表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼切怪奇譚  作者: 藤崎要
30/36

第参拾話 蠱毒



 森野の部屋をノックする不死根。


不死根「頼まれていたものをお持ちしました」


森野「ありがとう♪後で読むからそこに置いといて。不死根さんも良かったら、お茶でもどう?」


不死根「いえ、私はけっこうです。ところで例の件ですがどうしてもご協力はいただけませんか?」


森野「うん。僕にも非はある話だとは思うけど、僕がそうさせたわけじゃないからね。未解決事件みたいな物の中には、人が安易に触れちゃいけないものが混ざってることもあるわけだし、その人の生き方までは変えられないから結局遅かれ早かれってとこだと思うよ?というか、もう手遅れだしね」


不死根「そうですか、わかりました」


 森野が不死根の持ってきた本を手に取る。


森野「ねぇ、なんでこういう哲学や宗教の本っていちいちわかりづらく書いているんだろうって不思議に思わない?おそらく時の権力者の支配から逃れるためであったり暗に揶揄してのことなんだろうけども、あえて解釈の幅を持たせてるところがまた意味深にさせてるような感じで、根本にあるのはビジネスって気がするけど(笑)」


不死根「それは私にはお答えできかねます」


森野「そう。カミカネも所詮は人が創ったものだからね、どこまで支配を求めるんだか人間て生き物は。じゃあ、僕がのちの聖書と呼ばれるものを作ってみるというのはどうかな?なんてね(笑)」


 そして。


不死根「というわけで取り付く島もない感じでして」


総代「下手に機嫌を損なうよりはマシでしょう(笑)私にどこまで出来るかはわかりませんが、貴方が居てくれるなら心強いです」


 鬼切の総代と不死根は某マンションの入口にいた。規制線が貼られ、関係者と思われる連中らと言葉のやり取りをいくつか交わすと二人は中へと通され入っていった。


【警察本部長、立て篭もりの末、拳銃自殺をはかり死亡】


総代「ニュースで事件のことは見ましたけど、警察関係者の中に何か上手くは言えませんが」


不死根「ええ、手引をした者がいるということは確かでしょう」


総代「やはりそうですか」


不死根「彼も出世欲の強い男だったので、闇に触れて消されたというのがあくまで私の推測ですが。正直ここまでやるとは」


総代「我々にできることは、このままにしておくわけにもいかないという事ですからね。犯人探しは身内のほうでお願いします」


不死根「そのように伝えておきます」


 総代は件の部屋の前へとつくと、用意していた米と塩と酒を取り出しそれぞれ祭壇に設けました。そして不死根が部屋の鍵を開けると中は真っ黒に彩られておりました。


不死根「これは、炭ですか?」


総代「ええ、おそらく炭にしたモノです」


 総代は祝詞のような言葉を口にしながら奥へと入る。不死根は足がすくんで一歩も中へ入れずにいた。


総代「そこで待っていてください。何が起きてもけして焦らずに、それが貴方の限界ですから」


不死根「申し訳ありません」


 半刻ほど経ったのち総代は部屋から出てくるとドアをしめその場にへたり込んだ。そして不死根は総代を抱えるようにしてその場から離すと


総代「終りました。これで彼の魂だけでも救われたと思います。ですがこの建物はもう誰も住まないほうが良いでしょう。取り壊してのち駐車場にするのが関の山でしょうが」


不死根「そのように手配いたします」


総代「今回用いられたのは蠱毒、おそらくあの炭は蠱毒の中のモノをそのまま焼いて作ったものです。本来ならあり得ないようなとてつもない力がまたこのような形で使われたとなると、我々が来ることを予測しての事かと思われます。ですがこれはあくまでも警告、私も含めて貴方もしばらくは身に気を付けたほうが良さそうです」


不死根「肝に命じておきます、総代も我々が全力で保護いたします」


総代「そうですね、ではそのようにさせていただくとしますか」


 第参拾話(終)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ