束の間の幸せ
読んでくださっている皆様お久しぶりです。
早速で申し訳無いのですが、学校のテストが近づいており今月の投稿はこれで最後だと思います。
次の投稿は二月になると思います。
私事で本当に申し訳ありませんが、もし気に入ってもらえたなら、また読んでもらえると嬉しいです。
それでは失礼します。
私が病院を退院し家に帰って来ると早速夕飯の準備をするために台所に向かった。
それを見た彼は、「今日くらい休んだらいいのに」と苦笑していた。
「今日は、一日休んでいたのでもうすっかり元気になりました。だから私がんばりたいんです。」と私が力強く答えると、「分かった。だけど、無理しないでね。また倒れられたら、俺が困るしね。」彼は優しく笑いながらそれだけ言うと自分の部屋へと引き上げていった。
(よし、できた。)
それから少しして私は夕食を作り盛りつけを終えた。
後は彼を呼びに行けば終わりである。
とりあえず料理は終わったのでいったんエプロンを外すことにした。
その時私の手に何かが当たった。
何だろうと思い手で触れてみると、それは彼のくれたペンダントだった。
(そういえば、病院い彼が迎えに来てくれたとき私にくれたんだっけ。でもどうして突然くれたのかな。)
私は彼にお守りのような物と言って渡された淡い紫色の石がついたそれを手に持って眺めていた。
私はそれを見ていると、なんだか心が安らいでいくように感じた。
私は「ふう」と息を一つ吐くと彼を呼びに行った。
それからさらに月日は流れていった。
私はあの日以来特にこれと言った問題も無く毎日を過ごしていた。
時々あの夢を見ることはあったけれど、今までのそれとは異なり、私のことをずっと誰かが励まし続けてくれていた。
目が覚めた後も、あれ以来いつも首からぶら下げているペンダントを手に持つことで、自然と嫌な気分は無くなっていき、とても楽になっていた。
彼がこのペンダントをくれたとき、きっと私を守ってくれるといった意味が分かった気がした。
そして私は、ついにあの夢を見ることが無くなった。
特に毎日これといって何か特別なことが起こるわけでも無く、私は来る日も来る日も同じように家事を続けていた。
それは、私が彼の家に来る前からやっていることと同じだった。
昔の私はただ毎日を生きるために家事が必要だからやっていただけだった。
母を失い親戚の家に預けられることになった時だって、自分の居場所が欲しくて仕方なくやっていた。
一人暮らしを始めたときも、ただ体に染みついていたその習慣が抜けず、ただなんと無く家事をこなしていた。
家事なんてしていても楽しいことなんか一つも無く大変でやりたくないと思っていた。
でも、今はそのように思わなかった。
当たり前のことなのに掃除をすれば「いつもありがとう」と笑いかけてくれた。
料理をつくれば「とてもおいしよ。」と言って全部食べてくれた。
これらの言葉には恐らく意味なんてなくて、彼はただなんと無く言っているだけだと思う。
でも、そうであったとしても、彼は今まで誰もかけてくれなかった言葉達を私にかけてくれた。
それだけで私の心は救われていた。
そして、彼が笑顔を見ると私も幸せだった。
今まで何とも思わなかった毎日が美しく彩られ輝いていた。
そんなある日のこと、私はいつもの様に簡単な掃除を終えると、町まで買い物に出かけた。
だいたい買い物を終えて、私は帰り道の途中にある公園のベンチで休憩していた。
公園の広場では子供達が無邪気に遊んでおり、その子達の母親らしき人達が集まって楽しそうに話していた。
私の座っている所からそれほど離れていないせいか、話の内容が私の耳にも入ってきていた。
内容は、子供がなかなか言うことを聞かないだとか、最近また太ってしまったといった日常的な世間話、もうすぐ大きな地震が起こるとか起こらないとか言う話やこの町の領主がもうすぐ結婚するかもしれないと言ったよくある噂話などであった。
耳に勝手に入ってくるどうでも良い彼女たちのゴシップをしばらく聞いていたが、私はそろそろ帰ろうと思いゆっくりと立ち上がると公園を後にした。
やはり、時間はまだお昼過ぎ、町は人であふれており家に帰るのも一苦労だった。
(早く家に帰って洗濯物取り込まないと、それから掃除も早く終わらせないと。)
そんなことを考えながら歩いていると遠くに、きれいな女性と並んで歩く彼の姿を見かけた。
私はなぜか動けなくなりただその様子を眺めていた。
二人はとても親しげに話しながら、町の人混みの中へ溶け込むように消えていき私のいるところから見えなくなった。
私は、少し胸が苦しくなった。
すがるようにペンダントを握りしめるが、いつもの様に落ち着くことはできず、むしろ苦しくなった。
自分がそのようになってしまった理由はよく分かっていた。
(この世界で生きる内に恐らく私は彼のことが・・・。)
私は食べ物の入った手提げ袋をぎゅっと握りしめ、(私はただの家政婦だから・・・。)と心の中で呪文のように何度も唱えながら、必死に人混みの中を足早に歩いていった。




