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消え行く世界で  作者: 春夢
2/14

消え行く世界で1

「……やっぱり、車に乗らない?」

「運転免許を持ってないだろ。まだ高校生なんだから。」

「どうせ、警察なんていないのに……」

「乗り方知らないだろ?それに時間はあるんだ。自転車でも問題無いだろ」

「……君は私が太ももの筋肉がっちりの女になってもいいの?」

「どうせお前は膝枕なんてしてくれないだろ」

「君が望むならしてあげなくも……」

 呟くような小声だ。

「何か言ったか?」

「何でもない!」

「そうか」

「……」

「……」

 少年と少女は、炎天下の中で自転車を漕いでいた。少年は消滅の原因を探して。少女は幸せの為に。

「休憩にするか。もう1時になる」

 腕につけている時計は、昨日の夜に泊まった民家にあったものだ。

「今日のお昼ご飯は?」

「ぬれ煎餅」

「……それ、湿気った煎餅だよね?昨日の夜も確かそれ食べたような」「ストップ。食べたくないなら食べないでもいい。でも食べる気を削がないでくれ。俺だって食べたい訳じゃないんだ、これしか無いんだ」

 その煎餅も、昨日の夜に泊まった民家にあったものだ。

「うう……せめて栄養のある物を食べたいよ」

「ビタミン錠剤があるだろ」

「そういう物じゃ無くて!」

「わがまま言うな。俺だって食べたいさ。でも、無いものは無いんだ」

 ビタミン錠剤などの栄養錠剤をいくつか水で流しこみ、ぬれ煎餅(湿気った煎餅)を食べると、2人は再び出発した。自転車で……


 ーーー


「もう夜だな」

「……」

「そろそろ今夜寝る場所を決めないと」

「……」

「……大丈夫か?」

「疲れた。君、家探しは任せていい……?」

「分かった。とは言っても、いつもどうり適当な人の住んでない民家の窓割って侵入……間借りするんだけどな」

 2人はいつも、人のいない民家に侵入(間借り)して夜を過ごしている。なお、食料や水の調達もそこでしている。人間のほとんどが消滅して半年、2人は緊急時用の防災セット(水や乾パン、ライトなどを纏めたもの。)を民家から探し出して使う事で生き延びて来ている。

「あの家でいいか……えい」

 近くの家の窓に石を強く投げつける。窓は空いた(割れた)、これで寝る所の調達は完了だ。

「……なんどやっても抵抗あるね、そういう事をするのは」

「そうか?俺は慣れたぞ」

「…………」

「どうした?そんな目で俺を見るなよ。悪いことしてる気分になるだろ」

「ねぇ、私には君がこんな生活に適応してきてる気がするんだ」

「そりゃ、こんな生活はじめてもう3ヶ月だからなぁ」

 2人が出会ってから3ヶ月が経っていた。未だに消滅に関する情報はほとんど掴めていない。ただただ自転車でどこかへ向かって進んでいるだけだ。どこかは、本人達にもわからない。

「長かったね……」

「まだこの生活は続くぞ。もしかしたら死ぬか消滅するまで続く」

「憂鬱な気分になりそうだよ……はぁ」

「なってるだろ。ため息なんてつくなよ、幸せが逃げるぞ」

「そんなの迷信だよ。信じてるなんて子供だね君は」

「年齢同じだろうが」

「精神年齢はかなり離れてるよ」

「それは俺の方が年上だよな?」

「私の方が年上に決まってるでしょ」

「今の生活方法を考えたのも消滅に関して考えてるのも俺だよな」

「私は幸せのために君といるの。そんなこと考える必要無いの」

「俺といたって幸せにはなれないぞ?」

「君のそばにいられるだけで幸せなの……」

 小さな声で呟いている。

「何か言ったか?」

「何も言ってない!」

「そうか」

「……」

「……」

「もう君なんて知らないっ!」

「それは嫌だな。お前がいなくなったら俺は1人になる」

「そ、そう。私がいなくなると嫌なのね。そう……しょうがないなぁ、君は」

「なんか少し歪んで伝わってるような……でもまぁ、お前がいなくなるのは嫌だし間違っては無いか」

「今のもしかして……」

「告白とかじゃねーぞ。お前がいなくなったら俺は1人になるだろ?」

「なんだ……て!べ、別に告白なんて期待してないよ!」

「はいはい。」

「適当に流さないでよ!」

「わかったわかった」

「返事は1回!」

「はーーい」

「ぐぬぬ……」

「口で言うなあざとい」

「なんでよ!」


 2人の夜はこうして少しづつ明けて行った。


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