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魔法世界の王女は、恋をしてはいけない人に恋をしたーアイドルを夢見るわたしですが、世の中は厳しすぎますー  作者: りなる あい
第八章 ~4年生 前期~

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8-15. ハオ視点:恐怖を超えて、歌を

俺は気づいていた、あの魔物の狙いが…


公開オーディションの日、俺は妙に心がざわついていた。

たくさんの観客が集まり、魔法スクリーンで放送される公開オーディションは、サーラーン王国の注目が集まっている。


さすがに、ここでは事件を起こさないだろう…

そう、信じたかった。


公開オーディションの会場は、警備のため、保護の結界が敷かれていることを知っていた。実際に、どんな結界かも調べ済みだ。

この日は、公開オーディションが気になりながらも、注意が逸れている間に集めたい情報もあったから、ミドバーレ魔法学校から公開オーディションを見守っていた。


ネネの護衛でありながら、俺、何してんだろうな…

彼女を守るナイトの一方で、こんなふうに情報を集めてるなんて…

彼女がこのことを知ったら、きっと失望するだろうな…


いよいよ、最後のチーム、ネネの発表がある。

俺は手を止めて画面越しに見守った。


バーン


大きな破壊音が画面から聞こえた。

俺の背筋が凍るようだった。


俺はとっさにレオハルド王子のところへ転移魔法で移動した。

転移魔法は、通常場所へ転移できる。

聖獣が番となった場合、その主人同士もパートナーになり、場所関係なく、パートナーのいるところへの転移魔法が可能になるのだ。


「ネネが危ない!一緒に来てくれ」


レオのところへ行き、ほぼ強制のような形で、レオごと転移魔法で公開オーディションの会場へ飛んだ。

レオの聖獣にまたがり魔物のところへ向かう。


「何とか間に合ってくれ!」


ちょうど魔物の後ろに着いた俺は、その魔物の大きさに驚いた。

かなり大物じゃないか…


魔物が周りを見渡して、何か探しているように感じる。

朝からの嫌な予感がすっと俺の脳内をよぎる。


魔物がピッと動きを止め、ターゲットを決めたようだ。

やっぱり、魔物の狙いはあいつか!


俺はその瞬間、強烈な雷魔法を放った。

雷鳴が轟き、魔物に命中する。

しかし、致命傷まではいかなかったようだ。


すぐに体勢を立て直す魔物を見ながら、横を通過してネネのところに向かう。

ネネをさっと抱き上げて、安全なところへ移動しないと!

他のチームメンバーもいたが、今はそれどころじゃない。

彼女を1番安全なところへ。


「効果があるといいんだけど…あいつの狙いはきっと…」


と言いながら、俺はネネたちに虹色ベールをかけた。

そして、保護の結界も何重にもかけていく。


戦いにすぐに戻ろうした俺の腕を握つかんで、ネネは止めようとしてきた。


「ダメ、ハオ。行かないで。」


ネネの顔には心配の色が浮かんでいた。

俺は一呼吸おいて、ネネに向き直って言った。


「へえ、心配してくれるんだ?可愛いとこあるじゃん。でも安心して。俺、実はこう見えて最強だから。」


ネネに心配をかけたくない。

この魔物は強力だが、みんなで力を合わせれば被害は少なく済むだろう。


ネネに笑顔を向けて、俺は戦いへ戻った。


魔物を改めて観察すると、まるで鉄でできたような鱗に、瞳は紅く濁っていて、本当に気味が悪かった。

この魔物の目と目と間に、黒く光る小さな魔石が埋め込まれているということに気づいた。

やはり、この魔物は操られている可能性が高いな…


騎士団の人たちも、この魔物が強いと判断したらしく、番の特殊魔法を放ち始めた。

俺とレオも番の特殊魔法で参戦する。

パートナーとエネルギーを共鳴させる特殊攻撃は、全身から光が発光されるのが特徴だ。

俺たちは息を合わせて、一気に攻撃魔法を放った。


「ハオ、それにしても、これはどうなってんだ?お前は、何か状況が掴めているか?」


「何となくだが、直感はしてる…」


「ってことは、やはりバレンシャンからか?」


「おそらくな…。結界が破られたところを確認しよう。魔物が倒れてからだと、騎士団も同じことを考えるだろうからな」


「じゃあ、あとは騎士団に任せようぜ。あのアドリアン様もいたから、大丈夫だろう」


俺たちはさりげなく攻撃の輪から外れて、虹色ベールで姿を消し、結界の痕跡を辿っていく。

大きなダメージを受けているところを突き止めた。

なんと、この結界は内側から破られていた。内部に紛れ込んでいるということか…。

一体誰だ…!


そして、魔力を辿っていくと、最後はバレンシャンの方から来ていることが、微かな残留魔力からわかってしまう。

レオにそのことを伝えて、どうするべきか考える。

この痕跡を消すにはどうしたらいいんだ…

痕跡さえ、消すことができれば、サーラーン王国の事件で一緒に戦ったバレンシャン留学生への信頼が高まる。

そして、バレンシャン側には、バレないように動いたと伝えられる。


考えろ、俺…!

そうだ…!

あれがある…!

バレンシャンに伝わる古代魔法。


あえて他の魔法を使って、痕跡を撹乱させよう。

時間がない、今はそれをやるしかないな。

そして、俺の魔力がバレないように場所そのものを転移させるか…


いや、結界を修復しよう。

上から何十にも結界を張るんだ。

上級レベルの結界を幾重に張れば、しっかり守っていると伝えても怪しまれにくいだろう。

俺はレオに見張ってもらいながら、まずはバレンシャンの俺の家系に伝わる古代魔法で魔力の痕跡を撹乱した。

この魔法の解読はきっと難しいはずだ。


そして、レオと一緒に上級の結界を張っていく。

ここでは姿を消していると怪しまれるから、虹色ベールは解除しておいた。

急に姿を表したら、記憶魔法を見るとバレてしまうかもしれない…

結界の破損場所を探す行動を見せておかないと。


誰かがこっちへ走ってくる。

平然を装うんだー


「あれ?レオハルド王子とハオ。君たちも結界の修復に来ていたのか。」


やってきたのはアドリアン様だった。

結界を張っているタイミングで良かった。

やはり、彼は動きが早いな。

俺たちが先に着いていたことが、命拾いになった。


「はい、先ほどアナウンスがありましたね。最後のチームのステージ発表があると。かなり強力な結界を張ったので、大丈夫だと思います。」


アドリアン様はさっと結界を確認して、「これなら大丈夫だろう」と言った。

俺たちは揃って会場の方へ戻る。


アドリアン様はネネの方へ向かい、俺たちは会場の修復に取り掛かった。

心臓が落ち着かなかった。


俺が今ここにいる理由…


バレンシャン側の人間としてじゃなく、ネネの隣にいたい。

ただそれだけのために…

どうか、この行動が吉と出ますように…


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