあまり体を絡めたままドアの方を振り返った。誰か知らないがどうしてこんな時に。


「レイ大尉、夜分遅くに失礼します。実は報告書類の不備を見つけちゃいまして……」誰かと思ったらシャーロだった。真面目なのは大いに結構なのだが、あまりにタイミングが悪すぎる。はいってくるなり顔を真っ赤にして座り込んでしまった。

 マリーも我に返り紅潮した顔を手で隠している。今日はもうお開きにしたほうがよさそうだ。


 顔を真っ赤にした二人は無言でそそくさと帰っていった。残された俺は一人呆然と残される。


「夢のような時間だった……いや夢だったのかもな」そんなことを思いながら残った酒を飲み干して眠りについた。



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