消え行く世界で3
「ねぇ君」
「ん?」
「なんで本屋で立ち読みなんてしてるの?」
「もちろん、消滅の情報を集めてるのさ」
「そうなんだ。でも、読んでる本ライトノベルだよね?しかも消滅が起こる前に書かれたやつ」
「知ってるんだ、この本」
「こう見えてライトノベルは好きだよ」
「こうって、どう見えてるの?」
「……今日の君はめんどくさいねぇ」
「お前はいつもめんどくさいからそれよりはましだ」
「今日も毒舌だねぇ……そういえば、生徒手帳渡したんだから名前分かるでしょ?名前で呼んでよ」
「ゆきだっけか?」
「そうだよ、しゅう君」
「今さら呼び方変えるのもな……いいよお前で」
「呼ばれるの私なんだけどね……いいや、じゃあ、君は君のままだ。」
「そうだな」
その日は、夜まで本屋でライトノベルを読み漁る2人だった。
ーーー
「消滅した人ってさ、どうなるんだろうね?」
「うーん、そういえば考えた事無いな……」
「消滅について調べてるのに?」
「正確には消滅しない方法だけどな。つうか、調べてるけど全く何も掴めてない。本当に何も掴めないから旅に出て探してるんだろ」
「旅を初めてもう3ヶ月以上経つけど何も見つかって無いね」
「必死に探してるんだけどなぁ」
「とか言いながらこの自転車旅を楽しんでるでしょ?」
「あ、気づいてた?」
「もちろん。君はなんだかんだ楽しそうだもんね」
「お前もいつも楽しそうだよな」
「もちろん!……でも、君は時々暗い表情をしてる時がある」
「……」
「消滅して、記憶に無い家族のこととか友達のこととか考えてるの?」
「……それを考えることもあるけど、1番考えるのはお前が消滅したらどうしたらいいんだろうってことだ」
「捜してくれないの?」
「もちろん捜すさ。でも、もし見つからなかったらって考えると……」
「前にも言ったよ。私は消滅しない!大丈夫!私は君といるから!」
「ああ……そうだな。うん、そうだ!お前は消滅しないよ。俺も消滅しない。何せ今までずっと消滅しないでいられてるんだ。これからも、ずっと消滅しないでいるはずだ!」
「うんうん!……だけどもし、私が消滅したら、君は私のことを忘れても生きてね?」
「……保証は出来ない」
「なんでよー」
「お前は俺が消滅しても、忘れて生きていける?」
「……」
「な?わかっただろ、俺の気持ちが」
「もし消滅するなら2人同時がいいね」
「消滅しなければいいだけの話だ。すぐに消滅しない方法を見つけてやる」
「私も手伝うよ?君が消滅したら嫌だから」
「当たり前だ」
「……ふふっ」
「急に笑うなよ怖いな」
「ここはいっしょに笑うところだよ?!」
「知るかそんなの」
「君は冷たいね……」
「ははっ」
「笑うの遅い!」
「知らねぇよ!」
「……もし君が消滅したら、私は後を追うように自殺しちゃうよ。君がいない世界なんて、生きたくないから。」
彼女は誰にも聞こえないような声で、1人そう呟いた。




