3-3. ハオ視点:戦わない黒魔法師
青春祭も終わり、少しずつ風が冷たくなってきた。
凍冴の季節が、もうすぐやってくる。
留学に来て、2ヶ月。早いものだ。
使節団のメンバーも、それぞれの授業で魔法の学びを深めている。
10名の留学生のうち、黒魔法の使い手は3名。
その3人が、最近よく言うのだ。
——ここの黒魔法は、違う、と。
青春祭までは基礎魔法中心だったが、祭りのあとから授業の内容が一段階深まり、本格的な学びが始まった。
俺がその黒魔法に興味を持ったのは、「戦ってはダメ」という教えがあるからだ。
バレンシャンでは、黒魔法は支配と戦いのためのもの。
人を操り、恐怖を与える魔法。
それが常識だった。
だからこそ、その“真逆”があるなら見てみたいと思った。
そんなの、あり得るのか?
——半信半疑ではあった。
レオハルド王子に相談し、一緒に授業の見学を願い出ることにした。
そして今日、ついに先生との面会が叶った。
レオと並んで、教師の部屋を訪れる。
「お時間をとっていただき、ありがとうございます。
バレンシャン王国第一王子、レオハルド・バレンシャンと申します」
「従者のハオ・シオルンと申します」
「マミーナ・フェルです。
元騎士団所属ですが、今は黒魔法を教えています。
——授業の見学の件ですね?」
その声は柔らかく、澄んでいた。
威圧感などまるでない。
むしろ、黒魔法師らしさはまったく感じられなかった。
珍しい黒髪に、焦げ茶色の瞳。
サーラーンでは見かけない容姿に、俺は少し驚いた。
これが、黒魔法師?
これが、“戦ってはダメ”を教える人か?
俺の中にある価値観が、ふと揺れた。
授業見学の許可は、思いのほかあっさりと下りた。
これで、俺も黒魔法の授業に出られる。
——俺の適性は雷型だが、今はそれ以上に学びたいことがある。
もちろん、あのお姫様はすぐに異変に気づくだろう。
俺が雷型の特性別授業に出ていないことを…
俺の動きに、彼女はやけに勘が鋭い。
普通なら、俺の異質さに気づいて距離を取るはずなのに──
……なのに、どうしてあんなに懐いてくるんだろうな。
俺のこと、何も知らないくせに…
純粋な瞳で、真っ直ぐに向かってくる。
……眩しいと思ってしまう。
つい、見返せなくなる。
でも、あの子が俺の“弱点”になってはいけない。
もし気づかれたら、狙われる。
……俺が“誰か”に知られたら、真っ先に狙われるのは、きっと彼女だ。
だから、興味なんかないふりをしないといけない。
無関心を装って、ただの従者としていないと。
……でも。
あの明るさに振り切られないようにするのは、ほんとに大変なんだよな。
……別に、嫌じゃないけど。
俺の感情は、今は封じる。
まずはやるべきこと——この国の真実を、見極める。
そう決めて、黒魔法の授業に備えるのだった。
シーズン1ではヒロイン視点で物語を進めましたが
シーズン2ではさまざまな登場人物の視点で描くことに挑戦しました。
シーズン1をお読みになった方は、なつかしい名前も出てきたのではないでしょうか?
引き続き、お楽しみください♡




