第三十一話 疫病神
平日のさして混んでいない席もまばらに空いている新幹線の車内。そこへ、場違いとも言える女優帽を目深にかぶった女性の隣へ一人の男が。
福島「すいません。お隣、宜しいですか?」
染井「ここグリーン車よ?指定席を取ってるなら私に断わる筋合いなんてないでしょ」
福島「では失礼します」
染井は福島に一瞥しただけで、それ以上顔を合わせようとはせず車窓に顔を向けたまま話し出した。
染井「警察ってやろうと思えば何でもわかるのね(笑)でも私、今はご覧の通りカタギなんで」
福島「実はおりいって、ご相談がありましてね」
染井「なら答えはもう出てるわ、【手遅れ】よ」
福島は苛立ちと落胆の合わせ混じった感情を表に出さ無いよう息を深く吸い込んだ。
福島「もちろん見返りはありますよ」
染井「あなたにどんな権力があるのかは知らないけど、余罪のことだろうが、お金の話だろうがそもそも私にはソレの相手をするのが無理だから言ってるのよ」
福島「あなたでもですか?」
染井「人を詐欺師扱いしといて変な言い草よね(笑)でもコレで私が少なくとも根っからの詐欺師ではないということはわかっていただけたみたいね?」
福島「実は」
染井「ごめんなさい、私が目を合わせない意味わかる?一時が万事、関わり合いたくないからよ。あなたにかけられた呪いは私自身が守れそうにないほど恐ろしいものだから」
福島「そうですか」
染井「、、、あなたも昔からそうじゃなかったんでしょ?私もよ(笑)人は内心思っていることと違う事をしようとすると、知らず知らずのうちにストレスというものを感じてるの。そのうちどんどん蝕まれていき、次第に頭や心までがまともに判断できなくなるようになるほど侵されることになるわ。特に人間は社会性の強い生き物だからそうして組織の中で立場を理由に自分を見失っていくと、やがておかしくなるのよ」
福島「わかった時にはすでに遅かった。いや、おそらくこうならないと私は気づけなかったのかもしれない」
染井「残念ね、たまたま相手と運が悪すぎたみたい。あなたにかけるつもりでは無かったのかもしれないけど、そもそも相手は警察関係者なら誰でも良かったんだと思うわ。それぐらい、かけた呪いの強さが個人に向けられたものとでは釣り合わないから。組織全体を狙っていた可能性もあるわね」
福島「私はあと、どれくらい生きられる?」
染井「さぁ、なるべくこうして赤の他人に呪いを巻き散らかさないようにとしか」
福島「疫病神というわけですね。ご協力ありがとうございました」
福島は席を立ち去り次の駅で降りた。その足で警察署に戻り、拳銃一丁と数発の弾を黙って持ちだしたのでした。
第三十一話(終)




