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魔法世界の王女は、恋をしてはいけない人に恋をしたーアイドルを夢見るわたしですが、世の中は厳しすぎますー  作者: りなる あい
第八章 ~4年生 前期~

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8-2. 選ばれるためじゃなく、輝くために

わたしがアイドル養成所への仮所属を決めたのは、ずっと夢に見てきた“あの舞台”に近づくためだった。

この事務所は今年、大きな公開オーディションを企画している。


事務所に所属している人は、一般応募をせずに、内部選抜に応募できるのだ。

しかも、今回の公開オーディションは、女性、男性どちらも行う大規模なオーディションになるようだ。


わたしはもちろんエントリーした。

16歳になるのをずっと待っていたんだから。


内部選抜は歌とダンスだった。

ダンスは大勢で一斉に踊るという審査方法。


見られるように、注目されるように頑張らないと!というプレッシャーを自分にかけるのはやめた。

お父様からは常に「意図を大切にしなさい」と言われている。

行動する時の意図を明確にすることを、小さいころから意識している。


審査を通過する、ということも大事だけれど、審査に合格するかどうかを目標にすると、達成できなかったとき、辛くなったり、自分を責める材料になってしまう。


だからわたしは、どういう状態になったらいい?と自分に問いかける。

ダンス審査が終わった後、どんな感情でいたい?

どんな状態になったらいい?

とにかくここを鮮明に描く。


わたしは、たくさん練習したから大丈夫と自信をもって、自分らしく楽しく表現できた!やりきった!もう悔いはない!と言い切れる状態になっていることを意図して、本番に臨んだ。


あれほどしっかり練習をして臨んだのに、想像以上の出来事が起きた。

わたしは他の人と、ダンス中にぶつかってしまったのだ。

音楽が大きく鳴り響く中、隣の子の肘がわたしの肩に当たった。

「あっ」と思う間もなくバランスが少し崩れた

――わたしが特に練習を頑張った個所で、自分の見せ場でもあると思っていた振り付けだった。


でも、わたしはすぐに立て直した。

ぶつかってしまったことが、減点になるかもしれない?

その思いが一瞬頭の中をかすめた。


挽回しないと!と焦ってダンスをすることは、絶対に避けたかった。

だから、わたしは落ち着いて自分に還ることを意識する。


わたしは自分らしく表現できれば大丈夫!

ぶつかってしまったけど、それでもいいじゃん!

落ち着いてダンスを続けられたこと、自分の軸をもってできたことがとても嬉しかった。


ダンス審査が終わった後、想像以上のハプニングが起きたけれどわたしは清々しい気持ちだった。


次は2週間後に歌の審査がある。

気持ちを切り替えて、歌の練習をしようと気合をいれた。


会場の外でハオが待っていてくれた。

他の女性の参加者たちがハオをちらちら見ている。


「あの人も男性の応募者なのかな?」


「どのアイドルよりも、すでにカッコよくない?」


わたしの耳にも届いてくる。

でも、ハオ本人はそんな視線をまったく気にしていない様子。

ハオがこういう人で良かったと思った。

こんな風に、ゆるぎなくわたしの傍にいてくれることが有難かった。


わたしを見つけると、ハオの瞳がはっと大きくなった。

彼の瞳がわたしを捉えたのだとわかり、嬉しい気持ちになる。


「ダンス審査、お楽しみ様」


「ありがとう」


わたしのことを待っていてくれる存在がいることが幸せだと感じた。


「どうだった?」


とたずねるその声が、いつもより少しだけ低くて――なんだか胸がきゅっとした。

微笑みを向けながら優しくたずねてくれる、それだけでわたしは次も頑張ろうと思えた。


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