小さな幸せ
カーテンの隙間から漏れる光はすでに明るく、外では鳥が楽しそうに歌っている声が聞こえた。
私はゆっくりと目を開いた。
時計を見ると、私はいつもより遅め目が覚めたようだった。
彼はすでに起きていて、誰かと話をしているようだった。
声のする方を見てみると、彼の話している相手は白衣を着た男の人で、見た目は40歳くらいだ。
きっとあの人はお医者さんなんだろうと考えながら二人を眺めていると、私の視線に気がついたのか、二人はこちらに向いた。
「あの・・・、おはようございます。」
私はとりあえず二人に向かって挨拶をした。
「おはよう、真理。」
彼は、いつものように眩しい位の笑顔でそう言うと私の近くに歩いてきた。
「おはようございます。」
次に、白衣を着た男の人が私にそう言いうと、特に表情を変えること無くゆっくりと私に近づいてきた。
「私は、ここで医師ををしているホルム・タールと申します。あなたは真理 山口様で、お間違い無いですね。」
私の近くまで来た白衣の男の人は自己紹介をした後、私に尋ねた。
私が首を縦に振ると、ホルム先生は「これからいくつか尋ねたいことがあるのですが、時間は大丈夫ですか。」と尋ねてきた。
私が再び首を縦に振ると、先生は淡々とした口調で私への質問を開始した。
質問が終了すると、先生は「それでは、お大事に。」と言うと病室を後にした。
「それじゃあ俺もそろそろ仕事に行くよ。夕方、また来るからね。」
そう言い残すと、彼も病室からでて行った。
さっきの先生の話によると、おそらく私は魔力中毒になったのだろうという話だった。
この魔力中毒は、生まれつき極端に魔力を持たずに生まれてしまった人がとても強いストレスや疲労を感じ続けるとなることがあるらしく、主な症状は頭痛や体の倦怠感などがあり、発見が遅れてしまうと亡くなってしまうこともあるようで、私も後少し、発見が遅れていたら危なかったらしい。
しかし、そうはいってもすぐに対処すれば簡単に良くなるらしく、かかる人もほとんどいないため、あまり有名でもなく、別に恐れられてはいないらしい。
実際のところ私ももうだいぶよくなっているので、夕方くらいまで様子を見て何事も無ければ家に帰っても良いと言われた。
私は特にすることも無く、一人になった病室でぼんやりと窓の外を眺めていた。
そして時間が過ぎて行き太陽がゆっくりと沈み始め、優しい暗闇が部屋を包み始めた頃、約束通り彼は来てくれた。
「真理、体の具合はどう。」
「はい、もうすっかり良くなりました。」
私は笑顔で答えた。
彼は私の答えに笑顔で「良かった、安心したよ。」と言うとポケットから、かわいらしいペンダントを取り出すと「あげる。」と言って私にさっとペンダントを着けてくれた。
「あ、あの・・・。」
突然の彼の行動に私はどうしていいか分からず、とりあえず彼を見上げていた。
すると彼は、「どうかした。」と首をかしげていた。
「あの、このペンダントは何ですか。」
自分の首にぶら下がって淡くきらめいているペンダントをつまむと私は彼に尋ねた。
「ああ、それお守りだよ。できればずっと身につけてて欲しいな。きっと、真理のこと守ってくれると思うよ。」
私にそう言うと彼はいたずらっぽく笑った。
そんな、彼の様子に私は自然と笑顔になった。
私と彼は一緒に病室を後にし、なんということも無い話をしながら、家に帰った。