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鬼切怪奇譚  作者: 藤崎要
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第二十一話 森野 木陰(こかげ)



 遠藤とその青年は駅構内のカフェに居た。


遠藤「脱走してきたの?」


青年「まさか(笑)ほら、これGPSを付けられてるでしょ?」


 青年はそう言って腕時計を見せた。


青年「あと体内にもGPSを埋め込まれてるんですけどね(笑)ある情報で最寄りの駅を時刻表から逆算して来てみたら、

遠藤さんに会えるかなって。

そしたら、たまたま鉢合わせたという感じです。あの、今は森野と呼んでください」


遠藤「たまたまね?で、キミは森野君なんだ?」


森野「ええ、【ホンモノ】って呼ばれるのもなんだし(笑)」


遠藤「で、俺に何の用?」


森野「施設の中で暇つぶしに未解決事件のファイルを読ませて貰って、気になった事があったので遠藤さんにコレを」


 森野はカバンからファイルを取り出し遠藤に渡した。遠藤はソレをパラパラとめくり目を通した。


遠藤「うん、良く出来てるけど。誰の許可を貰ってコレを?」


森野「それはナイショでお願いしますよ。その代わり大人しくするという約束なんで(笑)だって四六時中ずっと監視されてるんですよ?少しくらいハネを伸ばしたって良いじゃないですか」


遠藤「そう。それで、これを俺に渡すということはどういう意味なのかな?」


森野「もちろん犯人を捕まえて欲しいからに決まってるじゃないですか、僕みたいな冤罪を作らないためにね。いや、けして嫌味で言ってるわけじゃないですよ?(笑)」


遠藤「ならそういう事にしておこうか」


森野「でも凄いな。さすが刑事というか、いや遠藤さんが凄いのかな。あれだけ世間で騒がれてたのに、もう誰も僕の事を忘れてるんだもん。でも遠藤さんはすぐに気づいてくれた」


遠藤「俺は仕事だからね。でも他の人はたとえキミに気づいてたとしてても近寄れないんじゃないかな」


森野「なるほど、そういう事か(笑)じゃあ、そろそろ迎えが来ると思うんで。あとは遠藤さんのお好きなようにファイルは使ってください」


 【森野木陰 (ホンモノ)】


 彼はかつて連続猟奇殺人事件の容疑者として起訴され、一審では無罪となるも、ソレは彼の精神状態における理由にあった。


鑑定の結果、彼は心神喪失状態にあり、その判定には彼の知能指数などが絡んでいる。つまり全くの別人格が彼の中に存在しているということ。


当時は世論を巻き込んでの誹謗中傷が殺到したものの、彼は後に真犯人を自らの手で見つけだし冤罪であることを証明した。


雑誌のインタビュー記事で彼は「世の中の偏見や誤解というものを解きたかっただけ。真犯人が見つかって良かった」と答えている。


そして現在は公的な保護という名の監視下に自らも置かれることを望み施設で暮らしており、警察関係者からはホンモノと呼ばれている。


 【以上】


 遠藤が店を出ると、森野の周りに数人の職員らしき人物たちが付いていた。遠藤はそれを見届けるとタクシーに乗り込んだ。


 第二十一話(終)

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