表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法世界の王女は、恋をしてはいけない人に恋をしたーアイドルを夢見るわたしですが、世の中は厳しすぎますー  作者: りなる あい
第三章 ~2年生 冬~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/74

3-4. ハオ視点:壊れゆく常識

黒魔法の授業は、はっきり言って異様だった。

俺が知ってる黒魔法とは違いすぎた。


そもそも、魔物に対する価値観が違う。

バレンシャンでは魔物は対峙するものだ。

フェル先生は、癒して浄化するものだという。


魔物を癒す?

……なぜ、“悪”に温情を向ける必要がある?

本当に、最初は先生の意図がわからなかった。

授業が終わり、先生に直接聞いてみた。


「フェル先生、質問よろしいですか?」


「いいですよ。」


授業が終わったにも関わらず、優しく対応してくれた。

この先生の眼差しから伝わる、慈愛に満ちた優しい雰囲気…

バレンシャンではなかなか感じられないエネルギーだと思った。


「魔物はバレンシャンの人々にとっては、対峙するものです。

魔物を倒せば、問題は解決する。

わざわざ魔物を癒し、浄化する必要があるのでしょうか?」


俺は思ったことをストレートに聞いた。


「そうですね、魔物は対峙するものだと、わたしも昔は思っていました…」


先生は遠くを見るような優しい目をしている。


「でも、『戦ってはダメ。受け入れる』と、わたしに教えてくれた人がいたんです。」


そういって、ニコっと微笑む。

なぜだろうか、何か胸がざわついた。

恋をしているのとは少し違う…

けれど、何か感じるものがあった。


「では、なぜそう言い切れるのですか?

戦うではなく、癒し浄化する明確な理由はなんですか?」


質問がどんどん湧いてくる。

でも、この先生には、なぜか遠慮なく質問できてしまう…


「戦えば、また次の憎しみを生むんです。

終わらないんです、ずっと。」


先生のその言葉がずしっと自分の心に響いた。

自分の中の当たり前の概念が壊れる瞬間だった。

短いけれど、この一言に全てが詰まっている気がした。


「わたしは昔、ある魔物と出会ったことがありましたー

その魔物は人を操り、服従させ、とてつもない魔力を持っていました。

わたしの仲間たちが魔物によって操られていたので、わたしたちは戦うことができなかったのです…」


こんな穏やかで優しい先生に、このような壮絶な過去があったなんて…

俺はただ、その話を聞くことしかできなかった。


「防戦一方で魔力の限界も近づき、操られた仲間も、自分の仲間たちも全滅するかもしれない…そう思いました。

その時、魔物を光で包み込むのだと教えてくれた人がいたのです。

魔物を治癒し、浄化することで、魔物は昇華されていきました。

その魔物が昇華される時、わたしに語りかけたのです…

『わたしが感じたかったのは、この温かさだ。ありがとう…』と…」


ここでフェル先生は一呼吸おいた。

先生の話しは、想像を遥かに超えていて、俺自身、とても信じられる内容ではなかった。


「黒魔法は人を操るという面から、怖いもの、悪いものというイメージが強いです。

ここ、サーラーン王国でもいまだにそのような社会的価値観があります。

でも、それと同時に、浄化することもできるのです。」


ニコッと笑う先生の表情には、芯のようなものが感じられて、かっこいい大人だと思った。このような黒魔法の先生に教わることができるのは、とても幸運なことだと感じた。


「わたしは騎士団に所属していましたが、魔物は癒し浄化するものであること、黒魔法の美しさも伝えたいと思い、この学校の先生になることに決めました」


「先生、お話をお聞かせくださり、ありがとうございます。

先生自身が体験なさったことだったのですね。

自信と自分の芯をもって、教師として伝えている背景を知ることができ、光栄です。」


「ありがとう。そう受け取ってもらえて、わたしも嬉しいです。

もし、黒魔法の歴史について学びたいのであれば、王城の図書館にある『エテ・コリントスの封印記録書』という古代書を読んでみるといいかもしれません。

禁書扱いの本なのですが、興味があれば、わたしが許可証を出すこともできるので、教えてくださいね。」


「ありがとうございます。考えてみます。」


フェル先生は、元騎士団であり、魔物を治癒と浄化で昇華した経験があり、王城図書館の禁書の許可証を出せる人。

黒魔法師は騎士団に入る規則があるこの国で、騎士団を抜け、教師として働いている…


……フェル先生。

あの優しさの奥には、一体どんな覚悟があるんだ?

あなたは一体、何者ですか?

明日から第四章へうつります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ